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上海アートシーン 2021年3月(3)

Theaster Gates 多宝阁 CHINA CABINET @ Prada Rongzhai. March 11th - May 23rd, 2021 (上)《My First Film》 2021

Prada荣宅でシアスター・ゲイツ(作家HP)の個展が始まっています。一つ前の展示がいまいちだったPradaですが、今回はバッチリ!内容も風景も素晴らしい。

1973年、アメリカ、シカゴ生まれのゲイツは、見捨てられた場所や地域と向き合い、命を吹き込むような活動・創作をしています。アフリカン・アメリカンとして、自身のルーツとなる文化もしばしば作品に織り込まれています。ちなみに日本にもよく来て作陶しているそうです(大林財団のリリースで読みました)。

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(右)《Scholar Stone》 2019, (左)《Bunny-Wolf with Stone and Pine》 2020 , 《Black Rug》 2018

陶器のお皿や壺と作品が混ざったかたちで、館全体が構成されている・・・というのがまずやってくる印象。もともとは個人の邸宅だったこの建物に、使われるための日常の容器たちが響き合います。

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改めて見るに、この展示では既製品による空間構成、自ら作った作品、既製品+自ら作ったもので構成した作品が区別されないで置かれています。かつて金持ちの住まい(特権的な場所)だったところが、パブリックなギャラリーとして一般の大勢の観客に公開されている、というこの建物の歴史にも触れている。それは私たちの市民社会の歴史にもひもづいています。デモクラシーということを意識した展示ですね。

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《Bird with Miuccia's Fake Boa, My Hat and Gloves》 2020

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《Plinth with Movement for Vessels》2020 (Carpet) , 《Vessels》 2020

一番大きな部屋、ボールルームには6つの展示ケースーーそれぞれが作品として一つずつ名前を持っていますーーと二つの彫刻作品がありました。展示ケースの作品は、ゲイツのお母さんが中国の陶器を入れていた、個人的な「Cabinet of Curiosity」が下敷きにあるそうです。天井の丸いステンドグラスが世界地図のようにも見えて、地理歴史的な文脈を持つさまざまなものがここに集まってきている・・・という雰囲気を醸し出しています。

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《Tar Work and Tools》2021

それぞれ中国の建物の瓦だったり、使い古されたレンガだったり、道具だったりが作品の一部として使われています。そのモノたちが見てきたこと、経験してきたことをいろいろ想像させられます。

2階の展示です。今回2階はこの二部屋のみ。凝縮された空間を作りたかったんですね、きっと。

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《For Consideration of the Dirty Work and Prayer》 2016 ,《With Oxides and City Grindings》 2015-16

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《Denim Cross with Plinth for Sacred Gifts》 2019

このデニム布を積み重ねた作品は、2019年の別の展示に出品されたものだそうです。これも日常のもの(着るもの)への愛着と、それを美術の展示スペースの中に置き直してみよう、というアイデア。実際見ると「なんだかわからないけどかっこいい。温かい。」という印象を持ちます。隣にレンガがちょこっと置いてあるのもいいですね。

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土曜日に訪問してちょっと失敗でした・・・というのは、この館はすごく映えるので、撮影に夢中な人多数。ゆっくり鑑賞できなかった。その愉しみを否定する気はないけど、この展示は特にしみじみ味わって浸りたいものだったので、また平日に訪れようと思います。

作品は一つ一つこの小冊子(観覧料を払えば無料でもらえる)に詳しい解説があるので、次は、読んで頭に入れてから行くつもり。

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