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お、おまえ、直七なのか?


直七(なおしち)という柑橘類がある。

香りも酸味も柚子のように鮮烈ではなく、単品だとどちらかというとそのまろやかさが柑橘類としては少し物足りないくらい。

ところがどっこい。白身魚の刺身にかけると、魚の旨味を引き出す、というよりは魚の旨味との相乗効果が、ちょっと想定外なくらいに素晴らしく、べらぼうに旨くなる。
特に鯛の刺身が好きな私にとっては、魔法のような絞り汁なのだ。


はじめて直七に触れたのは、高知のアンテナショップ。

ちょうど築地に通っていた頃、銀座周辺に各地のアンテナショップが次々とオープン。築地から歩いてもそれほどの距離でもなく、築地の買い出し帰りにちょくちょくこれらアンテナショップ巡りをするのも楽しみの一つだった。

たまたまアンテナショップ巡りでいつも行くわしたショップの隣に、なにやら新しいアンテナショップができたな、と覗きにいったら、それが高知のアンテナショップ、「まるごと高知」だった。2010年のこと。

早速「関東海援隊」に登録し、店内捜索。そこで「直七」の瓶詰をチラリと見たその時はピンとはこなかった。

2階にレストランがあり、ランチも食べられると知る。
築地の買い出しの時は大抵築地場内で一回、多ければそのあと場外でも一回、何かしらのご飯を食べるのが習慣だったのだけれど、(築地でご飯を食べるのが築地買い出しの特典でもあり最大の楽しみでもあった。blogのネタにもなるし)

その日もたぶん築地で一回は食べていたと思う。でも、魚系ではなかったんじゃないかな。「まるごと高知」のレストラン「おきゃく」でメニューを見て、刺身の定食を食べる気になったんだから。

刺身定食に「直七」がついてきた。レモンや柚子などでよくある瓶詰の、絞り汁が入ってる、あれ、だったのかな。それとも生だったのか。よく覚えていない。

ウェイトレスさんが、これは直七と言って高知の特産の柑橘類で、特にお刺身にかけると美味しいので、よかったらぜひ使ってみてください、と勧めてくれた。

食べることに好奇心がある方なので、当然試してみるつもり。ではあったけれど、まずは魚そのものの味を確かめたいので、一箸目はなにもつけず食べた。

旨い。

白身魚が好きなので、築地でも白身魚の購入比率が高くなる傾向だったが、その時「おきゃく」で食べた白身魚は、記憶に残る旨さだった。

いつもならそんなに美味しい刺身なら、塩だけで食べてしまいたい方なのだけど、ここは我慢で、直七を試してみよう。

そう決断した私を、いま、本当に褒めてやりたい。

直七を遠慮がちにちょろっとかけた白身魚の刺身は、
なんか、別次元の美味しさだった。

なんだこれは。
どうしよう、さっきなにもつけず食べた刺身は、もったいなかったなー。
なんで直七を最初からかけなかったかなー。

そんな反省会を脳内で繰り広げながらも、美味しくて仕方ない刺身がどんどん減ってしまうのが惜しくて、チビチビまるで酒のつまみのように魚を箸で裂いては直七にどっぷりつけて食べるという。
人様にとてもお見せできないけど、客は私一人だったので心置きなく最後までチビチビと頂いた。
最後に醤油皿にのこった汁をご飯でさらうようにぬぐいとって食べたことまで覚えている。
ああ恥ずかしい。でも、美味しかった。。。

会計済ませ、2階から1階に階段を駆け降り、一目散に「直七」の瓶を目指し、レジに直行。


これが私と直七との出会い。


吉祥寺の「高知屋」で直七と再会する。

それから高知の物産イベントなどがあると必ず「直七」がないかチェックをする。以前は「直七」という言葉すら目にする機会はなかったが、ここ数年はポン酢のような形態の「直七」をちょくちょく目にするようになった。「直七ドレッシング」とか?「直七ポン酢」とか。

でも、「まるごと高知」にあったようなストレートな「直七」は、手に入れることはできなかった。「まるごと高知」にも、いつもあるわけではなかった。そもそも2011年の震災以降、私は築地に行く機会がなくなり、「まるごと高知」にも行くことはほとんどなくなった。

震災以降。たまたま行きつけになった整体院の近くに「高知屋」という店を発見したのは、2014年頃か。

発見した日に、当然「直七」を探す。ドレッシングやポン酢はあるが、ストレート果汁はない。お店の方に「直七のストレートのは置いてないですか?」と聞くが、無いとのこと。ただ、シーズンになれば果物としての入荷はある、とのこと!

直七を手に入れられるのか!

心待ちにしたその日。
2019年11月30日。
「高知屋」店頭で直七を発見!

持ち帰った直七、直七のために購入した鯛。

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その後、直七を大切にしすぎて、最後の1個を使う前に熟させ柔らかくしてしまう。嗚呼…

諦めきれず、庭の柚子の根元に穴を掘って埋めてみた。
埋めた場所の目当てとして富山の鱒の寿司についてる竹棒に「直七」と書いて、立てておく。

もうすっかり諦め忘れ果てた今年の4月。

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お?おまえ、直七なのか?

さらに2日後。

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今発芽してきてるのは2本。
柑橘類は1つの種から複数芽が出るみたいなので、生きてるのは種1つ分かもしれない。
直七だったら、絶対育てたい。育ってほしい。

しかし、家庭菜園、いま流行りのキッチンガーデンとは名ばかりの、手厚い保護は望めないわが家の庭。

しかもまさか発芽するとは思わずとりあえず日陰で水分蒸発しにくそうという理由だけで埋めた場所。
すぐ横に、そこそこ育った柚子の老木。

直七を植え替えて枯れさせるリスクをとるか、
このまま育てて柚子との肥料争奪戦で両方枯らすか、
柚子がお歳なので引退して直七が後を継ぐか、
それにしても近接しすぎで、そもそも受粉時に柚子と直七が交雑してしまって訳のわからない実が成るか、、、


どちらにしても今後の成長を見守りたい。

どこに住んでも楽しむのは得意な方だけど、やっぱり神戸が好き。いつか神戸に帰る日を夢見て💐いただいたお気持ちは、神戸への想いを満たす何かに使わせていただきます。皆さんにもすてきな「好きな場所」ができますように💐