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バードウォッチングをはじめよう※まずは川に行こう

 いちばんのお勧めは『川』。できれば田園地域を流れる川がいい。川のまわりに田畑や丘陵地があればいうことなし。具体的には西区押部谷町から平野町、玉津町へかけての明石川、その支流である櫨谷川、伊川(明石川水系)。北区山田町を流れる志染川、淡河町の淡河川(加古川水系)、道場町から三田市にかけての武庫川、その支流の有野川、長尾川、八多川(武庫川水系)などが条件にぴったり合う。ちょっと遠いよねという場合は、六甲山の南を流れる街の川でもいい。
 季節としては、10月~3月頃が鳥の種類や数も多く、初心者でも楽しめる。朝が鳥の活動が活発な時間帯だが、とりあえずはあまり気にせず出かけよう。
 流れがごく浅くなっているところや、堰堤の上に浅く水が流れているところがポイント。そこが見渡せる場所に腰を降ろし観察開始。川からの距離は、遠いと観察しづらくなり、近すぎると鳥たちの警戒が強くなる。堤防の一番高いところ(大抵、そこには川に沿って道がある。)が見晴らしもよく、よいポジションだ。
 流れの浅いところや堰堤の上などに注目すれば。いろんな鳥が歩いているのに気付くだろう。もっともよく見られるのはセキレイ類。冬にはセグロセキレイ、ハクセキレイ、キセキレイの3種が普通に見られる。尾羽を盛んに上下に振り、波状に飛ぶのが特徴。声も3種で異なるのでよく聴いてみよう。慣れると鳴き声だけで識別することができる。
 シギ・チドリ類がいることもある。クサシギ、イソシギ(冬)、イカルチドリ(周年)、コチドリ(夏)はよく見られる。春秋の渡りの季節には珍しい種類がいることもあるので注意しておこう。もっともそういった種がいても、慣れないうちは識別に苦労するけど。
 白くて大きく、首が長い鳥はサギの仲間。一般に白いサギはシラサギと呼ばれるが、これは種名ではなく白いサギの総称である。市内の川でよく見るシラサギは、ダイサギ、コサギの2種。夏鳥のアマサギ、チュウサギは川にいることもあるが、畑などやや乾いた環境でよく見られる。一番大きなサギはアオサギで、羽色はグレーっぽく、ツルと間違われるくらい大きな鳥だ。これらサギの仲間は警戒心が強く、最初に川へ近づいたときに大抵の場合、飛び立ってしまう。しかし、川沿いに飛んでまた降りることが多く、距離は遠くても見るのは比較的簡単。望遠鏡があれば少々離れていても細部まで観察できるし、サギ類は体が大きいので双眼鏡でも結構よく見える。数は少ないが、ササゴイに出会うこともある。ゴイサギは珍しくないが、主に夜活動するため、夕方に見る機会の多い鳥だ。
 まわりの農耕地や近くの山にいる鳥たちが水を飲んだり、水浴びにくることもあるため、こんなところに山の鳥がいるはずがないと思わずしっかり見ること。カワラヒワやスズメ、ムクドリなどは水浴びの常連で、ときにはチョウゲンボウなどの猛禽類がくることもある。
 川の淵や堰堤付近の水深があるところにはカワセミがやってくる。青く輝く美しい鳥で、写真で見たことがある人は多いと思うが、田園地域の川にはごく普通に生息している。声に特徴があり、水面すれすれを直線的に飛ぶので、慣れると声を聴いたり、一目見ただけでカワセミとわかるようになる。
 冬にはカモが見られる。田園地域の中流域にはコガモが多く、カルガモやマガモなどもときおり見られる。バンやオオバン、カイツブリがいることもある。大きな黒い鳥、カワウに出会うことも多い。

伊川用に制作したクリアファイル

 空にも注意を向けよう。多くの鳥が川に沿っていったり来たりしているのに気付くだろう。飛んでいる鳥の種類を見分けるのは慣れないとなかなか難しい。双眼鏡で追いかけて特徴がはっきり見えればしめたもの。飛んでいるときはよくわからなくても離れたところに降りてとまるかもしれない。慣れてきたら、上空を飛ぶタカ類やツバメ類をじっくり見てみよう。飛んでいるタカ類の見分けは難しいが、トビとトビ以外のタカを見分けられるようになるのが第一歩。特に冬にはよくトビ以外のタカが現れるので、図鑑で特徴をつかんでおこう。具体的には、チョウゲンボウ、ノスリ、ミサゴ、ハイタカ、オオタカ、コチョウゲンボウなどが、川沿いやそのまわりの田園地域で見られる種である。春秋にはイワツバメやショウドウツバメが見られることがあるので、何だツバメかと見逃さないようにしよう。
 さて、座っているのに飽きたら、川に沿って歩いてみよう。まわりを見渡すことができ川から適度に離れている堤防の上を歩くのがよい。道の上や草むらから驚いて小鳥類が飛び出すかもしれない。運よく見えるところにとまれば、種を見分けるチャンス。飛んでいるときにあわてて双眼鏡で見ようとせず、肉眼で降りたところを確認してそこを見るようにしよう。
 川と反対側の田んぼや畑にも多くの鳥たちがいる。イネや作物が茂っているところには鳥は少ないが、休耕田、耕されたままおいてある畑、水が入れられたばかりの田などは絶好のポイントである。ヒバリ、キジバト、ケリ、イカルチドリ、セグロセキレイ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス(周年)、チュウサギ、アマサギ、コチドリ(夏)、タゲリ、タヒバリ、ツグミ、キセキレイ、ハクセキレイ、タシギ(冬)などが見られる。明石川水系では、春秋に渡り途中のシギ・チドリ類をよく見るが、内陸の他の水系では少ない。小鳥類がいても、離れていると肉眼ではわからないこともあるので、鳥がいそうな田畑は双眼鏡で一通り見るようにしよう。場所によっては牛糞が肥料として入れられていることがあり鳥がよく集まる。セキレイ類、タヒバリ類、ムクドリ、ケリ、タゲリ、ツグミなどは常連だ。水路にはタマシギがいることがある。かなり細い溝のようなところにも入っていることがあので、注意してのぞいてみよう。
 川沿いで鳥を見るのに慣れたら、田園地域を広くまわるとおもしろい。冬になると、ため池にはいろいろなカモがやってくる。池の岸にある小規模なアシ原も、鳥たちにとっては重要なすみかになっている。川沿い、まわりの田畑、池をひとつのコースにして鳥を見てまわれば、1日たっぷり楽しめることと思う。
 最後にフィールドへのアプローチの方法だが、バスを使う場合は便数に注意すること。場所によっては市内とはいえ、1時間に1本もない場合がある。
 車を使う人も多いと思う。車の中にいると、車がちょうどブラインド(鳥に警戒されないように身を隠すための簡易テント)代わりとなり、近くで鳥を見られるようになる。といえばよいことばかりのようだが、実は車に乗ったままでは見えないもの、感じられないものがたくさんある。野外で鳥を見ることの素晴らしさは、車内からの観察だけでは感じることはできない。車から降りて、フィールドを実際に歩くことを大切にしてもらいたい。また、田園地域では仕事として農作業をされている。それに対し私たちは多くの場合、娯楽で鳥を見るわけだから、私たちが気を使い迷惑にならないようにすべきであろう。車の停め方、通り方、当たり前のマナーをわきまえてフィールドを大切にして欲しい。地元の方とあいさつを交わし、話をすれば思わぬ情報を聞けることもある。


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