見出し画像

研修医に伝えたいこと〜救急外来を生き抜く〜②「頭痛・めまいのレッドフラッグサイン」

昨日救急外来から外へ出て、ふと上を見上げると、美しい満月が輝いていました。10月の満月・ハンターズムーンです。
どんなに忙しくても、こういう自然の美に少しでも触れられると、ホッと心が軽くなるような気がしています。

さて、救急外来で研修医を指導する中で、自分も学びまとめたことのアウトプット第2弾です。

第1弾「胸痛・腹痛のレッドフラッグサイン」については、以下をご覧ください。

今回のテーマは、「頭痛・めまいのレッドフラッグサイン」です。

<注意>
あくまで、「救急外来を生き抜くための必要最低限」に絞ってのコンテンツであり、救急外来でもすぐに使えるように、パッと一目でわかることを大事に、非常にシンプルな構成にしてあります。
そのため、あえて割愛したところもございますことをご了承ください。
もちろん、先輩方からのご助言はいつでも大歓迎です。
お気づきの点がありましたら、ぜひコメントでご教示ください。


頭痛

まずはこの流れ!

症例:主訴が頭痛の患者
脳血管障害からまずは否定しよう!

①バイタルサインチェック
※高血圧+徐脈だと、頭蓋内病変の可能性が高くなります。
(頭蓋内圧亢進によるCushing現象)
 ↓
②レッドフラッグサインを意識して問診・神経学的異常がないか診察
 ↓
③画像検査や髄液検査を考慮
特に、くも膜下出血や脳出血を疑ったら速やかに頭部CT撮像へ!
※発熱、意識障害、髄膜刺激兆候を伴う頭痛は、細菌性髄膜炎を疑って
以下の順に行うこと!
 1, 血液培養2セット
 2, 抗菌薬投与
 3, 腰椎穿刺(頭蓋内圧亢進が疑われるなら、先に頭部CT撮像してから)

🚩レッドフラッグサイン→二次性頭痛かどうか(画像検査や髄液検査が必要かどうか)!

頭痛のレッドフラッグサインは既によく知られている物があります。
「SNOOP(探る)」
(京都ERポケットブック第2版「頭痛」より引用・改変)

Systemic symptoms(全身症状):発熱、悪寒、盗汗、体重減少
Systemic disease(全身性疾患):悪性腫瘍、免疫不全、HIV
Neurologic  symptoms(神経学的症状):意識変容、瞳孔不同、片麻痺、構音障害、髄膜刺激兆候など
Onset(発症様式):突然発症、雷鳴頭痛
Older(発症年齢):50歳以上の、これまで経験したことがない頭痛
Pattern change:いつもと異なる頭痛、時間進行性に悪化する頭痛

太字のところ、特に、Onsetの突然発症の病歴が超重要です。
突然発症は、心血管疾患の最重要キーワードと言ってもいいからです。
SNOOPという語呂ではありますが、それはあくまで項目を覚えるための助けとして。Onsetの突然発症の病歴を最重視して問診してみてください。

とはいえ、「その頭痛は突然起こりましたか?」という質問をすると、「突然でした!」と答える患者さんも多いと思います。
突然発症の病歴を聞く時は、どの主訴においても、
何をしている時に起こったか、何時何分に起こったか覚えていますか?
と聞いてみてください。
この問いにはっきり答えられるのが、「真の突然発症の病歴」です。

最低限これだけは!

⭐️突然発症や神経学的異常を伴う頭痛
→まず脳血管障害を疑い速やかに頭部CTを撮影すること!

めまい

まずはこの流れ!

症例:主訴がめまいの患者
まずは失神ではないか確認して、次に中枢性めまいを否定しよう!

①バイタルサインチェック
 ↓
まずは失神を除外
(意識消失エピソード、発症状況、眼前暗黒感など)
※詳細は次回のnoteで!
 ↓
③レッドフラッグサインを意識して問診・神経学的異常がないか診察
 ↓
③画像検査を考慮

🚩レッドフラッグサイン→中枢性めまいかどうか!

(内科外来マニュアル第3版「めまい」より引用・追加)

・突然発症
・血管リスク因子(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙)
・頭痛、頚部・後頭部痛
・構音障害、嚥下障害、複視、半身のしびれ、脱力
・顔・口の周りのしびれ
・片側にだけ倒れそうになる
・歩行困難 
※筆者による追加
小脳所見
・異常な眼振(垂直、多方向)
・Horner症候群(縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹、病側顔面の発汗低下)
局所脳神経所見

半身のしびれ、片側にだけ倒れそうになる、口の周りのしびれがある・・・。
いずれもこれだけみたら大したことがなさそうですが、筆者はこのケースでいずれも脳梗塞の診断に至れたことがあります。
共通点は、やはり「突然発症」>「血管リスク因子あり」でした。

最低限これだけは!

⭐️突然発症のめまい
→失神を否定できたら、中枢性めまいを疑って頭部MRI撮像の敷居を下げよ!

最後に

今回は神経系の主訴で、頭痛とめまいを取り上げました。
特に、めまいの診療は難しいことも多いですが、ここ最近の症例で脳梗塞と診断できたケースをいくつか経験できました。
本noteシリーズは、「突然発症の病歴にこだわることの大切さを伝えたい!」というのが、執筆の最大のきっかけです。
胸痛・腹痛・頭痛・めまいと4つの主訴についてこれまで書いてきましたが、バイタルサインが安定しているなら、まずは突然発症の病歴にこだわれ!と伝えたいです。

参考文献
・内科外来マニュアル第3版「頭痛」「めまい」
・内科レジデントの鉄則第4版「頭痛」「細菌性髄膜炎」
・京都ERポケットブック第2版「頭痛」「めまい」

#この経験に学べ

この記事が参加している募集

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?