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〈そばめし〉第8回 生粋の長田っ子は「そばめし、アップル、銭湯、そして貝汁」

「銭湯いって、お好み焼き屋いって、アップルとラムネ。僕らの世代の子ども時代は、みんなそんなんですよ、このへんに住んでる人は、きっと」。一番のごちそうを聞くと、弾む声で少年時代の思い出を語ってくれた桑原弘至さん。今回伺ったJR鷹取駅の南、海運町にある「桑原鶏卵」は、卸売りを担当する弘至さんと、小売を担当する妻の理恵さんのお二人で経営されています。4代目の弘至さんが小学生の頃、丸五市場から今の場所に移転してきました。店頭に並ぶのは、桑原鶏卵特製のたまごやきや卵入りコロッケ。最近は卵の価格が高騰し、在庫の確保にも一苦労なのだそうです。

「昔は今よりずっとお好み焼き屋があったなあ」「白いご飯をもっていくとお店の人が焼いてくれて、そこにそばを混ぜてくれるんです」。そばめしの原点であるご飯の持ち込み文化に慣れ親しんで育った弘至さん。その他にも、昭和30年代の駄菓子屋さんでは、こんな食文化が……。「”貝汁”っていう、でっかい貝殻にうどんのお出汁みたいなんを入れて、ちくわを刻んだやつとかを入れて出してくれてたんですよ。今で言うツボ焼きみたいなものでしょうか」。こんな話を聞いていると、昭和の下町のにぎわいが目に浮かぶようです。

取材後、桑原鶏卵特製の卵入りコロッケをいただいちゃいました。中は鮮やかなオレンジ色! さっくりほくほく、心も体も温まる美味しさでした。