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クラウド誕生: セールスフォース・ドットコム物語のまとめ

構成

1 ) 書籍概要
2 ) 書籍の結論(ひとことでいうと)
3 ) 具体の内容
4 ) 読むまえとあとの個人的な心情の変化(B→A)
5 ) 明日からの業務に活かせること

■ 書籍概要

著:マーク・ベニオフ
1984年アップルのマッキントッシュ部門のプログラマーを経て、’86〜99年オラクルに勤務。’99年シリコンバレーにマーケティング支援のセールスフォース・ドットコムを設立。企業向けのクラウドコンピューティング専業企業として世界最大手に育て上げた。プレゼンの名人。

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かわいい顔でくまさんみたい

本書はセールスフォース・ドットコム社がどのように十数年で世界を代表する企業に成長したかを111のアドバイスにまとめてある。「起業、マーケティング、イベント、セールス、テクノロジー、社会貢献活動、グローバル、財務、リーダーシップ」の9つの戦略に分け、111の具体的なアドバイスで構成されている。(一時期は中古で1万円近くの値段がついていた幻の本で、かくいう、私も入手に苦労しました...)

すべての経営者のバイブルになりうるであろう盛りだくさんの内容になっており、時期を改めて何度も読み直したいと思う本でした。

■ 書籍の結論(ひとことでいうと)

とにかく楽観的で人を動かす天才であるベニオフ氏のDNAがつまったエキサイティングな内容で、特に起業〜テクノロジーにまでいたるパートはジェットコースターのように読み入ることができました。現在版 の「論語と算盤 (渋沢栄一著)」のような革新的されど普遍的な内容が多かったです。

【独断と偏見で選ぶ 4選】印象的なベニオフ氏のDNAメッセージ 

A メッセージとポジションを尖らせ統一せよ
B 善を成せ
C システムを開け
D 種をうえて大きく育てろ

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15歳で起業した強者

■ 具体の内容

内容が盛りだくさんだったので、独断と偏見で選ぶ4選のメッセージ乗っ取って彼の言葉をぐっと濃縮していく。

A メッセージとポジションを尖らせ統一せよ
B 善を成せ
C システムを開け
D 種をうえて大きく育てろ


※☝戦略ベースのWHATではなくWHYから紐解いていく※

▶A メッセージとポジションを尖らせ統一せよ

要は「ジャイアントキルイングでド派手にいこう」がセールスフォースが当初とったブランディング戦略だった。設立当時はまだIT業界では、クラウドサービスをB to Bにおいて展開される前であり、SaaSという顧客にとって低単価でバージョンアップの必要性もないシステム導入というスタイルそのものが革新的だった。

「自分たちが何者であるのか?何のため仕事をしていくのか?」

この問いに組織が拡大しても耐えられるように徹底してブランディングを進めていった(インナーブランディングも含めて)。オンプレミス型をとる旧来の大手企業をデモ活動を模倣するなどして切り崩していき、絶対正義を主張しつづけてクラウド型サービスで明確なポジションを確立していった。

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対外にむけて過激なマーケティングで有名なセールスフォース(気になる方はこちらから)だったが、社内でのメッセージ統一も常に行い、「ソフトウェアの終焉」を意味する「No Software」のロゴを社員全員につけるよう命じるほどだった。

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若い世代からすると、ださいよね(笑)

社内において何者であるのか、何を目指しているのかを統一すべく「V2MOM」という目標設定を全社で半年ごとにやっている。

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こういったブレないメッセージと、革新的なポジショニングを築くことで大きな注目を集めていった。

※ DNAメモ:企業はメッセージの発信基地、メッセージへの共感の総量が利益になる

▶B 善を成せ

そんなクラウド型サービスのパイオニアであるセールスフォースだが、そのミッションは常に「顧客志向」と「社会貢献」を捉え続けている。SaaSのサブスクリプションを行う時点でカスタマーサクセスが命題となるのだが、ベニオフ氏は利益至上主義だった過去からインドでの愛の経験を経て、お金稼ぎだけではない、自分たちの仕事の意味や意義が重要であると悟りを開いた。そんな彼だからこそ、「顧客のためか?」「社会に貢献できているか?」の問いかけを常にしているようだ。

実際にセールスフォースのサービスの進化には、顧客の声がふんだんに反映されている(例:IdeaExchage)。加えて1-1-1モデルの経営をとっており、「株式の1%を寄付、就業時間の1%をボランティア、製品の1%を無償提供」していて自社財団も運営しているなど社会貢献にも意欲的である。

ここでのポイントは、「なぜ?」そこまで善をなすことを大切にしているのか?

それは「意味 / 意義」を大切にした経営をしているからだと思う。
顧客との関係性を大切にすることで自社サービスへの満足度向上や継続率の向上につながるのはもちろんではあるが、それ以上に自組織のメンバーひとりひとりが「自分は何者であり、なんのために働いているのか」を実感できる感情報酬の提供のためでもあると感じた。

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※DNAメモ:返報の法則、人は限定合理的な感情人

▶C システムを開け

本書を読んで、もっとも衝撃をうけたのが、ベニオフ氏の「人を巻き込み動かす力」である。自社の社員を動かすのはもちろんであるが、この人は、他社の経営者(CEO)を指導者と崇めて多くの知識や人脈を活用したり、顧客ユーザーを最強のセールスマンと定義して、顧客に自社サービスのメリットや成功事例を宣伝してもらったり、報道記者を自社広報として活用すべく個人的な連絡を常にやりとりしていったりと、関わるステークホルダー全員を自分の味方につける天才だった。

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どんな魔物もトリコにする

特に面白いのは顧客をセールスの要にすることである。A / Bに記載した一貫したポジショニングと利他的なメッセージがあるからこそ、そこに共感した顧客が仲間となり勝手にクチコミを広げていってくれるのだった。これを意図して設計したのが下記のようなシティツアーなどのイベントである。

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特にイベントによっては、製品の発表やデモなどは全部なくして、顧客同士の会話だけをするコミュニティ形成に全振りをするなどしている。

普通だったら悪い評判が広まるのを恐れるため、こんなアプローチはできないがクラウド型だからこそ、「悪いところは改善すればいい、むしろ顧客の声を聞くチャンス」といわんばかりに、こういったイベントを開き、すべての情報をオープンにした。

このようにシステムと情報をすべてオープンにして、味方を増やしつづけることで、カスタマーサクセス(既存顧客満足度)とセールス(新規顧客受注)の両方の果実を得ていっている。(全部がメッセージを伝えるブランディングになっていく)

※ DNAメモ:システム論、協働システム

▶D 種を蒔いて育てろ

サブスクリプションというモデル自体がその性質ではあるのだが、ベニオフ氏自身も、何事においても種を蒔いて大きく育てることを重視していた。それはプロダクト開発はもちろん、グローバル展開においても一等地に最初からオフィスを構えるのではなく、まずは郊外にオフィスを構え(もしくはホテル暮らしをして)、信頼と成功を小さくもって、それを広げていくスタイルを大切にしていた。またサービスの利用も「無料トライアル」から顧客に提供することで信頼形成とプロダクト追加開発に活かしていった。大手企業へのアプローチもグローバル展開の際にも、センターピンとなる企業を選出し自社サービスの提供価値を絞ることで深い良質な体験を促し、そこから拡大させていっている。

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ゴッホの絵のよさはまだわからん

※ DNAメモ:信頼残高、ブランディング


■ 読むまえとあとの個人的な心情の変化(B→A)

「人の過去の栄光に興味ない → 学びしかない」

DNA bookとも重なるメッセージが多くあり、LMGが新しいビジネス形態をとっていく中で目指すべき成功事例が山ほどあった。マーケティング戦略やそのプロダクトの先行性などで革新性はあるものの、大切にしている哲学やその経営方針はLMGとも似ている部分が多くあり、サブスクリプションモデルを成功させるうえで真似できる要素は多い。

「CSって本当に重要? → 顧客を味方にできれば最強」

目先の売り上げはもちろん大事であるものの、目的を達成(カスタマーサクセス)しファンとなってくれた顧客は最強のセールスマンになるという最高の事例を学べた。単純なチャーンを無くすためという小さな目的ではなく、メッセージの発信基地としてその共感の総量と発信者を増やしていくためという大きな意義意味を感じることができた。

■ 明日からの業務に活かせること

1.LMGのメッセージとポジショニングを再確認する。

2. 顧客との関係性を知りにいく。

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