Main小寺

ドローン狂想曲始まる

小寺・西田の金曜ランチビュッフェ 34号(2015年5月15日発行)より

今回はApple WatchとAndroidスマートウォッチに違いでも書こうと思っていたのだが、連休で1週空いたらもうそれどころではなく、ドローンの話でドタバタである。Vol.032もドローンの話だったが、あれから事態が色々動いてきたので、今度は別の切り口でもう一度、今のドローン事情を俯瞰してみたい。

実は今週、5月11日のテレビ朝日系列「ビートたけしのTVタックル」に出演し、ドローンの問題点についての議論に参加した。放送を見て中途半端な印象を持たれた方も多かったと思うが、実際あの番組は討論番組というよりも、芸人さんを挟んだトークバラエティなので、収録現場でも結論めいたところまでは話が至らなかった。

番組で伝えたかったことは、3つあった。1つ目は、ドローンの問題はいくつかのレイヤーに分けて話を進めるべきということ。2つ目は、よい利用や可能性もたくさんあるのだが、そこが多くの人に理解されていないということ。3つ目は、規制は万能ではなく、行政が本当に力を入れるべきは教育と啓蒙であるということだった。1つ目、2つ目に関しては言えたし番組でも使ってもらったが、3つ目は発言のチャンスがなかった。

ただ次にCS放送テレ朝チャンネル「津田大介 日本にプラス」でもドローンの話を取り上げることになっており、出演も決まっている。MIAU代表理事2名がお届けするドローンの話と言うことで、おそらくTVタックルよりも深い話ができるだろうと思っている。今回は、そこで話す内容を整理するという意味もある。

まず自分の立ち位置をはっきりしておきたい。個人的には、今これだけの騒ぎになったこともあって、行政がなんらかの対応をしたいというアクションに関しては、一定の理解を示したい。ただ、行政側も首相官邸突入というインパクトの前に浮き足だってしまっており、ドローンの全体像をキチンと把握した上でアクションしているのかどうかという点は、疑わしいと思っている。

有識者を交えて議論しているということだが、ドローンの有識者というのは千葉大の野波先生のように、自分でドローンを設計できる、すなわちカスタムメイドの大型ドローンを作って利用するというレベルの人たちだ。一方で今多くの事件を起こしているのは、コンシューマモデルである。本来なんとかしないといけないのは、この部分だ。これではF1レーサーに自転車規制の話を検討させるぐらいレベルが違う話で、その「レベルが違うんだ」ということすらわかってないんじゃないのか、そこが心配である。

まずドローンの世界がどうなってるのか、僕なりの理解で簡単な図を作ってみた。実際にはもっと細かく分けるべきかもしれないし、僕の知らない世界もあるかもしれないが、とりあえずは4分類ぐらいで考えていいと思う。

頂点は無人で攻撃もできる軍事用で、これは同じドローンとはいえ、技術的にもコンシューマとはほとんど接点がない世界だ。

次が産業用として利用されようとしている、カスタムメイドのモデルである。ここは大学や専門企業が設計、製造するもので、価格は数百万円から数千万円レベルである。ここには、農薬散布用のエンジン機なども含まれる。さらにはパーツを買いそろえて、ラジコンヘリを自作するという昔からのホビーの人たちも含まれるだろう。空撮請負会社の一部もここに入る。要するに、完成品がショップやネットで市販されておらず、知識がなければ扱えないクラスである。

第3層が、量産品ながらもGPSやカメラを搭載し、プログラムで自動航行ができるものだ。DJIのPhantomシリーズやInspire 1、ParrotのBebop Droneといったモデルが代表的なところで、首相官邸に突入したのはこのクラスである。ここから下2層は、組み立て不要で箱から出してすぐに飛ばせるReady to Flyタイプで、ショップやネットで買える。

最下層には、GPSは搭載せずマニュアル操縦のみの小型ホビー機がたくさんある。手のひらに載るような小さなものもあり、いわゆるオモチャクラスとも言える。その一方で低解像度ながらカメラ搭載のモデルや、中型機になれば時速50kmぐらいで飛行でき、100gぐらいのカメラなら持ち上げてしまうものもあるので、一概にバカにはできない。さらにはあと1年ぐらいで、このクラスにもGPSやカメラは標準で搭載されてくる可能性もある。

法規制の議論は、主に国レベルと地方自治体レベルがある。国が着目しているのは、主に上から2段目の層だ。しかしドローンという呼称で呼ばれる機体の規定が曖昧なために、下2つの層も影響を受けるのか受けないのか、判然としない。

一方地方自治体が使用禁止措置のターゲットとしているのは、主に上から3番目のクラスだ。だがこちらもドローンの定義が曖昧なために、一番下の層も一緒くたに規制されようとしている。

ドローンの議論は、3つのレベルに分けて語るべきだ。

a) ドローンそのものが危ないね、という議論

b) カメラで上から撮られると、プライバシーの侵害やセキュリティ上の問題があるよね、という議論

c) 悪用目的で利用されるのをどう防衛していくかという議論

一番上は事故の話なので、悪意は薄い。危険性の認識が足りないことから起きる。下に行くほど次第に悪意が濃くなっていくわけだ。このように操縦者の過失、あるいは意図によって切り分けないと、1つのルールではとても処理できないというのが、僕の考えである。これ以降の話は、このa,b,cの分類が重要になってくるので、覚えておいて頂きたい。

ここから先は

6,685字

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?