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口コミが生まれるスイッチを知る

こんにちは。

マーケティング視点で読解力を高めるノートでは、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかると題し、デジタルネイティブ時代の情報発信を主たるテーマとし、中小企業や個人事業主がオンラインチャネルを活用する際の前提となる、情報接触態様の変化を読み解き、IDやSNS、そして口コミを科学して理解するノートをお届けしてまいります。

第1章 デジタルネイティブ時代の情報接触
第2章 知らぬままに置いてけぼりになるリスク
第3章 生活者理解のために必要ないくつかのこと
第4章 口コミが生まれる、広がる、その理由を科学
(1)口コミが生まれるスイッチを知る

第5章 ファンを作るために必要なことはひとつだけ
第6章 オリジナリティとどこにもないストーリー
第7章 ファンを増やす、共感を得る仕組みと仕掛け


1.良い口コミが発生するタイミング

第4章では、口コミにフォーカスし、デジタルネイティブ世代が情報入手時に活用するSNSと、インターネットが一般化した後、情報交換、情報取得の中心にあった掲示板やレビューサイトとの比較を行うとともに、第1節では、口コミが発生する起点を取り上げ、第2節以降では、口コミを発信する人のモチベーションや、口コミが起きやすい商品の特性、そして、書き込みされた口コミが伝播していく構造等、多方面から口コミとコミュニティについて科学してまいりたいと思います。

まず、本節では、口コミが発生する起点なるスイッチをご紹介し、なぜ、自分の身の回りに起きた出来事や感情を、周囲の人に伝えたい、発信したいと思うのか、発信する契機となるスイッチの存在について、読み解いていきたいと思います。

口コミは、SNSを利用する人だけの情報発信や共有ではありません。私も、会社の同僚と日常の会話をする中で、「渋谷のスクランブルスクエアの46Fに入ったレストランはすごく雰囲気が良かったよ」という共有をしますし、出張に行った人から、「博多天神の大丸前の屋台に立ち寄った時のチャーハンは再訪確定の味」という情報のおすそ分けを頂けるのも口コミであり、秘書に、「個室で値段はこれくらい、商談にも使える落ち着いた和食の店を教えてほしい」と尋ね、「東京の芝、とうふ屋うかいの雰囲気は良かったですよ」と教えてもらうことも、日常よく行われている口コミを用いた情報収集の一つだと思います。

このような、ポジティブな情報収集や口コミは、いつ、どのような時に生まれるのでしょうか?世の中で日々起きている事象や見聞きした事が、「個」から発信される、そして、その口コミが身の回りに存在するネットワークを通じて伝播していく際の起点となる、「口コミ発生のスイッチ」について、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。

口コミの性質を、良い口コミ(ポジティブ)と、悪い口コミ(ネガティブ)に分けずとも、口コミのスイッチが入る基本的な条件や構造は同じなのですが、本noteは、悪口や中傷、批判等のネガティブなレピュテーションのリスクを回避することを、テーマにしておりませんので、あくまでもポジティブなもの、良かったことを前向きに知らしたい、紹介したい、という動機に基づく口コミを、事例として取り上げて、ご説明を差し上げたいと思います。

良い口コミを、何らかの媒体で伝えたい、あるいは、直接伝えたいな、と思うことを「スイッチが入る」と表現していますが、そのスイッチは、「何らかの形で感情が動いた」、「揺さぶられた」時に入るものだと理解しています。

また、感情が動く、あるいは、自分の気持ちが揺さぶられる時、は果たしていつなのか、という事を文章で表現すると、私は、「事前期待」と「事後の評価」に差分(GAP)があった時だと、ご説明をしております。

食べ物を事例に取り上げると、同僚から頂いた地方のお土産を食べる前に、「恐らくこういう味で、このレベルの美味しさでしょ」と想定していた味に対し、実食した時に「想定を超えて美味しいじゃないか」というポジティブな事後評価が生まれるケースがあります。

事前に期待した味のレベルを、実食した後の味のレベルが上回り、「良いGAP」が発生した事により、食べ終えた時の感想や、味の特徴について、自分の中に留めるのではなく、誰かに伝えたい、感想をおすそ分けしたい、自分の意見を表明したい、という気持ちが湧きあがってくるタイミングが、いわゆる口コミの「スイッチ」なのではないかと、捉えています。

2.良い口コミのスイッチを考える

続いて、前項でご紹介した口コミの「スイッチ」について、もう少し分解していきたいと思います。良い口コミが起きる契機は、事前期待(想定)と事後評価のGAPが生まれる時であるとご紹介しましたが、感情が動く、揺さぶられる瞬間について、日経BizGateの記事「誰かに伝えたくなる、5つの口コミ起爆スイッチ」を参考とさせて頂き、ご説明したいと思います。

上記の記事内で紹介されていた琴線スイッチを参考に、良い口コミの5つのスイッチを簡単に整理いたしましたので、以下の図表をご覧ください。

1つ目のスイッチは「驚き」です。SNSで共有する際の顔文字表現でいえば、「Σ(*´∀`驚ノ)ノ」のような形になるのでしょうか。思ってもいなかったこと、単純に面白く、すごいな、という率直な感情が湧いたときに、すごかったんだよ、という感想を人に伝えたくなる、というものです。

2つ目のスイッチは「疑問/興味」です。顔文字の表現でいえば、「(゚Д゚≡゚Д゚)」でしょうか。自分の理解や常識を超える現象を目の当たりにしたときに、本当かな?でも実際に起きていることだから、と気持ちが揺り動かされれ、その事象に強く興味を持った時に発生する口コミのスイッチです。

3つ目のスイッチは「発見/納得」です。顔文字の表現でいえば、「ホ━( ゚д゚)━ゥ」でしょうか。自身の疑問が解消された時や、知らなかった解決策、整理がされている様を見聞きしたときに、素直に感心し、納得感が生まれ、その気持ちや感情を知らせたくなる、というものです。

4つ目のスイッチは「共感」です。顔文字の表現でいえば、「+.(o´∀`o)゚+イイ!!」でしょうか。SNSの投稿や閲覧時の感情表現のアクションの一つとして、「いいね」ボタンや「💛スキ」ボタンを押すというものがありますが、これは「共感」を得る、あるいは「共感」の意を伝えるものとして説明することができると思います。この視点でいえば、SNSは「共感」のネットワーク(情報の連鎖)だと表現することもできそうです。

5つ目のスイッチは「感動」です。顔文字の表現でいえば、「。・゚・(*ノД`*)・゚・。」でしょうか。ストレートに泣ける、自身の感情を揺さぶるようなエピソードを知った時や、泣くほど嬉しくなる、または胸を突くようなストーリーに相対したときに、発信するスイッチが入る、というものです。

次項では、食べ物に関する口コミを取り上げ、上記5つのスイッチを表す文章表現を具体的に見ていきたいと思います。

3.5つのスイッチ、事例のご紹介


これからご紹介する5つのスイッチの文章表現は、私が、とある地方の県の産業振興に携わる職員の方からお声がけいただき、地元の食品クラスタ(地元の名産を生産・加工して流通させる)の経営者向けに、オンラインチャネル活用のための研修(ワークショップ)講師を務めた際、6次化に取り組む生産者が取り扱う加工食品や飲料を想定し、口コミが生まれる背景事情をご説明差し上げた際に取り上げた参考事例になります。

地方の名産品や、有名店のお菓子、食品メーカーのパッケージ、海外の知る人ぞ知る美味しい食品等、購入者の「美味しい!」、「買って良かった!」の声が多い人気の食品に対する声がまとめられている、以下のサイトを参考に、整理いたしましたので、ご興味がある方は、図表と共に、ご確認ください。

まず1つ目に取り上げたのは「驚き」です。
こちらの声は、秋田の漬物、「秋田いぶりがっこ」に関する購入者の感想です。

同じく、いぶりがっこ大好き。秋田行った時、とりあえず買ってみた。名産品なんてどれもうまくないよねーと思ってたらめちゃくちゃうまい!スモークの香ばしさとたくわんが合うのねー。もっと買ってくればよかった。

私が注目したのは「名産品なんてどれもうまくないよねーと思ってたらめちゃくちゃうまい!」の部分です。この購入者は、いぶりがっこという地方の名産品対し、事前期待としては、どれもこれもそんなに旨くないはず、という想定を持っていたのですが、実際に召し上がってみると、実食後、想定以上に美味しかった、ということがわかり、そのGAPに「驚いた」ことを発信しています。


2つ目にご紹介するのは「疑問/興味」です。
こちらの声は、北日本フードの「スーパー極上キムチ」に関する感想です。

「今、北海道で一番売れているキムチです!」「ホントかよ!」って心の中でツッコミながら食べましたよwたしかに安くて美味しかったです。

私が注目したのは「ホントかよ!って心の中でツッコミながら食べましたよw」の部分です。数ある商品の中で、北海道イチ、というのは言い過ぎなのではないか?という疑問を持った購入者ですが、召し上がった結果、「リピ決定」という事後評価になりました。

また、海鮮風味強め・甘めまろやか系という購入者の味の嗜好に沿った商品だったことや、国産野菜使用、白菜の加工地が日本だったという、購入者の商品の意思決定の理由になる部分についても興味を持ったことから、商品の評価を書き込むに至ったことが見て取れます。


3つ目にご紹介するのは「発見/納得」です。
こちらの声は、ローソン限定で販売されていた「カバヤ生キャラメル」に関する感想です。

ローソン限定 カバヤ生キャラメルへんてこな個包装だけどうまい。花○牧場のそれよりうまいかもしれん。しつこい甘さが癖になるw個数限定、ローソン限定らしく近くの店を3件回ったけど各店1袋ずつしかなかった。店舗ごとに決められた個数しか入荷できなくて、とりあえずは今入荷した分で終了らしい。見直したよカバヤ。

私が着目したのは「へんてこな個包装だけど」、という表現と「見直したよカバヤ」の部分です。購入者は商品の個包装に着目していますが、実際に、カバヤ独自の包装技術が採用されていた商品だったそうです。風味や味わいを生かすための個包装の工夫に加え、実際に食べみると、しつこい甘さが癖になる商品で、こんなに美味しいのか、という発見と、商品を美味しく召し上がってもらうためのメーカーの工夫に納得して、事前の期待を上回る結果について、「見直した」という表現と共に発信しています。


4つ目にご紹介するのは「共感」です。
こちらの声は、北海道の物産展で販売されていた北海道の有名店小樽のルタオの「ドゥーブルフロマージュ」というチーズケーキに関する感想です。

「ルタオ」のチーズケーキをやっと食べる事ができました。神戸阪急で北海道展をやっていたので、そこで買えました。おいしいね。おすすめしてくださった奥さま、どうもありがとう。

ご購入者は、仲の良い奥様から、「とても美味しかったよ」という紹介を受け、きっとおいしいのだろうという事前の期待を抱き、神戸阪急でルタオのチーズケーキを購入された方です。実際に召し上がると、「おいしいね」という事後評価になるのですが、ここでは、チーズケーキに関する事前と事後の味の期待と実食時のGAPというよりは、紹介してくれた奥様と同じように、「私も美味しかった」という「共感した気持ち」を取り上げて、発信されていることがわかります。

最後にご紹介するのは「感動」です。
こちらの声は、東京土産として人気がある1965年に日本で初めてチョコレートをかけたミルフィーユを創った「ベルン」の商品に関する感想です。

アメリカに住んでた時に、バレンタインにベルンのミルフィーユを取り寄せて子供の幼稚園の先生達に配ったら、翌日子供を迎えに行った時に取り囲まれて「家族で奪い合いになった」「あれはどこで買えるのか」と口ぐちに言われたよw日本から送って貰ったと言ったら皆(´・ω・`)ショボーンてなってた。

ご購入者は、幼稚園の先生に、日本のお土産として、ミルフィーユを配ったところ、「家族で奪い合い」、「どこで同じものが買えるのか」と口々に言われるほどの美味しさだった、というエピソードを添え、商品を召し上がった方の感情を揺り動かすくらいの商品である、ということを紹介しています。

令和時代に入り、SNSの「#」ハッシュタグを付けて、心が動いた瞬間の気持ちや、その商品、背景にある理由やストーリー、エピソードを、個人が発信しやすくなっている他、商品に関する評価を調べ、購入を検討する際の材料とする人がますます増えていくと思います。


本項でご紹介した「人に伝えたくなる」食品事例をご覧になり、「確かにそういう時に周りの人に伝えたくなるかも」、「実際に私も紹介する」、あるいは「SNSで発信することがあるな」、と自分事に置き換え、デジタルネイティブ時代の口コミの特徴を読解頂けていたら、幸いに思います。

第4章(1)口コミが生まれるスイッチを知る、では、口コミのスイッチは、事前期待と事後評価の間でGAPが生れた時に入ることや、良い口コミのスイッチである、ポジティブなGAPである、心が動いたときを食品の口コミ事例を基に読み解いてみました。

第4章(2)口コミってどう広がるの(伝播の構造)、として、口コミが、SNSのネットワークを通じ広がっていくステップや、口コミ発生から伝播、影響力を持つまでの構造、そして、口コミの威力の総量について考えてみたいと思います。

 ここまで、ご一読いただきありがとうございます。マーケティング視点で読解力を高めるノートでまとめた電子書籍のコンテンツも、ご覧いただけたら、幸いです。

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