アルプス一万尺の謎[3]完結編

※これは2011/01/13に書いた記事を発掘加筆修正の上転載したものです※
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以前にアルプス一万尺の記事を書いてからはや6年。
色々と新情報もゲットできたのでここでまとめておきたい

まず復習まとめ事項として
・アルプス一万尺の歌は29番まであった
・舞台はヨーロッパではなく日本の北アルプス
・通説では京大山岳部作、らしい。
・1番の歌詞に出てくる「コヤリ」とは「小槍」のことで槍ヶ岳の頂上脇にある3,030M(正に一万尺)の小峰
・小槍の上でアルペン踊りは無理なぐらい超狭い
を記しておこう。

そして新たに出てきたものが「槍穂高縦走ルートと剣岳登山が混ざってが歌われている様子」という説である。

まず最初に1~7番だ。

(01)アルプス一万尺 小槍の上で アルペン踊りを さあ踊りましょ
(02)昨日見た夢 でっかいちいさい夢だよ のみがリュックしょって 富士登山
(03)岩魚(いわな)釣る子に 山路を聞けば 雲のかなたを 竿で指す
(04)お花畑で 昼寝をすれば 蝶々が飛んできて キスをする
(05)雪渓光るよ 雷鳥いずこに エーデルヴァイス そこかしこ
(06)一万尺に テントを張れば 星のランプに 手が届く
(07)キャンプサイトに カッコウ鳴いて 霧の中から朝が来る

ここでは登山初日~翌日の朝までが歌われている。

(01)は「さあ槍ヶ岳に登るぞー!」宣言で、場所は上高地と思われる。
(02)は昨晩の夢を思い出しつつ登っている様子が想像できる。
(03)では途中の水場で地元の子に道を聞いている状況、
(04)(05)では周りの美しい状況を楽しんでいる。
実際に上高地から槍ヶ岳を登ると途中にお花畑があるそうだ。
(06)で初日が終わり夜営キャンプに突入、
(07)で夜が明けた様子が浮かんでくるだろう。

ここまではとても美しい。

この後は当然二日目…と思いきや

(08)染めてやりたや あの娘の袖を お花畑の 花模様
(09)蝶々でさえも 二匹でいるのに なぜに僕だけ 一人りぽち
(10)トントン拍子に 話が進み キスする時に(ハ・ハクション )目が覚めた
(11)山のこだまは 帰ってくるけど 僕のラブレタ- 返ってこない
(12)キャンプファイヤーで センチになって 可愛いあのこの 夢を見る
(13)お花畑で 昼寝をすれば 可愛いあのこの 夢を見る
(14)夢で見るよじャ ほれよが浅い ほんとに好きなら 眠られぬ

どう考えても恋する山男がうじうじ言いながら登っているだけである。

(08)は二日目の登り始め、お花畑で相手のことを思い浮かべるものの
すぐに(09)でセンチな気分に突入している。
(10)では妄想大爆発、おそらく昨晩の夢を思い出してまたセンチに。
さらに(11)では自虐モードにさえ入り
(12)(13)では寝る度に妄想大爆発野郎だったことが明かされ
にも関わらず(14)では夢だけじゃ浅いんだよ!ともはや逆ギレか。

ただ、グダグダ言いつつも山は登り続けているのがこの男。

(15)雲より高い この頂で お山の大将 俺一人

ここで、槍ヶ岳に登頂したことが伺えるのだ。

ところがここで

(16)チンネの頭に ザイルをかけて パイプ吹かせば 胸が湧く
(17)剣のテラスに ハンマー振れば ハーケン歌うよ 青空に
(18)山は荒れても 心の中は いつも天国 夢がある
(19)槍や穂高は かくれて見えぬ 見えぬあたりが 槍穂高
(20)命捧げて 恋するものに 何故に冷たい 岩の肌

となる。

ん?槍穂高縦走ルートを登っていたはずなのに、突然剣岳の話になっているではないか。
もしや恋の妄想に疲れて頭がおかしくなったのか…?
というのはまあよくわからないものの「剣」が(17)に出てくるし、チンネもテラスも剣岳の名所の1つなので、剣岳を歌っているのは確実だ。

(18)の天候の不安定さも剣岳らしいのだそうで
(19)では剣岳から槍ヶ岳と穂高が雲に隠れて見えない事を歌い
難しい剣岳登山を(20)でぼやいているようだ。

こうなってくると色んな山に登っている様子を色々と適当に歌っているだけなのではと思いたくなるが、ここでまた、本来の槍穂高縦走ルートに戻ってくるのだ。

まず前日、キャンプ地であろう

(21)ザイル担いで 穂高の山へ 明日は男の 度胸試し

と夜に歌い、朝になって登り出す。

(22)穂高のルンゼに ザイルを捌いて ヨ-デル唄えば 雲が湧く
(23)西穂に登れば 奥穂が招く まねくその手が ジャンダルム

ジャンダルムというのは西穂高~奥穂高間にある3163Mもある岩尾根で、難所というか、山男にとっては夢の頂の一つだそうだ。

そしてこれ以降は情景描写になる。
(24)槍はムコ殿 穂高はヨメご 中でリンキの 焼が岳

夫婦のような槍ヶ岳と穂高の間に挟まれてヤキモチ(悋気)の南岳のことを行っているのではと予想されるようだ。

ただし、情景描写と言いつつこの3つはとんでもない。

(25)槍と穂高を 番兵において お花畑で 花を摘む
(26)槍と穂高を 番兵に立てて 鹿島めがけて キジを撃つ
(27)槍の頭で 小キジを撃てば 高瀬と梓と 泣き別れ

ご存じの方もいるだろうが、「花摘み」は女性版小あるいは男女大、「キジ撃ち」は男性版の排泄行為を示す登山界の隠語らしい。

つまり

(25)槍と穂高を背中に控えてお花畑でウ○コ
(26)槍と穂高を背中に控えて鹿島槍の方向にウ○コor
(27)槍ヶ岳の頂上でオ○ッコしたら、二つに分かれ

「北方向のは高瀬川へ、南方向のは梓川へ流れたよ(・ω・*)てへぺろ☆」のようなことを歌っているのである。

なんと突然の下ネタ展開なのだ。

と、格調が完全に崩壊したにも関わらず、最後はきっちりまとめてくる。

(28)名残つきない 大正池 またも見返す 穂高岳
(29)まめで逢いましょ また来年も 山で桜の 咲く頃に

このあたりは既に、また下山し終わって上高地に戻ってきている。

(28)で大正池を振り返りながら
(29)はまめで=達者で来年も会いましょう

と、歌っているのである。

因みに、冒頭で京大山岳部作が通説と書いたが、北アルプス地域に伝わる「安曇節」というやたらいろんなバージョンの歌詞がある信濃民謡から、多少歌詞をパクッているのではないかという部分もあるのだそうだ。ただこのあたりを調べ過ぎると多分はまるので、ここらで打ち切り、としてみようかなと思う。

……長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
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