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僕、粕田朔世。何度転生してもチャーンを回避できない 第2の夢

突然、僕はPCの前に座り、前回の夢と同じく、Kaigeeの記念すべき1社目の顧客のCS業務を行っていることに気がついた。PMがBさんであることや顧客担当がFさんであることに変わりはなかった。
これ以降の夢でも、この状況は変わることはなかった。要するに前回の夢と僕が置かれている状況は何もかも同じだった。ただし、一つだけ大きな違いがあった。僕の頭の中ではこれまでの教訓がはっきりと記憶されていたことだ。

僕は前回の教訓を活かし、 Fさんに対してはオンボーディング終了の定義について提案をした。kaigeeのようなデジタルツールを使用することに協力的な部署や社員を選抜し、そこでの会議でkaigeeの自動議事録作成件数が一定数以上を越えたらオンボーディング終了とみなすことにした。この定義についてFさんと上司のDX室長と合意した後、エンドユーザーに直接kaigeeのトレーニングを行った。直接トレーニングを行ったかいあって、オンボーディングは無事終了した。

そして、月日はあっという間に過ぎ去り、更新前月。僕はFさんに契約更新が近づいていることと、更新にあたり社内手続きに必要なら見積りを送ることをメールで伝えた。
その翌日。Fさんからの返信を開封すると、契約は更新しないと書いてある。僕はまたもFさんとビデオ会議を行い、解約の理由を尋ねた。Fさんは「これはDX推進室の上司の判断と前置きしたうえで、以下のように教えてくれた。

「弊社が実現したかった会議の効率化は、会議にかける時間を減らすことが第一で、会議の質向上は二の次」ということだった。

つまり、Kaigeeの議事録自動化は会議後の行動を早くすることを促したり、質問・発言評価機能はよい発言や質問を意識し、それができるようになることで意思決定の質向上を促すものだけれど、それが顧客にとって製品を利用する理由・製品から得たい価値になっていないということだ。いや…でもそれって導入を検討する過程でわかっていたことじゃないのか・・・?

という心の声が顔に出ていたのだろうか。Fさんが小さなため息をつきながら言った。

「今回、DX推進という名のもと、推進室としては急いで何か実績をつくらないといけなかったんですが、上司が何をするか悩んでいたところに御社のBさんが営業にやってきて、しっかり検討しないで、“これを使おう”と決めちゃったみたいなんですよね」

そんな事情があったなんて、Bさんはちっとも教えてくれなかった。

「それで、御社は会議にかける時間を減らすために、どんな製品をお使いになるのですか?」

僕の質問にBさんは困ったような顔をして、「会議中に会議と関係のないブラウザやファイルを開いていないか検知するシステムを導入したり、会社のルールとして、会議時間は30分までと決めたり、“会議時間は30分まで”と書いた紙を会議室に貼ったり、会議室の椅子を取り払ってスタンディングスタイルで行うことにしたりするみたいです」と答えた。

突然、両肩と背中に、途方もない徒労感が重くのしかかってきた。自分が精魂こめたオンボーディングが、そもそも必要とされているものではなかっただなんて。自分が費やした時間や努力はまったくもってムダだったのだ。次第に僕の頭の中で教訓が導き出されてきた。いくつかの教訓は新しいものだが、いくつかの教訓は以前に僕が学んだ教訓を補うものだった。

4.正しい顧客に販売できていること

5.正しい顧客に販売できていないと、その後のオンボーディングの質がいくら高くても意味がない

6.正しい顧客への販売は、営業やマーケティングなどCSの前工程の部署の影響を受ける

僕は『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』に、「チャーンの90%は販売時に起きる」と書いてあったことを思い出した。
とはいえ、これらの教訓はCS担当の僕一人ではどうしようもできない。
早くBさんに報告してKaigeeにとっての“正しい顧客”を定義し、営業やマーケティングが正しい顧客を集め、販売することを奨励してもらわなければならない。

前回の教訓で一歩進んだものの、今回の失敗で二歩も三歩も後退したような気分だ。
これらの教訓を忘れないように頭の中でよく焼香き付けると、不思議なことが起きた。僕は新しい夢を見始めたのだ。

未知なる目標に向かっていくプロジェクトを、興して、進めて、振り返っていく力を、子どもと大人に養うべく活動しています。プ譜を使ったワークショップ情報やプロジェクトについてのよもやま話を書いていきます。よろしくお願いします。