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ブラジリアン柔術 今後の練習スタイルについて考えたこと - 「練習」でしかできないこと「練習」以外でできることと、「成長思考」

2022年3月末に会社を辞めてからは時間の自由がきくようになり、特に6月に田町チームに加入してからは昼の時間に2〜3時間ドリル/シチュエーションスパー/ムーブメント重視のスパーリングなどに集中して取り組むことができる、素晴らしい環境で練習させてもらっていた。それに朝晩の今成柔術、フィジカルスペースでの練習を組み合わせることで新しい技術の習得と練習時間、スパーリングでの実践をすべて高いレベルで享受することができ、この環境が一生続いたらいいなと夢見る毎日だった。

しかし、柔術で生計を立てているわけではない以上、それは夢でしかないこともまた当然で、2023年からAbsolute MMAに移り大学院の授業が始まることを受けて、これまでの練習スタイルを大幅に見直す必要が出てきた。当然いつまでも仕事より柔術の方を優先できるわけではないし、体力的にも年齢が上がってくるに従ってたくさんの時間をかけて練習していくスタイルはいつまで続けられるかわからない。今後のためにも、この状況をこれまでできていなかったことに取り組む機会と前向きに捉えて、改めてここから数年柔術にどうやって取り組んでいくのかを腰を据えて考えてみた。

◎Absolute MMAでの練習については別のエントリーで書いているので是非ご覧ください。

「練習」でしかできないこと、「練習」以外でできること

「練習」でしかできないことは何かと考えると、ドリル/スパーリングなどの対人練習、クラスの先生(自分以外の人)からの技術の教授がある。逆に「練習」以外でできることは何かと考えると、教則動画や自他の試合映像などを通した技術の研究、そしてストレングス/モビリティなどのフィジカル強化と食事なども含めたコンディショニングがある。時間が取れない時にどうすればいいかと考えたのは、この練習でしかできないことと練習以外でできることを峻別して、それぞれの時間をそこに集中することだ。

「練習」でしかできないこと

「練習」ができる時は練習でしかできないことを意識して取り組む。

「練習」でしかできないことは何かと考えると、ドリル/スパーリングなどの対人練習、クラスの先生(自分以外の人)からの技術の教授で、まとめると技術の練度を上げることだ。特にスパーリングでは攻防の勝ち負けを意識すると、どうしても得意な技術に頼ってしまいがちになる。普段から意識してできないことをやっていかないと、いつまで経ってもできるようにならない。あと、自分は締めをずらして逃げるのが得意なので、バックを取られたあと何分も締めをずらして逃げ続けるだけで時間がなくなったりする。締めをずらすのも技術なのでたまにはそれも必要だけど、技術の練度を上げるには早々にタップしてリセットし、取り組みたい部分にフォーカスした方がいい。足関節の攻防なども同様のことが言える。部分スパー/シチュエーションスパーの重要性はジョゼフチェンのセミナーなどでも説かれていたけれど、部分スパーを何度も繰り返すような練習時間が確保できないのであれば普段のスパーを部分スパーに見立てて取り組むような意識が必要だと思う。

「練習」以外でもできること

「練習」以外でもできることは練習以外でやる。

「練習」以外でもできることは、教則動画や自他の試合映像などを通した技術の研究、そしてストレングス/モビリティなどのフィジカル強化と食事なども含めたコンディショニングだ。

これまでは1日4〜7時間程度の練習をできるだけたくさんやり、概ね週1回2〜3時間筋トレを行ない、その上で空いている時間に教則動画を見ていた。練習中も新しい技術を教えてもらったりしていたし、練習を通じた体力の強化もできていたと思う。

しかし、練習時間を確保できなくなってくる以上、研究、フィジカル、コンディショニングは練習以外の時間に意識的にやるしかない。もちろん、そもそも練習時間が確保できないというところから始まっているので、毎日何時間もやることはできないけれど、1日30分の技術研究、1日30分の筋トレ、そして意識的なコンディショニングが最終的には大きな違いになってくるというのは、取り組んでいる人ならわかってもらえると思う。

まずは、どんなに忙しくても1日30分は技術研究を進める時間を作ることを意識する。当然時間がないことが前提ではあるのだけれど、移動時間や食事の時間なども含めて1日30分は必ず確保する。フィジカルについては、オーストラリアは土曜午後、日曜の週末はジムが休みで練習をすることができないので、土曜に2〜3時間のこれまでやっていたのに近いメニューで筋トレを行い、それ以外に平日に30分程度、ストレングスとモビリティの取り組みを行うことを現時点では考えている。またコンディショニングについてもこれまではやれるだけやって疲れたら休むスタイルだったが、日曜は強制的に休みになるので、逆に残りの日は意識的に取り組みを行い、日曜にしっかり休むリズムに切り替えていきたい。合わせて、睡眠時間の確保、栄養バランスの取れた食事とサプリメントによる補強などはこれまで以上に意識して取り組んでいく。

この取り組み方法は今通っている大学院の授業スタイルにも近くて、論文の読み込みや知識の習得、そして課題への取り組みなど授業の外でできることは基本的に各自が意識的に取り組むことを求められており、授業では討論やワークショップなど授業で対面しないとできないことが重視されている。これは働きながら通っている人が多く、毎週多くの時間を授業に回すことが難しいためで、逆にいうと各自が意識高く自律的に取り組むことを大前提として求められているとも言える。
話は逸れるけど仕事においても、子育てや介護、地域の活動など仕事以外に求められることがどんどん大きくなる世の中で固定で時間を拘束するスタイルは望ましくなくて、理想的には現場でしかできないことと各自でできることをしっかり峻別していくべきだと思う。ただ、難しいのは自律的な取り組みが大前提としてあり、それができない人も一定数いるということだと思う。

「成長思考」(Growth Mindset)

自分は「マーケティングの考え方を通じて柔術を考えてみた」みたいな記事は基本的に嫌いなんだけど、授業を通じて触れたGrowth Mindset=成長思考という、できないことをできるようにしていく上でどのような意識を持って取り組みを行うべきかという考え方は、実際にビジネスよりも先にスポーツ領域で見出されたとも言われ、ビジネスに限らずできないことをできるようにするを求められる分野において広く応用がきく考え方だと思ったのでここで紹介したい。

話は逸れるけど、自分は昔から会社の研修とかで安易に声高に叫ばれる「成長」という言葉も大嫌いで、できればここでも使いたくなかったんだけど、Growthという言葉を訳すにあたって適当な言葉がなかったので一旦見出しは「成長思考」とした。ここでは成長=できないことをできるようになるということだと定義して、本文中ではなるべく安易に成長という言葉は使わず「できないことをできるようになる」で通したいと思う。

「成長思考」とはどういう概念か?

「成長思考」を理解する上で、成長思考の逆は何かを考えると理解がしやすい。成長思考の逆は何かというと、Fixed Mindset、固定観念や決め付け、諦念と訳すことができる。これは、「向いてないから」「あの人は特別だから」「自分は生まれつきこれはできてこれはできない」など、できること/できないことに関してそれが予め決められたことだと考える考え方のことだ。「成長思考」はこれとは逆に、「しっかり取り組むことでできないことはできるようになる」と考える考え方と定義できる。
これはこの考え方を学べば誰でも世界一になれます、億万長者になれますということではなくて(研修とかの「成長」という言葉はこのへんがうやむやにされてることが多いと思う)、やっていくことで昨日まではできなかったことも少しずつでもできるようになる、と考えるということだ。
※基本的にスポーツに一生懸命取り組んでいる人はみんなできないことをできるようになると思ってやっていると思うので、スポーツ分野で先に発展したということは納得できる。

「成長思考」を持つ人に特徴的な行動

ビジネスにおいて考え方にもとづく分野が学問として成り立っているのは、生まれつき特定の性質(例えばリーダーシップなど)を持っている人の考え方や行動を学ぶことで、そうではない人もそこに近づくことができると考えられてるからだ。なので、成長思考を持つ人はどのような考え方や行動をとるか知ることは、それをトレースすることは、できないことをできるようになることに近づくことに繋がると考えられる。

「成長思考」を持つ人に特徴なのは、
1 結果を求めるのではなくプロセスを信じて取り組む
2 失敗を恐れずに取り組む
3 情報をシェアする、フィードバックを常に求める
記事や論文によって色々言われることは違うけど本質は同じなので、ここではこの3点に集約する。
もちろんいずれもハードワークを前提にしているので、やるしかない。その上で、このような考え方、行動を念頭に置くことで、よりできないことをできるようになっていくことに近づいていくと思う。

Absolute MMAでの練習は、フィードバックが非常に重視されていて、この考え方がクラスに落とし込まれているなと感じる。

成長思考と固定観念はどちらか一方を持つというようなものではなく、両者がグラデーションのように存在するものだ。成長思考を持って取り組んでいても失敗を恐れてしまうことはあるし、フィードバックを批判と感じて素直に受け取れないこともある。結果を求めるあまり取り組み内容がずれてしまうこともある。うまくいかないとき、チャレンジを求められる時こそこの内容に立ち戻りたいと思う。

まとめ

2022年は夢のような環境で練習をさせてもらって、そのおかげもあり以前では考えられなかったような、UWW世界選手権への出場という体験をすることもできた。2023年はこれまでのように長時間を練習に費やすことはできないけど、練習でできることとできないことを区別して、練習では練習でしかできないことに集中し、練習以外でできることは練習以外で取り組むこと、そして成長思考を持って取り組むことで、また1つ2つ自分のレベルを上げていけたらと思う。

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