ショートストーリー 豆腐サラダ

シャキシャキの水菜とレタスの上に、余分な水気を切った豆腐が並ぶ。
彩りのトマトとパプリカが、チラチラと緑の陰から顔を出している。
甘酸っぱいドレッシングの香りが、涼を呼ぶ。
あと追いのかつおぶしがクーラーの風で揺らめいて、見た目からも涼しい。

昼は中華料理屋で、間食はおにぎり屋のおにぎり。
昼の罪悪感が、会社からの帰宅途中に時限爆弾みたいにやってくる。

食べたものは仕方ないじゃないかと、言い聞かせてみても心のモヤはとれない。
昼間は完全に戦闘モードで、昼食はとにかく体力と気力の回復を優先してしまう。

会議前には、ぴりついて余計に疲れて食べ物を欲してしまう。
会社を出て最寄り駅まで歩いていると、だんだん心も落ち着いてくる。

ショーウインドウ中の可愛いハイヒールとか、化粧品の香りとか。
そういうものに囲まれていると、私の中の女の子の部分が出てくる。
会社では男勝りだと言われても、素敵に飾られた服にもカバンにもときめけると、まだ大丈夫だとホッとする。
同時に、昼の暴食とも呼べる食事に、脱力する。

安心感を求めて、デパ地下に駆け込んで美しく並んだ何種類ものサラダから食べたいものを選ぶ。
少し割高。
それでも綺麗を求める安心には変えることは出来ない。

なにより、他人が作ったものはサラダであっても美味しい。
家に帰ってサラダを皿に移し替えた時。
白色の蛍光灯に当たってキラキラと、野菜と豆腐が光って見えるのはその証拠だ。

みずみずしい野菜は歯触りよく喉を潤す。
そういえば今日も暑かった。
私は夜になって、ようやく昼間の暑さを思い出した。
トロリと野菜にかかったドレッシングが涼しげで、昼の太陽を思い浮かべながら食べるのには、ピッタリだった。

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