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HLABの新奨学金制度、その考え抜かれたデザイン

このnoteは、2023年11月8日の Voicy「【教育の明日をよむ】knockout の10分キャッチアップ」の配信内容をもとに作成したものです

今回は、HLAB が11月7日に発表した大学生向けの新しい奨学金制度を取り上げたいと思います。


HLAB の「SHIMOKITA COLLEGE」

HLAB については、過去に一度、下記の記事にて少しだけ言及させてもらいました。

下北沢にレジデンシャルカレッジ(学寮)である「SHIMOKITA COLLEGE」を運営されており、そこでは学生を中心とした多種多様なバックグラウンドをもった若者たちが暮らしています。

大学生だけではなく、若手社会人や高校生も集まっています。しかも、ただ同じ建物に住むだけではなく、一緒に食事を作ったり、カレッジ内外のイベントを企画運営したりと、住人同士の交流が深まるようないろんな「仕掛け」がハードとソフトの両面からなされています。


カレッジ制によるもうひとつの「学び」

「学ぶ」というのは、何も学校や大学に行って勉強するだけではありませんよね。

寝食をともにしながら、いろんな人と交流し、たがいに刺激を与え合いながら暮らすというのも、また大きな「学び」です。そうした理念は、欧米の大学ではわりと一般的だと感じます。

アメリカの大学はどこもだいたい寮を持っていて、そのなかで様々な交流が行われてますし、イギリスもオックスフォードとケンブリッジという世界的に有名な2つの大学と、もう1校、伝統校であるダラム大学は、古くからカレッジ制をとっています。

カレッジ制をとっているイギリスの大学では、それぞれの学生がそれぞれの学部に所属しているのですが、一方で、カレッジと呼ばれる寮では、いろんな学部の学生がごちゃまぜになって暮らしています。

学生だけでなく、先生たちも一緒に住んでおり、それぞれの専門知識を交換しながら、横断的な学びを展開していく、そして刺激を受け取った個々人がさらに学びを深めていく、という作りになっています。

このように、自分の専門に閉じこもらないことこそがリベラルアーツだよねという考え方は古今東西ありまして、HLAB の「SHIMOKITA COLLEGE」もそうした理念に基いてデザインされているのかなと受け止めています。


新設された奨学金、その内容は?

HLAB が新しく創設した奨学金の制度は「SHIMOKITA COLLEGE」の家賃を補助する内容になっています。詳しい内容については募集要項がサイトに載ってますので、そちらを見ていただくのが間違いがないと思います。


ざっくり概要を説明しますと、月々の家賃の一部もしくは全額にあたる3万9000円を補助しますよ、という内容になっています。

相部屋を選ぶ学生は、月の家賃相当額が3万9000円なので、それが相殺されて実質0円で住むことができます。もっとも、管理費や水道光熱費、食費など諸経費はかかるので、完全無料というわけにはいかないのですが、家賃相当額が無料となるのはインパクトがあります。


募集概要に込められた想い

個人的に興味深く感じたのが、募集の際の対象者の選び方です。

以下の3部門に分けて募集がなされています。

1. HLABアカデミック・スカラシップ
2. HLABインパクト・リーダーシップ・スカラシップ
3.
 HLAB D&I スカラシップ

1つめが「アカデミックスカラシップ」ですね。学術・研究領域で秀でた活躍を見せている学生を募集しています。これはなんとなくわかりますね。アカデミックに卓越した人が傍にいるといろいろと勉強になりますから、そういった人を集めるのは、間違いなく他の住人にとってプラスに働くことでしょう。

2つめが「インパクト・リーダーシップ・スカラシップ」となってます。起業や社会事業の分野でリーダーシップを発揮している学生さんを対象としています。これもとてもいいなと思います。周りを巻き込んでいく力をもった人はコミュニティには絶対に必要ですからね。

そして最後が「D&I スカラシップ」です。D&I とは何かというと「ダイバーシティ・アンド・インクルージョン」です。日本語で言うと「多様性と社会包摂」になるでしょうか。

どんな人が対象になるかというと、いわゆるマイノリティにあたる人になろうかと思います。一般的でないと言ったら語弊があるでしょうか、ちょっと変わったバックグラウンドを持っていたり、人とは異なる分野でロールモデルや先駆者となるような活躍を見せている人、こういった方を対象としているようです。

共同生活を通した学びは、いかに多様性を充実させるかがカギです。世代にはじまり、国籍、専門分野、価値観、、、こういった属性が分散されていればされているほど、一緒に暮らす仲間との間に違いが生まれ、違いができればできるほど、異文化と触れ合うことになるからです。

「アカデミック」「リーダーシップ」「マイノリティ」というのは、欧米の大学でもカレッジ内の多様性を富ませるために重視しているポイントです。ここからも欧米型の「学び」の考え方を色濃く反映していることがうかがえます。

自分とは違ったものを持っている者同士で暮らすことにより、さらに大きな刺激が得られる環境設定を期待できる。その効果を狙ってこうした募集概要になったのかなとワクワクしながら読みました。


新奨学金がもたらすいくつかの別の意味

この新しい奨学金制度、カレッジの多様性を加速させるという意味ももちろんありますが、さらにいくつか重要な意味があると個人的に受け止めています。

まず思ったのは、下北沢という、東京の中心部にあるカレッジの家賃が実質0円になるということは、地方に住んでいる高校生が大学入学を機に上京するとなった場合のハードルをぐっと下げてくれるということです。

近年、東京の私立大学が続々と学費の値上げを発表し、世間を騒がせています。国立大学でも先月、東京農工大学が学費値上げを行うと発表しました。


学費だけではなく、生活費に関わるもろもろの値段もインフレによって高くなっていますので、東京に上京することの難易度がすごく上がっていると感じます。それを多少なりとも緩和する効果がこの奨学金には確実にあります。

また一方で、「SHIMOKITA COLLEGE」側にしても、地方で育った学生が来てくれるということは、多様性の面でまた1つ幅が広がりますので、双方にとってメリットがある取り組みだなと思っています。


さらにこの施策は、若者にとってコロナ禍からの回復という役割も果たすだろうと思ってます。

昨年、甲子園で仙台育英の須江監督が「青春ってすごく密なので」というコメントを出して世間を沸かせました。まさにその通りだと思います。 密であることが大事な時期だと思うんです、高校生、大学生って。

コロナ禍は、残酷にもそれを奪い去った数年間でした。そして大学のサークル活動などは、いまだ十分に戻りきっていないという話も聞いています。そこからの回復をしていくにあたり、こういったかたちで住まう場所が「密」であるということは、学生にとって非常に得るものが大きいと感じます。


さいごに

HLAB の新奨学金制度が内包する追加の2つの意味 ―― 「地方からの上京難易度を下げること」と「コロナ禍からの回復」 ―― に関して、多くの共通点があると感じている取り組みが、東京都住宅政策本部の行っている学生入居による地域コミュニティ支援事業です。次回はその取り組みを取り上げたいと思います。

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