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野球肘の「現場対応」


連日、高校野球・甲子園の話題で賑わっており、
昨日でベスト4が決定しました。

毎試合とも魅力的な試合ばかりです。

各チームともそれぞれカラーがありますが、
試合を作れる投手が豊富にいるチームは
やはり強い印象がありますね!


今回は、
野球肘の現場対応についてお話したいと思います。


現場対応といっても痛みがあれば、

基本的には「投球を避ける」ことが最善の対応

になります。

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ただ、痛みが出てからだけでなく、
「痛みが出る前の対応」
が選手を守る上でとても大切な役割といえます。


基本的に選手は試合に出たいという思いがあるので、
指導者に対し
自ら「痛い!」と言わないケースがほとんどではないでしょうか。


明らかなパフォーマンスの低下があれば気づくかもしれませんが、
明らかな動きでみられず、選手が痛みや不調を抱えたときに気づけることが大切になると思います。

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ここが現場での把握・判断でとても難しいところです。

「痛いと言わない選手の自己責任」だけで
選手のせいにしてしまうのは無責任な対応にもなります。

このあたりは指導者さんが悩める部分ではないでしょうか。


そこで、
現場の一判断として
「き・ま・り」
を参考にしていただけたらと思います。

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■き 聞くこと -hearing-

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選手が発信する言葉・情報から
選手のコンディションを把握していきます。


実際にどんなことを聞けばよいのでしょうか?

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このような要素がよいと考えています。


上記のような
選手に対するヒアリングに加え、以前にお話しした
肘の痛みチェック(押した痛み・曲げ伸ばし・ストレス)
実行していただくと、
より選手の状態を把握できると思います。

【肘の痛みチェック】

【肘の動きチェック】

【肘のストレスチェック】

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これらより、
会話から読み取れる選手の情報は常に把握しておきたいものです。


特に小学生では
「痛いことが痛いとわからない」
というケースもあります。

なかなか伝えづらい選手から指導者さんへの「痛み」のサイン。

選手が伝えられるようにするには、
まず指導者さんが選手に歩み寄ることが大事な一歩であり、
痛みを伝えられるようなチームの雰囲気・環境つくりが
必要でないかと思います。

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■ま 守ること -management-

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具体的に挙げると
投球障害予防のためには「投球制限」を指します。

詳細は前回のnoteでも書きましたのでコチラをご覧ください。


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図のようにガイドラインで定められていることを守り、
日頃より数に敏感になることが大切です。


特に学童野球では、
土日のみに1日がかりでの練習や試合が
組まれていることが多いです。

「平日5日間を休み、土日に一気に投げる。」

このような現状は多いのではないでしょうか。


これでは、
投球数・全力投球数の多い選手が
ケガをする可能性が高くなるのは
容易に想像がつくかと思います。

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また、

1週間の練習時間が16時間を超えることも肘の痛みと関連

(文献;臨床スポーツ医学2016.11)
という報告もあります。


選手のコンディションを管理し、
ルールを守ることが選手を守ることにつながります。


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■り 理解すること -knowledge-

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理解するとは、選手の状態を理解するという意もありますが、
それよりも「ケガの知識をもつ」という
意味の「理解」が重要であると思います。

例えば、ジュニア世代では


からだの構造が未発達
投球フォームの未成熟
オーバーユース

などによって投球障害を引き起こす危険性が高いとされており、
いかにそのリスクを減らせるかがポイントになります。

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野球肘の中でも様々なものがあります。

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(著書:野球 肩・ひじ・腰の鍛え方・治し方 より)


筋肉に比べて、骨や靭帯の方が治癒に時間がかかるということです。


野球肘でもケガの場所によって痛みの問題や理由が変わってきます。

痛みの場所や痛みの起こり方・復帰にかかる時間を
知ることで、野球肘のタイプを把握しておくことが
とても大事であると思います。

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■野球肘のこわいところは痛みがないのに異常があること

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「野球肘は痛みがなくなったから投球OK」
というような現場での判断はよく聞きますが、
この判断はとても危険な判断になりかねません。


痛みがなくても骨軟骨の異常がみられる
「離断性骨軟骨炎」

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(著者:子どものスポーツ障害 こう防ぐ、こう治す)

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(著書:野球 肩・ひじ・腰の鍛え方・治し方)

先ほど挙げました通り、
野球肘はそれぞれ痛めている部分も大きく異なるため、
復帰にかかる時間も変わってきます。


つまり、「痛みがなくなったからOK」

にしてしまうことは
かなり危険な判断につながってしまいます。

こうしたことから、ケガの「理解」がとても大事になってきます。

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■チームで統一した予防活動

「き・ま・り」を参考にしていただき、
さらにケガを予防していくためには、
選手個々のカラダを把握したうえで、
チームで統一した予防活動がとても大切であると思います。

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今回は、
ウォーミングアップで取り入れたい予防エクササイズとして、
投球動作に必要な体幹の回旋運動をご紹介いたします。


【STEP 1】

四つ這い姿勢で
手・膝・おしりの位置が変わらないようにカラダを回旋します。


【STEP 2】

膝をついている足の方に体重がかかるように手を床につきます。
伸ばした反対の足は膝・つま先を天井に向けるように開きます。


【STEP 3】

片側に体重移動しながら回旋していきます。
開いたカラダは肘が天井を向くようにしましょう。
伸ばした足は小指側の足裏が床から離れないようにしながら続けましょう。


最後に
まとめると、


痛みが出る前の対応(予防)が大切であること

・選手が自分自身の状態を伝えられる環境つくりが大事であること

・投球数をはじめコンディションを管理することでケガのリスクを減らすこと

・野球肘にはさまざまなタイプがあり、復帰にかかる時間もそれぞれ違うため、障害の理解が必要であること

がポイントとなります。


動画も併せて参考にしていただき、
選手のコンディションのチェックや現場の判断などに
活用していただけたらと思います。

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