見出し画像

一生モノの、言葉の出会い。

久々に本棚を整理してみて、その本と出会ったときのことを思い返すときがある。
その中でも、一際鮮烈に、印象に残っている本との出会いがある・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その作家に出会ったのは、大学2年生の秋の日のことだった。
その日も昼休み、いつものように大学生協の図書コーナーを眺めていた。
医学部が独立したキャンパスにある図書コーナーは、ほぼ医学書で占められている。圧倒的にニーズが高いからだ。
それらに大部分を押しやられたスペースの片隅に、医学書以外の図書コーナーがある。
私はこの医学書以外のコーナーが一層好きだった。
よく目を凝らすと、「おっ」と思う本に出会った数は計り知れない。
その日私の目が釘付けになったのは、綺麗な草花の実をモチーフにした、優しい赤色の本だった。

タイトルを見てすぐ読むことにした。それは「言葉の贈り物」。
ページを捲ってすぐに飛び込んできた、「言葉は、文字どおりの意味で心の糧だからだ」という一節。この時点で既に、この本を買って本当に良かったと思えた。そこから始まるのは、一編一編、その人生をひたむきに歩んだ偉人たちの言葉を紐解きながら、日常の中にささやかな光を見出すような読書体験だった。

こうして、私はこの本の作者・若松英輔さんの本をよく読むようになる。
「悲しみの秘儀」、「生きる哲学」、そして「言葉の羅針盤」。
この4冊を大事に、大事に、読んだ。
「そうか、私はこんな本たちとの出会いを待っていたんだ。」

読書というものは、自分の中に眠っている、自分が生きるのに必要な拠り所となる言葉を、客観的な他者としての本を通して見つめ直す行為なのかもしれない。そう思った。

言葉を大事に大事に、自分の中で深めるということ、
それがやがて、生きる意味を明らかにするということ、
でもその言葉は、既に自分の心の中にあったということ・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして私は、この読書体験を機に、「夜と霧」と「生きがいについて」を読むことになる。
そしてそれらは、私の人生の書ベストに、今も燦然と輝き続けている。
その中の言葉が、今の私を形作っている・・・。
これぞ、「一生モノ」の出会いだったのである。

#わたしの本棚

この記事が参加している募集

わたしの本棚

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?