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ぼくのおじさん 絵本レビュー【ちいさなbook cafeかとぶん】

【並べて楽しい絵本の世界】



アーノルド・ローベル 作
三木卓 訳
文化出版局

1ページ目を開くと、まず目次があります。


この目次がわくわくするのです。

おじさん ドアをあける        6
おじさん でんちゅうをかぞえる   11
おじさん ランプをつける      19
おじさん よあけに あいさつする  25
おじさん からだが ぎしぎしする  32
おじさん おはなしをする      37
おじさん ふくをきる        45
おじさん うたを つくる      51
おじさん ドアを しめる      58

おじさんがドアをあけてから、ドアをしめるまでの旅です。

まず衝撃のオープニング
かあさん、とおさんと、船旅に行くことになっていたのに、「ぼく」は風邪をひいてしまって、ひとりで家で寝ていなければならなくなりました。
ところが!


そうしたら、あらしになって ふねが かえってこない!

かあさんも とおさんも いなくなっちゃった。



おじさんは、突然一人ぼっちになってしまった「ぼく」のところへ、あらわれます。

小さな人たちにとって、こんな恐ろしい出来事はないでしょう・・・
でも世界中でこんな思いをしている子たちはたくさんたくさんいる。

たとえ かあさんとおさんがそこに居たとしても、ひとりぼっちの心を隠している子どもたちも たくさんいると思うのです。

ドアをあけて、現れたおじさんは、年をとってびっくりするくらい しわがたくさんある。いっぽんの 木の 葉っぱよりも たくさん ある。空の星よりもたくさんある。

やあ こんにちは。
わしは きみの おじさんだよ。


さあ そんな くらいところからでておいで

わしのところへおいで・・・といいます。

ふたりは、きしゃにのって、すぎゆく電柱の数を数えたり、ピーナツを食べたりしながら、おじさんの家に向かいます。
11ページから51ページまでのあいだ、いっしょに過ごすのです。

おじさんの家では、夜になったらランプをつけて、よあけには あいさつをする。

「わしは いつも こうやって よあけを かんげいしているんだよ」
とおじさんはいいます。「あたらしい あさというものは 
いつだって けいきのいい あいさつで むかえてやるものさ」

お散歩すれば、おじさんは身体がぎしぎし したりする。
おはなしをしたり、おもいつくまま服をきたり歌ったり。

しょんぼりしていた「ぼく」の表情が、しだいに明るくなっていきます。
おじさんの顔も明るくなっていきます。

作者ローベルさんの、心の温かさを感じます。

私たちは、自分が何者かすぐれた者であるかのように、小さい人々に接していることがあるけれど、私を助けてくれているのは、守ってくれているのは、その小さい人なんだ、本を閉じるときにそんなことを思いました。

夜になったらランプをつけて、よあけには あいさつをする。
お散歩すれば、私も身体がぎしぎし したりする。
おはなしをしたり、おもいつくまま服をきたり歌ったりして過ぎていく。
そんな日常が尊いもので、普段はわすれているけれど、ちいさい人たちと過ごしていると教えてもらえる・・・


ある日
かあさん と とおさんは、みつけだされ たすけられたという、電報がとどきます。

ふたりはおおよろこび!

すぐに きみを いえに つれていかねばならん

ふたりはまた、汽車に乗りぼくの家に向かいます。
来るときは、電柱の数などを数えていたおじさんは、こんどは何かを数えてはいますが、ぼくには何を数えているのか教えてくれません。
おじさんは、「ぼく」と過ごした日々を数えていました。


「ぼく」は無事にもとの幸せな生活に戻れます。

年をとったおじさんは、ひとりでかえって行きます。ドアを閉めて・・・

彼は孤独を恐れているでしょうか。

そして最後のページの一文

ぼくたちは ときどき あおうと やくそくした

わたしも、だれかと ときどき あおう と
やくそくしたい。


【ちいさなbook cafeかとぶん】


【ちいさなbook cafeかとぶん】は、みんなの居場所になってほしい場所です。
そこには、私 s.suzukiが選んだ 【並べて楽しい絵本の世界】の絵本たちを並べます。

私はそこにいます。約束したいから。

ときどき会いましょう。

今日もお読みいただきありがとうございます。


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