詩4 たまには万引きでもしようぜ

その男は、万引きでもしてやろうと思った。

そいつはあんまりもう何事も、どんなことも気にならないぜ、という気になっていた。

汗をぐっしょり滴らせて、腹を空かせていた。ここ数日飯もろくに食わず、外出もしていなかった。

このままベットを飛び出てコンビニに直行して、今日一日を彩る品々を取って来ちゃおうよ!スッと!

これは新たな出発点なのだ。マイルストーン。

彼女が最後に自分に放った言葉をちゃんと思い出せなかった、ただ彼女の顔と口の動きを思い出せた。

よし!!いこう!コンビニに!

私たち合わないよね、だったな確か。

男一応、メガネをかけてマスクをつけた。
どんどん行こうぜ!

コンビニに到着し堂々とした足取りで入店を成功させると、次の瞬間にはどこにどの品があるのか確認することに成功した。

そして、コーヒー牛乳を素早く手に持つことを成功させると、それを袖に入れることを保留し、トイレに向かうことを成功させた!

激しい下痢をぶちかますことに成功させると、優雅に揺れながらもう一度店内を徘徊し始めた。

雑誌を手に取り、下痢の影響と思われる震えを取り除くことを成功させると、立ち読みを終わらせ、そのままサッと雑誌を棚に戻した。

そして、全ての商品の棚の横を通り、店内を一周した。

男は入店と同じ要領で、夏の電量販店から街へ流れる風のように、爽やかな足取りで退店することを成功させた。

彼の存在に気づいているものは誰もいなかった。他の客も、店員も、防犯カメラさえ彼を捉えられなかった。

その男は、コンビニの目の前に併設された駐車場を振り向かずに通りすぎた。

通りに出ると振り向かずに歩き続けた。

自分のアパートメントの裏口、エレベーター、フロアの廊下、玄関、自分の部屋のドア全てを、後ろを振り向かずに通りすぎた。

息が切れていた。ベットに倒れ込んだ。

男は右手を見るとギューーーっとガムを一つだけ握っていた。手は真っ赤になっていた。

男はコップに水を注ぎ、一つガムを取り出して噛んでみると味がしなかった。

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