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蝶々結び

8月14日、つまり明日には千秋楽を迎えるということで。本当にいろんなことに気を付けて来たのだろうことが分かるので、本当におめでとうございます。
また、蝶々結びを舞台という形にしていただきありがとうございます。観劇させていただきましたがとても素敵な舞台でした。

今回は脚本のみの関わりだったので、主に本の振り返りになります。

蝶々結びのテーマは「自分と外の世界の繋がり」でした。
コロナ禍に突入して、役者としての仕事が失われていった5月に書き上げたので、そのタイミングもあってのことです。僕自身3月に出演する予定だった舞台が無期限延期になったばかりで、自分は役者として何ができるかと考えておりました。
ZOOM演劇を観ましたがそこまで面白いと思えず、オンライン演劇も見る気にはなれず。自分自身は役者としてなにか表現しようとしたかというと何もできず。いな、事務所でyoutube企画があったのですが、個人的に面白いものが作れたかというと悩ましいものでした。
そんな状態の中、僕が今できることは物語を生み出すことだと、パソコンに毎日8時間以上張り付いてカタカタと作業していました。

ここからは物語のネタバレも含みますので、まだ舞台を見ていない方は見ないでいただけると幸いです。

歌うたいとのシーンのことです。
歌うたいは「自分の夢と思っていたものが、少しずつ形を変え別なものになってきてしまったら、それはもう自分の夢ではないのか」と旅行者の男に問います。それは港谷の自問自答でした。
自分は役者で売れたい。でも芝居と関わり続けられるなら、ほかの形でもいいのではないかと自分に向いているものを探し、やってみて。でも心の中で本気で役者をやっていたいなら、役者以外のことをするのはどうなのかと自分の行動を軽蔑している部分もある。
僕自身への自己肯定をするように、旅行者の男は僕の言ってほしい言葉を言うのです。「今自分はこうなりたいが変わっていくのは悪いことじゃないと思う」「いつか売れると自分を騙し続けるよりも、今できることはなにかと考えるのは悪いことじゃない」と。大人の達観めいたことを言います。

しかしそこに女子学生がくる。変わりたいと。閉じ込められたここから飛び出したいと若々しい熱量を持って。「なんとなくでも行動して、そこから道を見つけたい」と生身でぶつかっていく。

結論は出ていません。役者でも売れたいし、劇作もとても楽しい。演出もやっと面白さを見出してきました。なので、もう少し続けながら悩みたいと思います。
そう言えば、歌うたいが「私たちは好きな歌を歌って自由だーって叫んだけど、本当に自由だったのかな」というのは役者のメタ構造引いてて、彼らは本当に自分の思っていることを喋らせてもらっているのか?という疑問からでした。
しかし高校生たちや町医者や看護師さんが脚本上でも結構自由に暴れ回ってくれまして、役が僕の意思から離れて動いていく所もしばしばありました。

そして、外の世界。これがとても大事でした。どうやって外の世界と繋がっていくのか。
歌うたいたちは、あくまであの夏の駅を彩る温かな住人で、どうしても外の世界の人間がもう一人必要でした。それが旅行者の女。決別の象徴。
外の世界と繋がる為には、内の世界と決別しないと繋がることが出来ない。心を閉ざして引きこもっていては決して誰かと交わることができない。
でもそれは一人では適わないものでもありました。自分は自分を納得はさせられるけど、動き出す動機は作れないと言いますか、何かをするには他者の影響が大きな原動力になると思っています。
僕は本を書く機会を与えてもらえたから、閉じこもらずにすんだと思っています。自分の為だけでは動けなかった。その経験が、旅行者の女を生み出したのだと思っています。

そんなわけでこの蝶々結びはかなり僕のその時の悩みや解決の糸口がそこら中に散らばっていて、なんだかとても恥ずかしくはありますが、ですが関係者の方々の読んだ感想や観劇してくださった方の反応を見ていると、ヘンテコな話を書いてしまったってわけではなさそうだと安心しております。

そうそう。駅員さんをトイレの神様にしてくださったのは長谷川太郎さんはじめ、座組の方々のおかげなんです。僕は彼はどうしようもない記憶の端っこの変なおじさんだと思って書いていたのですが、とてもとても素敵で愛おしいキャラクターにしてくださいました。本当にありがとうございます。

長くなってしまいましたがここまで読んでいただいてありがとうございます。もしまだ見てないよって方がここまで読んでしまっていたら、明日当日券で見に行ってあげてくださいね。
上野ストアハウスにて、いよいよ千秋楽です。
それではここいらで、むすび。

チケット
URL:http://confetti-web.com/luckup

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