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金融ボドゲ

【注意】ご使用の際は出典を明記してください。

ゲームの概要

・「不確実性」に焦点を当てて金融市場における資金の流れを模擬体験するゲームです
・学習効果として
 ➀金融市場のしくみの理解
 ➁「不確実性」とリスク分散の理解
 ➂戦略立案や交渉を通じた思考力・判断力の育成
を期待しています
・所要時間(おおよそ):ルール説明(20分)+ゲーム(50分:1コマ)+まとめ(30分)

資料(教材)

このゲームの特徴

➀金融教育として

このゲームは、金融市場における資金の流れをそのままゲーム化したものです。金融は「不確実性(リスク)」に対処する営みですが、不確実性の源泉は常に事業投資の不確実性にあります。このゲームは、本質的に不確実なのは事業投資であること、金融投資における不確実性は事業投資の不確実性に由来する派生的なものであることを再現しています。

リスクに対処する基本的な方法は、リスクの分散です。金融投資の世界では分散投資という言葉で表現されます。証券会社等が主導する現在の金融教育は「有望な株を探し出す」ことによってリスクを回避するという幻想から抜け出せていないものが少なくありません。そのような戦略はプロが時間をかけて臨んだとしてもサイコロ以上の成果をあげることが稀であるというのが資産運用業界の常識であり、金融教育の根本を「サイコロをたくさん振ることによって安定して平均3.5の目を出す」という方向に転換する必要があります。

このゲームのポイントは、投資家が分散投資によってリスクを回避できるのと同様に、企業の側も投資家や他の企業とリスクをシェアすることが可能になっている点です。世界初の株式会社である東インド会社を思い起こせば明らかなように、株式会社というシステムは事業家がリスクを他人(投資家)とシェアすることで逓減させるためにあります。同時に、リスクを手放すことはそれなりに高くつくリスクプレミアムが生じる)ということも体感できます。

➁交渉教育として

このゲームは、各プレーヤーは常に他のプレーヤーと協力しながらでないとアクションを起こすことができません。原則として、企業は投資家と、投資家は企業と協力してアクションを起こします。単体では何もできない以上両者が協力することで双方に利益があるのですが(パレート改善/win-win)、企業と投資家はパイを奪い合うライバルでもあり、「両者の利益を考えつつ自分の利益をなるべく大きくする」という交渉の基本を体験できます。

また、このゲームのルールはネガティブリストとして構成されており、発想力と行動力次第で様々な「契約」を結ぶことができます。ルールが当初想定していない「契約」を持ちかける場合、相手にその「契約」の内容と目的を正しく伝える必要があり、高度のコミュニケーション能力が問われます。「契約」を持ちかけられた側も、騙されないように気を付けつつも有望な機会を逃さない姿勢が求められ、こちらも高度なコミュニケーション能力が求められます。

このゲームはいわゆるサンドボックス(砂場)として機能します。つまり、ルールで枠組みだけ与えつつ、その中でどんなことをやるか/できるかはプレーヤーの発想力に委ねられています。逆に言えば、プレーヤーが独創的なアクションを考案することでゲーム自体がより進化していくと捉えることもできます。

実施におけるポイント

➀「ゴールド」「株券」「債券」の準備

現実的な問題として、ゲームに登場する「ゴールド」「株券」「債券」は小道具として現物を用意しておくことが望ましいです。

➁時間配分

各期のアクションを決めるまでの時間を5分としても、計算・精算・ロスタイムを考慮すると1期あたり10分程度はかかると見込む必要があります。3~4期はやらないと感覚を掴めないので、ゲームに正味で50分は割く必要があります。

➂準備とまとめ

参加者側の事前準備として、ルールを読むだけでなく、作戦や第1期のアクションを具体的に考える時間を確保するのが望ましいです。
事後のまとめは、金融に関するトピックや交渉に関するトピック(ゲーム理論)などを広範に扱うことができます。株主の議決権を考慮していないことなど、ゲームの設定と現実の法制度の違いは押さえておくのが良いでしょう。


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