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裸 足

(はじめに)


 
皆さん、裸足で歩いたことがありますか?

1.    三軒茶屋で裸足で歩いていた女の人



先日(平成27年(2015年)9月)、私は液晶学会が終わって、夕方、三軒茶屋の駅で、東京で勤めている娘と待ち合わせていました。台風が接近していて、三軒茶屋の駅を地上に出ると、外は暗く激しい雨が降っていました。そこで娘と会い、一緒に歩いて、夕食を食べに三軒茶屋駅からレストランに向かって歩道に出ました。みんな傘をさしている人ばかりの中、前を歩いている30歳くらいの女の人は、傘もささず小脇に包み袋を抱えて、私たちの前を裸足でゆっくり歩いていました。白いブラウスに黒いスカートをはいた中肉中背の女の人で、決して変な人には見えないですが、歩道の黄色いブロックの上を裸足で歩いていました [1]。娘と私は彼女を追い抜いて前に出ました。しばらくして、娘が私に振り向きながら「あの人、裸足だったね。どうしたのかな?」と聞きました。
私は小学生のころを思い出していたので、
「父さんが小さい頃は、雨がすごく降っているときには、学校から帰るときは、ズックを脱いで、裸足で帰ったものだよ。あの人も、きっときれいな靴を濡らしたくなかったんじゃないか。」
「へえ、父さん、学校から裸足で帰っていたの?」
「うん。みんな、靴が濡れて汚れるのがいやだったから、当時の友達はみんなそうしていた。」
「父さんとこは、すごい田舎だったんだね。」
 
う~ん、これ昭和35年(1960年)くらいの香川県の田舎の話ですが、それで、鹿児島県臥蛇島の女の子のことを思い出していました。
 

2.    新幹線ホームで裸足で立ってた女の子


 
九州トカラ列島に臥蛇島という島がありますが、今は無人島になっています。昭和39年(1964年)東海道新幹線が開通して間もなく、臥蛇島の熱血先生[2]が、島の小学生に都会を見せてやりたいと、わずか数人の全校生徒を引率して東京に修学旅行に来ました。東京を見物し、帰りは初めて新幹線に子供たちを乗せてやりました。島では汽車や電車だって見たことないのです。東京駅の新幹線ホームには、新聞記者やテレビのカメラが彼らを追っていました。私は、この時のドキュメンタリーを、子供のころに見ました。そのドキュメンタリーでは、臥蛇島の小学生の小さな女の子は、ちび丸子ちゃんそっくりの姿で、スカートに帽子をかぶってリュックをしょっていました。そして、東京駅の新幹線ホームの上に立っていました。でも、その女の子は裸足だったのです。さすがに田舎出身の私も、驚いてすごく印象に残っています。
 

(おわりに)


 
50年後の今の日本では、さすがに三軒茶屋の女の人みたいに裸足で歩いている人をみかけるのは、とても珍しくなりましたね [1]。
 
 
ご参考
[1] この女性は、ロシア人のLanaさんかもしれません。日本語がペラペラでYouTubeで「晩酌」をしながら、いつも面白い話をしている方で、この方が、「三軒茶屋で、台風の日、裸足で歩いた」という話をされていたのを偶然YouTubeでみたので、きっとこの方ではないかと思います。
https://www.youtube.com/@lanatok21
[2] この先生、大変立派な方で島民から非常に親しまれ、入道先生と呼ばれていたそうです。
詳細は、下記のURLのWikipedia人物の項をご覧ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%A5%E8%9B%87%E5%B3%B6
 
*なお、冒頭の臥蛇島全島の航空写真は、下記のURLのWikipediaから引用させて頂きました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%A5%E8%9B%87%E5%B3%B6
最終更新 2023年3月5日 (日) 14:04
 
 
平成27年(2015年)9月12日 随筆
令和5年(2023年)11月19日 加筆
 

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