ショートストーリー 冷やし茶漬け

塩気のきいた冷たいお茶漬けをすする。
汗として、出ていった水分とミネラルが取り込めたことで安心する。
余計な熱が体から少しずつ引いていくのに、汗はこめかみから流れた。

生ぬるい風が通り抜けると、風鈴の音と茶碗の中で溶ける氷の音が涼を感じさせ、いっときの安心感を覚える。
それらの音は、風が吹くと控えめになるのに対して、目の前からは絶え間なく続く音が聞こえた。

しかし、本当はその音が一番の涼だった。
目の前で私の作ったたたききゅうりを無心で食べる妻。
パリッパリッと子気味いい音が一定のリズムで刻まれる。
きゅうりを噛じる音に、お茶漬けをすする音でセッションする。
涼しいリズムが台所に響く。

暑がっていた妻も、心なしか元気を取り戻しているように見えて、少しホッとする。
もうすぐ縁側が出来る。
夜は、そこで二人並んでビールでも飲めれば、夜も冷たいお茶漬けで構わない。
そんなことを、今だ暑さで赤らんだ妻の顔を見て考えていた。

きっとよく冷えたお茶漬けならば、妻も食べるに違いない。
縁側がもうすぐ出来る。
そう言って、引かない汗を拭いた。

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