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シン・長田を彩るプレイヤー ~『三国志』作者の偉業を後世へ!ギャラリー館長の誓い~(後編)


今回は、KOBE鉄人三国志ギャラリー館長の岡本伸也さんを取材しました。
『三国志』や『鉄人28号』で有名な横山光輝よこやまみつてるゆかりの地・長田で、まちおこしに尽力されている岡本さん。

前編では、岡本さんがKOBE鉄人三国志ギャラリーを運営されるに至った経緯や、時代や国を超えて愛され続ける三国志の魅力について伺いました。
後編では、三国志がつないだ絆や岡本さんのこだわりについて深掘りします!


【三国志への愛がつなぐ人の輪】

―記者―
どういうときにやりがいを感じますか?

―岡本さん―
日々感じています。
わざわざ全国からお客さんが来てくれるので。
お客さんが書いてくれる来訪ノートも、やりがいになっています。

それから、大手企業さんがコラボしてくださるのもやりがいですね。
大阪や東京だったらもっとやりやすいんですが・・・。

展示したいと思っていたものが展示できたときも嬉しいですね。
パリピ孔明だって、1年以上交渉してようやく展示できたんです。

―記者―
1年以上も交渉されたんですか!すごい。
そういったやりがいがあるからこそ、幅広い方々に向けた展示ができているんですね。

―岡本さん―
そうですね。
常に新しい何かをやろうとしてて。
三国志100問テストも、絶対毎年更新してます。

―記者―
毎年?

―岡本さん―
毎年更新です。どんどん増えていて、今8種類あります。
またこの春にもう1種類作ろうかなと考えています。
秋にやる三国志祭というイベントに向けて、新しく作ったりもしてます。

三国志祭は、一時は2~3万人来たこともあるんですよ。鉄人広場もぎゅうぎゅうになって。
今はコロナもあったので、5千人ぐらいかな。
それでも認知度はすごく高くて、前回(2023年)で17年目を迎えました。
これからも続けていければなと思っています。

―記者―
ゆるきゃらが出てきたりするんですよね。

―岡本さん―
そうそう。
アニマル三国志のゆるきゃらも、どうしたら子どもたちに三国志を楽しんでもらえるかなって考えていく中で、ゆるきゃらブームだった時期に作りました。
今は三国志祭ぐらいしか出てこないんですけど、ここでやっていることをPRするために、以前は彦根のゆるキャラまつりにも何度か行きました。
もっと外に出ていってPRしようっていうのはずっと思ってたんです。

アニマル三国志・孔明わんのぬいぐるみも、ギャラリーを見守っています

―岡本さん―
三国志祭はすごくたくさんの人が来るんですけど、限られた予算の中でできるよう内容も工夫しています。
スタッフはみんなボランティアです。
大学の講師先生にさえ、「ボランティアで」って言って(笑)
どうしてもプロの手を借りないといけない音響やステージは費用をかけますけど、ソフト的な部分は知り合いやボランティア、三国志が好きな人たちにやってもらっています。
それでもみんな喜んで手伝ってくれるのは、自慢でもあります。

―記者―
熱い想いを持った方々が集まるんですね!素敵です。
三国志祭はどれくらい前から準備されてるんですか?

―岡本さん―
3か月です。
人手が足りないので、ホームページを作るのも企画も交渉も、全部やらないといけなくて大変です。毎日翌日に帰宅しています。

―記者―
大変!
やめたいと思ったこともありますか?

―岡本さん―
いやもう、これ、好きじゃなかったらできなかっただろうなって。
人の倍は働いてる自負はあるので(笑)
三国志好きじゃなかったら絶対やってない。
まちおこしのためと、三国志が好きなみんなが喜んでくれるからやれています。

【誰もが楽しめる場所に】

―記者―
このギャラリーも長く運営されていると思うのですが、それでも三国志の勉強を続けられているんですか?

―岡本さん―
勉強の日々です。
大学の先生に講演していただくとか、三国志の研究会みたいなこともやってますね。
自分が発表しないといけない時もあるので、そういう勉強ももう1回やったりとかしますね。
長いですからね、作品として。すぐ忘れてしまうんです。
しかも、みんなが知ってるのは大体物語の三国志なんですが、歴史の三国志というのもあって、またちょっと違うんですよ。
でも、プロとしてはそれらもある程度知っておかないと、と思っています。
大学の先生並みにとまではいかないですけど、日々勉強ですよね。

―記者―
三国志は本当に奥が深いんですね。
お客さんとお話をされることも多いんですか?

―岡本さん―
遠くから来られて三国志語りたいって人も多いので、よく話します。
イベントとして、語る会もやってます。
でも、喋る人だけがひたすら喋るみたいなのが嫌で。
喋る人も無口な人も一言言ったらもう交代ねっていうシステムにしてから、すごく面白いんです。
「どの作品が好きですか」とかどんどん質問して、みんなで答えていくんですけど、そうすると知識レベルに関係なく話せるので楽しいですね。

―記者―
本当にどなたが来られても楽しめるよう工夫されているんですね!

―岡本さん―
そうですね。
子どもたちが来ても楽しめるように、ぬり絵やオリジナルゲームも置いてあります。
アニマル三国志のアニメを友人に作ってもらって、YouTubeで流したりもしてました。
今YouTubeでは、キングダムの映画に出てるような俳優さんや三国志が好きな人たちと番組を作っています。

―記者―
そんなつながりもあるんですね。
俳優さんが写った写真も飾ってありますね!

―岡本さん―
そうそう、俳優さんや芸能人の方が番組とかで結構来てくれるのはありがたいですね。
さらに、有名な声優さんが個人的に来てくれたこともありました。

あとは、外国の方が来られたときのために、外国語の音声ガイドを用意しています。
二次元バーコードを読み込んだら音声が流れるんですよ。
企業に頼むとすごくお金がかかると思いますが、友達にそういう仕事をしている人がいて、頼んで無料で作ってもらいました。

―記者―
これまで築き上げてきたご縁があって、できることが増えてきているんですね。

―岡本さん―
それもありますね。
このギャラリーの向かいにミュージアム(KOBE三国志ガーデン)があったときに、1年かけて巨大なジオラマを作ったんですよ。
全長が13 メートルある、三国志の150シーンを再現したジオラマです。

―記者―
13メートル!?
どうやって作ったんですか?

―岡本さん―
長田のまち中にある三国志の石像を作った馬渕さんという方が、かなりボランティアに近い感じで協力してくれて。
馬淵さんは小さいものから石像まで作れる方なので、監修してもらいました。
あとは、全国のフィギュアとかを作るのが得意な人たちにお願いをして、100人ぐらいで作って持ち寄ったんです。
作った人に送ってもらって、それを馬淵さんたちが統一して色を塗るみたいな。
だから、作った人によってクオリティが違うんですけど(笑)
でも普通に作ったらすごい金額だと思います。

―記者―
すごい!面白い取り組みですね!

―岡本さん―
ジオラマはミュージアムのメインとして展示してたんですけど、ミュージアムが閉館してからは神戸常盤大学に移転して展示してもらっています。
このギャラリーに持ってこようかと思ったんですが、13メートルもあるので入りきらなくて諦めました。
多分当時日本一の大きさだと思うし、しかも三国志って大軍戦から一対一の名シーンまであって。
それを再現するために、奥にいったら大軍戦のために小さく作り、手前は一対一で話してるので大きく作る、こういうサイズ違いのジオラマにしました。
作るときはその道のプロの人達に難しいと言われたんですけど、完成したらいい感じになりました。

―記者―
1つのジオラマの中で遠近感が生まれているんですね!
三国志を通して出会った方々と一緒に、いろんな作品を作られてるんですね。

神戸常盤大学に展示されているジオラマ

【ギャラリーにかける想い】

―記者―
このギャラリーを運営するにあたって、岡本さんがこだわっていることや譲れないことはありますか?

―岡本さん―
クオリティを確保することです。
NPOで始めた当初は、事務員、事務局長、デザイナーと、後から私が入ってきて4人でかなり長くやってきました。
そのような少人数体制にもかかわらず、全国や海外からもわざわざ来てくれたり、「もっと大人数でやってるんじゃないの?」って言われたりするのは、人手が足りない中でもクオリティを高くしてきたからだと思ってます。

―記者―
限られた予算の中で作っているとは思えないほど、素敵な展示ばかりですよね。
では、岡本さんにとって三国志とは?

―岡本さん―
何でしょう。
生活そのもの、でしょうか。
教訓を含め、人生を教えていただきました。

―記者―
今後の目標や展望はありますか?

―岡本さん―
継続して、横山光輝先生の偉業をもっと称えていきたいなっていうのは思ってますね。
地元の有名人ですからね。
鉄人28号のアニメを当時観ていた人は、もう多くないじゃないですか。白黒の時代の作品ですし。
でも、みんな何となくは知ってる。
横山先生は、巨大ロボットアニメのパイオニアですからね。
歴史漫画を最初に描いた人でもあるし、魔女っ子作品の元祖だったりもします。
日本の文化という意味でも、すごく大事な人物だと思います。

漫画では、西宮は手塚治虫先生、境港は水木しげる先生、そして神戸は横山光輝先生です。
全国からきっとそう思われているはずです!
我々の活動は17年目を迎え、そろそろ終焉を迎えつつあります。
本当に終わらせていいのでしょうか?
地元神戸の方にもっと応援してもらえるとうれしいです。

趙雲ちょううんの銅像と岡本さん

三国志や三国志が好きな方々のことを宝物のように語る岡本さんの姿が印象的なインタビューとなりました。
三国志という江戸時代から人々を魅了し続ける作品の奥深さや、岡本さんの三国志にかける熱い想いに触れ、感銘を受けるばかりです。

取材後には、武器の重さ体験や諸葛孔明しょかつこうめい占いの体験もさせていただきました!
当時の武器は、記者の力では全く持ち上げることができず、この重さの武器を振り回して戦っていたなんて!と驚きでいっぱいでした。

KOBE鉄人三国志ギャラリーの楽しみ方は無限大。ぜひあなたなりの楽しみ方を探しに行ってみてください!
(編集:すず、かかけつ)