トラウマと音楽

 先週の早朝、私は三陸道を走っていた、ある人に会うために。宮城県仙台市から岩手県宮古市までをつなげるこの自動車道は気仙沼の辺りで途切れ途切れになっていて、小泉海岸で一度国道に下りることになる。

 国道から海が見えた瞬間、カーステレオからミスチルの「かぞえうた」が流れてきた。繋いだiPhoneの設定はランダムなのに「もしかして意思がある?」と思うようなタイミングで曲をかける時がある。今もそんな感じだった。

 海と「かぞえうた」、一気に思い出す9年近く前のこと。音楽と思い出は直結しているのかもしれない。

 震災当時、どうしても聞けなくなった曲が三曲ある。ミスチルの「かぞえうた」、福山雅治の「家族になろうよ」、桑田佳祐の「明日へのマーチ」だ。どれも大好きなアーティストだし曲も素晴らしい、でも聞くと震災やその後の悲惨な経験が一気に吹き出して涙が止まらなくなるのだ。仕事にも運転にも差し障りがある。

 会社帰りの車の中でうっかり「かぞえうた」を聞いてしまい、ボロボロ泣きながら車を運転する怪しい人になってしまったのはまだ去年の暮れの話だ。

 しまった!と思ったが、どうやら今日は大丈夫そうだ。私のトラウマも少しは改善されてのかな?だって泣いてなんかいられない、今日はきっと楽しいことがあるはず。まだ私の冒険は始まったばかりなのだ。とりあえずのゴールは宮古。そして私はまだ宮城県すら出てはいないのだから。






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