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生きる場所を決めるということ

人生の重要な分岐点において、ある選択肢は厳しく、別の選択肢は甘く制度設計をする。国の思惑通りに「選ばせる」。そういう例はよくあります。

一昔前なら、第3号被保険者の制度を使って、専業主婦という生き方を優遇してきました。いまは逆に母親の就労継続を手厚く支援することで、共働きを家族形態のスタンダードにしようとしています。

国は国で、マクロな観点から国の持続的な発展を望んでやっていることです。ただし、それは同時に、個人の選択に大きな影響を与えてしまい、本人の望まない方向に人生を歩ませてしまう面もあります。


グローバルな教育、ローカルな教育

一部のトップ校をグローバル大学(G型大学)、その他をローカル大学(L型大学)として位置づけ、現在の大学制度そのものを見直せという議論が出てきたのは2014年頃のことでした。

G型大学では世界に伍する人材を少数精鋭で育成する。L型大学は地域に根を張り、職業訓練に近いかたちの教育をさずけることで、多くの地方企業が陥っている人手不足を解決するための人材を輩出する。そんな考え方です。

若者のニーズは多様化している。企業の人材需要に応える教育も必要だ。そこまでは広く課題意識を共有できていたものの、

【グローバル人材=都会、 ローカル人材=地方】

という単純化した図式が怒りの導線に火をつけたのか、Twitterをはじめとした各種媒体で議論を巻き起こしたのを記憶しています。

さて。
なんで突然こんなことを言い出したのかというと、たまたま今日、都会と地方を強く意識するニュースが2つ、飛び込んできたからなのです。


ふたつのニュースに共通する意図

ひとつめは、「高校普通科、3科に再編へ」というニュース。
実現すれば1948年に普通科制度ができて以来、はじめての再編になるとのことです。

 文科省は昨夏、高校改革について有識者会議を設置。SDGs(持続可能な開発目標)など教科の枠を超えた課題に取り組む学際融合学科と、少子高齢化など地域社会の問題に取り組む地域探究学科の設置案を検討してきた。設置の要件として国際機関や地元企業など学外組織との連携強化を求める方向で検討する。

 2学科のほかにも、教育委員会の判断で、スポーツや文化などで魅力ある人材育成を目指す特色のある学科の設置も認める方針。

そしてもうひとつは、「地方国立大の定員増へ、政府」という記事。

 地方国立大の定員増は、若者が東京圏に流出するのを防ぐのが狙い。地域経済を支える人材育成やオンライン教育の活用、他大学や地元産業界との連携も強化する。私立も含めた地方大学の魅力向上策を有識者会議で議論し、改革の方向性を年内に取りまとめる。

これら2つの記事は、それぞれ別々のテーブルで議論されて出てきた方針ではありますが、いまの政権の考えを色濃く反映しているように思えてなりません。

「地域には地域の解決すべき課題があるのだから、無理に都会に出て行かなくてもいいんじゃない? 身の丈に合った人生は生きやすいよ?」

「地元の国立大学なら入りやすいよ? 逆に、都会の私立大学は厳しい定員管理をしているから入るのが難しいよ?」

こんな甘い誘惑をあちらこちらにふりまいて、どうにかして若者を地方に縛りつけておきたい。そんな魂胆を感じます。

生きる場所は、自分で決める

もちろん、地方には地方の魅力があります。その魅力に心から魅せられて、地元に残る決断をする生徒もいることでしょう。あるいは地方の課題解決に使命感をもって生きていく人生もあります。いずれの生き方も、とても素敵なものです。

しかし、地元に残る選択肢に国が政策的なメリットを用意して、個人の選択を歪ませることにつながってはいないでしょうか。影響を受けるのは本人だけではありません。もし、親、学校の先生、塾の講師、いろんな関係者から上京に難色を示され、地元に残ることをオススメされたら。心が揺るがない生徒ばかりでしょうか。

残念ながら、客観的に見て、いま現在もこれからの未来においても、地方のおかれる状況は大変厳しいものです。日本という船が沈没しかかっているなかで、真っ先に沈んでいく部分といっても過言ではないかもしれない。

生まれたところがたまたま地方だったからといって、ローカルに生きなければならないことはないのです。そんな当たり前が当たり前だと感じられないくらい難しい選択にならないことを願ってやみません。

ひとりの、元地方民として。

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