小木の木さん

小木の木さん

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形の殻

暑気払いで身を焦がしていた高三の夏。辺りを見回していると受験勉強に追われている。戦争が目の先で行われている中、整然と学業の本質を学校の机に置いてきたのだ。七月冒頭、薄汚れたワイシャツを着た古典の白鳥先生に呼び出された。 「合格おめでとう。」 一通の便りには、額縁からもはみ出す勢いの「合格通知」と記されていた。僕が教科書を机の上に置いていた理由もなんとなく分かってくるだろう。夏休みに入りダルさと残暑見舞いの手紙が続く日に、祖母に頼まれた庭の手入れをしていた。少しばかりの嫌気と湿

    • 任せたテトラポット

      汗だくな少女は横須賀線付近の駄菓子屋で氷菓子をいやな顔して食していた。 五月雨は延長戦となり服と共に洗濯した涙は早々に氷菓子と共に溶けていた、煌びやかな誘拐犯は小心者しか狙えないらしい。気づけば二時間が経過しバカンスは蜃気楼の様に嘘であった。 恋文は旅路に必要不可欠な怠け者。少女Aは、用事はないが桜木町駅に来ていた。金属音はかなり昔に聞いたが私はどこかで聞かないようにしていたらしい、夢がふやけてしまわないように水を撒くわけだが先生に呼びだされた時の大人ぶりは甚だ疑問であっ

      • Rainrainrain

        悲しみの雨と涙は血液だと教えてくれた彼女。 梅雨だと切り出し口走ったあの子は窓辺から見える海に少しうんざりしていた。「海は大きいはずなのに小さく見えてしまうの。」 岸辺に落ちてた東の贈り物を僕は颯爽と零さない様にじっと抱え込んでいた。 自分と僕との距離を測ってみたけど、5cmにも満たないのは雨道で湾曲した内部が玉砕したせいだろうか。血の味で滲む口内、サイダーを飲んでヒリヒリとしたが痛覚以上に落ち着かない心がそこにはあった。低気圧を題目に話しかけた彼女、視覚と視覚の狭間に清掃さ

        • Tip of memory

          消毒液で点滴をした。雅楽がストリートに舞い ラジオで流れ嗄れた声でアナウンサーは興味底無しに一昨日の天気予報は晴れのち曇りだったと画面越しの老犬に向かって発したのだった。肋骨と能は半出生の境地に立たされた窓辺の枠だったらしいと博士は私に秘密事の様に教えてくれたが私は骸骨と生誕の関数値について知りたいだけだった。神隠しと少女は何処か似ているらしいが破片から成り立つ体(てい)と体(てい)から成り立つ部分的肉片は鹿に食され器官ないし、水辺で天国に祈るようにただ流水しているらしい。明

          青とパイナップル

          「汚してください。」母からの置き手紙は配列した蟻みたいにただ黒かった。 春を背中に感じ、パーマを掛けた昼過ぎ 父からの伝えで母が失踪した事を知った。 某都区内に佇む ヘンテコも何一つ無い平屋に住んでいる私は、母の顔を忘れてしまっていた。 母は、私に優しかったし、味方で居てくれた。一つだけ不思議だったのはずっと監視されており、私の事ならなんでも知っていたのだ。学校での出来事、部活、友達付き合い 話しようが無い事を母は、愛ひとつでは足りないと小汚い嘘をついては、私に何でも話させた

          青とパイナップル

          Late spring

          先輩が辞める夢を見た。新調した履きなれない靴に違和感を覚えつつ 春の岬に足を動かしていた。ビル風に怯えつつ 僕以外の人間は何処か呆れた様子を浮かべている。僕だけが取り残されている 孤独を感じていた。 電車は定刻通り発車するが幽霊に触手されたみたいで具合が悪い 目眩がする程の快晴を僕は祝福と呼んだ。福音が遠のく。ビルに反射する 残像 猫に餌をあげる老人 手を伸ばした矢先 陰と陽が交差し目がおかしくなった。反芻される常を僕は覚悟しなければならないのか。昨夜は暗かった。今朝は明る

          焔 紫煙 に逆恨み 地獄に糸を引き潮風 湿気る杯の宴なる 堅固な夢は三途の海洋に消え失せ潸然は犬子も燦然たる遊泳なり 前駆忘却懐は狭し

          鍵盤

          結果は三位 夏バテにやられた鬼ごっこ はしゃぐうろこ雲に犬が食いつく 相殺特別トノサマバッタ 辺りの夕日は子供の迎えを待つのみで 1歩引いた恋路を忘れた模様 明日もあるかとまあいっか キッチンから香る井戸端会議に豊満な死神 血に注ぎ凌ぐ ベッドルーム 変化球を突然に 早朝に起きるなんて タフじゃないわ だって真実を知ってしまうもの 今夜は少女じゃ居られないの 太平洋 ひとりぼっち計画 8月2日発売中 水菓子 狂いに狂ったスーパーマン 凍りついたピアノ

          解夏

          諸行無常の虚無は平和を迎えたか 今宵は曇天様もお怒りで 耕す白装束 忘るる 悲しみも 針を戻せば幸が向かうべきたるか 藁人形さえ 由々しき事柄で起承転結 は既に終電を乗り過ごした振る舞いか 仰け反りお通りお通り 歌舞伎町四天王なり 我ら時代の五臓六腑 腹の中で悦びを迎えんばかり 晩夏 騒がしさ鳴く泣く1人の遠吠え 影が走り去る視と覚が意味もなく 一幕下ろした 存在証明は じゃじゃ馬 万々歳 祝杯上げて 杯に照らする お月様 波打ち際で酔いと酔いに身を任せ