ブレイン・フォグ(脳の霧)について
コロナ後遺症(Post COVID-19 Syndrome)が話題となり始めてから、約2年以上が経ちましたが、病態に関することはまだ未知のことが多いです。
特にブレイン・フォグ(脳の霧)という、単語はよく聞かれますが、実際にどのような症状があり、どのような経過をたどるのでしょうか。また、治療法はあるのでしょうか。
様々な疑問があるブレイン・フォグについて今回は解説します。
Q. ブレイン・フォグにはどんな症状がありますか。
A. 最も多いのは、会話中に言葉が出にくい、思い出しにくい、という症状です。言いたい言葉は口まで出掛かっていますが、どうしても言葉にできない、という症状を患者さんはよくおっしゃいます。 そのため、コミュニケーションに支障をきたし、特にCOVID-19や、その他の病気で苦しんでいるときには、非常にもどかしい思いをすることになります。
次に多いのが、短期記憶障害です。患者さんからよく聞くのは、「何かを探しに部屋に入って、いざ部屋に入ると何を探していたのか覚えていない。」ということがあります。 また、新しい情報を聞いても覚えていないことがあります。一方で、運転や日常動作などはできるので、症状が気づかれにくいのでしょう。
最後に、マルチタスクが困難となる、という症状もあります。 マルチタスクとは、複数のタスクを同時に行うことですが、ブレイン・フォグになると、簡単なことでさえ、同時に行うことが難しくなります。例としては、会話をしながら買い物をすることも労するようです。
Q.どの程度の人がブレイン・フォグになるのですか。
A. ブレイン・フォグは決して珍しいものではありません。
米国ではCOVID Activity Rehabilitation ProgramというCOVID-19後のリハビリに参加されている患者さんの45%が、ブレイン・フォグに悩まされているという報告もあります。不幸なことに、些細な症状であっても、思考がしにくい、という症状は、仕事や人間関係に問題が生じるため、最もストレスの多い症状の一つであるとされています。
Q.どうしてブレイン・フォグになるのでしょうか。
A.COVID-19によって脳の構造・機構が変化し、その結果、機能障害が起こるためです。
現在、ブレイン・フォグの謎が解明されつつ、COVID-19を発症すると、脳の構造が変化し、その結果、機能障害が起こるということがブレイン・フォグの原因であるという報告があります。
また、ブレイン・フォグは主観的な症状であるため、評価が難しいですが、客観的な評価方法も出てきています。例えば、メイヨークリニックでは、脳のバーチャルテストを25分間行い、問題のあるある思考領域を特定することができます。
このように、徐々にブレイン・フォグの評価方法も確立されてきているのです。
Q. ブレイン・フォグに治療法はありますか。
A.残念ながら特効薬はありませんが、症状を緩和させることはできるかもしれません。
ブレイン・フォグは、医学的な診断ではないので、特定の治療法はありませんが、不安がブレイン・フォグを増強させたり、反対に、ブレイン・フォグで不安になるなど、精神的な影響は計り知れまん。従って、精神状態を管理
することで、症状は改善されるかもしれません。
以下に示すのは、対照的治療の例です。
参考ください。
・抗不安薬、抗うつ薬などの薬物療法
・不安について話し、対処法を開発するための心理療法
・COVID-19罹患後の支援グループへの参加
・学校や職場に申告した上での環境調整
・適度な運動、深呼吸、瞑想
十分な睡眠をとり、水をたくさん飲み、栄養を補給することも、ブレイン・フォグのリスクを減らすのに役立つ場合があります。不安に対するマインドフルネス的なケアが重要なのでしょう。
その他、COVID-19を発症した場合は、重症化リスクがある方は早期に治療を行う必要があります。下記のリスクがある方は、早期の病院受診をしましょう。
以上が、ブレイン・フォグについての概説になります。
引き続き明らかとなったことがあれば、追記します。
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