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画像生成AIをマンガに使ってみて感じたこと

画像生成AIがよく話題になっています。

ただ、多くの方々がAIで1枚絵を生成して公開されている一方で、僕が興味のある「マンガ制作」で活用した例は少ないように感じました。

そこで、以前に作ったマンガの一部を、画像生成AIを使って修正してみることにします。

このnoteの特徴としてはこんな感じです。

  • 画像生成AIをマンガ制作に使った

  • AIに自由に描かせるのではなく、既存イラストの構図を変えずに生成した

  • 半年間の手描きイラスト練習の経験がある人の感想である


今回やったこと

以前に作成したマンガの、「キャラクターが出ているコマ」を、改めてAIで生成し直しました。

当時は画力が全く無く3DCGの輪郭線をそのまま出力したのですが、雑な自作3Dモデルを使ったため、キャラの造形が明らかに不自然でした。

なので、そのキャラをAIに生成してもらい見栄えを綺麗にしてみようというのが今回の試みです。

作り直したマンガはこちら。合計11コマを再作成しました。

修正前と見比べるとこんな感じ。

生成した後に少しだけ手で整えてはいますが、再作成したコマは全てAIによる描画をベースにしています。


作り方

Stable Diffusionの「img2img」と呼ばれる、既存の画像をベースに、新しい画像を生成する技術を使いました。(ちなみによくプログラムでは "2" を "to" の意味で使います)

例えば、元画像として左のイラストがあったとしたら、それをインプットに右のようなイラストを生成できます。

インプットする絵は、もっと雑なラフでも全然OK

その際、画像と合わせてイラストの特徴をAIに渡してあげると精度が上がります。この例では、下記のような情報を渡しました。

black hair(黒髪)
pink T-shirt(ピンクのTシャツ)
one hand raised(片手を上げる)
grasslands(草原)
blue sky(青空)
sunshine(太陽光)
cloud(雲)

不自然な部分ができてしまった場合は、画像の一部だけを再生成できる「Inpaint」という機能でさらに修正します。

広い背景を含むイラストではキャラの描写が崩れやすいので、まずキャラ単体で生成させてから、その後に背景部分をInpaintで生成すると作りやすかったです。(いわゆるOutPaint)

背景は後から再生成

想像したものが一発で生成されることは少ないですが、これらの調整を繰り返すことで、そのうち自然なイラストが生まれます。

もし生成したことがない方は、こちらのnoteをぜひご覧になってください。無料で自由にイラストを生成できます。(2万字を超える大作ですが)無料部分だけで、かなり自由に生成可能です。

※文字読むの苦手…という方は、「ここまでの機能の公開Colabファイル」のリンクからポチポチするだけで作れます。

画像生成AIをマンガに使ってみて感じたこと

大きく3つ感じたことがありました。

①今後はAIベースの作品が激増する

もう、とにかく便利です。間違いなく、今後はAIをベースに作成される作品がバンバン生まれると確信するほど便利でした。元絵の構図はそのままで、綺麗なイラストが次々に生成されて感動です。

もちろん出来たての技術なので、現時点では課題もあります。キャラの統一感とかはよく言われます。

同じキャラのつもりでも、ちょっと雰囲気が違ったり

また、感情の話ですが、AIに抵抗があるという意見も目にします。自分も、半年ほどですがイラストを真剣に練習してきたので、最近のAIの活躍を見て「練習した意味あったのだろうか…?」という感情も正直湧きました。

でも、それらを差し引いても、とにかく便利です。AIは日々改良されており、課題は次々に解消されていますし、無料で使えるのでハードルも低い。今後イラストに関わるほとんどの人が使い始めるはず。

創作にチャレンジする人も増えるでしょうし、作業効率は上がるので、作られる作品数が必然的に増えます。すると確率論的に、面白い作品が世の中にたくさん出回ることになります。

そう考えると、未来がとても楽しみです。


②「AIに合わせて作品を変える」考え方が生まれる

今回、最も画像生成に手こずったのは、このコマの再生成でした。

巨大な骨付き肉の前でご飯を食べるシーン

この「ご飯」や「骨付き肉」がうまく生成できず、謎の巨大な丼ぶりや、タダでも食べたくない不気味な料理が量産されてしまいました。

おぞましい謎料理の数々

描きやすいもの/描きにくいものは、AIの種類や学習モデルによって変わります。たまたま自分の使ったモデルでは、上のシーンを作るのが苦手だったのかもしれません。

もちろん、「骨付き肉」をAIに学習させれば、すぐに描けるようになります。でも今回は面倒なので、そこまでせずに、別の料理でOKとしました。

もう、肉じゃなくていいや…

つまり、AIの得意分野に合わせて、描く対象を変更した。これは、他の人がAIを使っても普通に起こり得るだろうと感じました。「キャラの服装をシンプルにする」とか「言葉で表現しやすいシーンにする」とかですね。

言語翻訳AIとかでも、正しく変換してもらうために、翻訳してほしい文章をシンプルにすることはよくあります。つまりAIの特性に合わせて、AIへのインプットを変えています。

そのように、「どうすればAIが生成しやすいか」という、AIに合わせて作品(描く対象)をフィットさせていく考え方が、今後は生まれやすくなると思います。

逆に言えば、AIに描画が難しいものを見極めた上で自分の手で描ける人は、価値が高まるでしょう。


③AIを使えても、人の作業は残っている

画像生成AIに対する反発が生まれる原因として、「(他人の作品で学習した)AIを使って、苦労せずにイラストを描いている」ように見えることがあると思います。

確かに1枚絵であれば、割と簡単に、見栄えするものが作れます。でも、「誰にでも作れるもの」はすぐに価値が薄まります。また、誰かの絵柄を丸パクリしても、自分の価値にはなりません。

AIを使って画像生成していて、それを強く感じました。イラストがどんどん生まれるのを眺めながら、「こんなの、誰でもできるよなぁ…」と。画像生成AIをある程度使うと、誰でもその感情を抱くと思います。

なのでAIを使ったとしても、いずれ多くの人が、独自性を生み出そうとします。そして、他の人と違う自分の魅力を表現するには、大きな努力が必要になります。

イラストなら、テーマ、画風、構図、色味、光や影、書き込み度などもそうですし、マンガでは更に、ストーリー、セリフ、コマ割り、効果線など、個性を出せる要素はたくさんあります。

幸か不幸か、人の作業はまだまだ残っている。「AIに仕事を奪われる」というよりは、仕事のレイヤーが1つ上がるようなイメージかもしれません。

ただ1点注意が必要なのは、AIの出現によって、今後は確実にクオリティの基準は上がり、世の中に出回る作品が量産されることです。商売として成り立たせる場合は、「AIができること・できないこと」を理解して、毎日勉強しながら突き抜けられるほどの情熱が必要になると思います。

ちなみに、「AIが(進化しても)できないこと」「人間にしか作り出せない価値」など本質的な部分を整理した長文noteもあります。もし興味があれば読んでみてください。イラストに特化したものではなく、AI全体を対象にした概念的なお話です。



…そんなことを、画像生成AIをマンガに使ってみて感じました。

長々と書いてしまいましたが、ざっくり言うと、「AIのおかげで手軽に創作できるようになったから、みんなで使いこなしてどんどん創作しましょう!」という感じです。

興味のある方は、ぜひ。

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