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lose one's home ②

キャリーケースに、リュックサック。

神奈川県から電車を乗り継ぎ、
東京へ。

祖母が住んでいる家の最寄り駅で、
降車。

電話をした時に、
こちらの状況を
あまり掴めていない
様子だったけど、

行き場がなかったから、
無理やりにでも
向かうしか無かった。

腰のヘルニアが発症しながらの
この大荷物は、
流石に応えた。

ボロボロになりながらも、
どうにか家の玄関まで辿り着く。

チャイムを鳴らすと、
ゆっくりをドアを開けてくれた。

俺の姿を見て、
何を言うまでもなく、
じっくりその姿を見つめていた。

何も食べてないんでしょ?


朝から何も食べずにいた事を
その言葉で思い出す。

奥からアンパンを取り出し、
差し出してくれた。

涙が溢れた。

家ってこんなにも暖かいものだったんだなと
気付く。

荷物を玄関に置かせてもらい、
奥の部屋に通して貰う。

椅子に腰を掛け、
事の顛末を話す。

自分が何をしたのか。

何故この様な状況になってしまったのか。
もし自分に非があるのなら
謝罪したい。

もうこれ以上
俺を追い詰めないで欲しい。

気付いたら
こんな言葉を発していたと思う。 

貴方は何者かに
追われている。


少し認知症が入り始めてると
言えども、
ギクっとする様な事を
祖母は毎回言う。  

確かにこの状況は
異常だった。

今までも
人生に置けるピンチは幾度となく
あったが、
最終的には
誰かが手を差し伸べてくれて、
事なきを得る事がほとんどだった。

しかし、
今回ばかりは
そんな様子は全く無かった。

全ては自分が蒔いた種でしょ?


前にそんな事を言われた事を
思い出す。

その後は
せん妄のせいなのか?

祖母は、
ある事ない事話し始めて、
聞いてる余裕がなかったので、
横になりながら、
耳だけを傾ける。

気付いたら寝入ってしまった。

明け方、
蹴りを入れられ、
目を覚ます。

あんたのイビキがうるさ過ぎて、
こっちがゆっくり眠れなかったじゃないか!

普段、あまりこの様な乱暴なものの言い方を
する様な人ではないのに、

やたら攻撃的だった。

早く出ていきなさい。


何度もこちらの状況を説明したとしても
理解を示してはくれなかった。

今から考えれば、
一人暮らし用のマンションだし、
毎週ヘルパーさんが、
来るから、
泊まり続けるわけにも行かない事は
容易に納得出来る。

頭に来たので、
嫌味の一つや二つ
吐きつけて、
また大荷物を抱えて、
祖母宅を出る。

出る間際に、

これ持って行きなさい。



とクリーニングバッグを
渡される。

一先ず
コインランドリーが開くまで、
近くの公園で
一休みする事にした。










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