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神原元弁護士の非武装中立の主張に沿った日本国有事の物語

神原元弁護士のご高説

 神原元弁護士の非武装中立、無抵抗主義というご高説ですが、さまざまなポストで触れられています。さすが、影響力の強いアカウントであると神原元弁護士を改めて評価しようと思いましたが、「高度な検索」を利用しても当該ポストを見つけることができません。

@kambara7

ならば、「敵が攻めてきたらどうする?」
簡単だ。軍事的抵抗はしない。市民を巻き込む殺し合いはしない。
そのかわり占領軍に一切協力しない。
傀儡政府を作らない。行政官も占領軍の言いなりにならない。
これはGシャープの説く「非暴力的抵抗」のほんの一部だ。これを平素から学んでおくのだ。

@kambara7

 念の為にリンクを貼っているはてなブックマークで確認してみると、なぜがポストが削除されていました。

 神原元弁護士に関する象徴的なポストはしばしば削除される傾向にあるように感じています。例えば、上瀧浩子弁護士の「正義は暴走しても正義だもん」という神原元弁護士の言葉を紹介したポストもとっくに削除済みです。そこで、神原元弁護士のご高説に沿った物語を制作してみました。

神原元弁護士の理想の国防論に沿ったある物語

 20XX年、A国が日本侵略の意図を顕にし、離島を中心に武力攻撃を始めた。当時の日本は、街弁から政権の防衛担当補佐官に転身していた正義勝(せいぎまさる)の指揮により、陸海航空の自衛隊は廃止され、非武装中立で武力によらない抵抗主義を貫いていた。
 この危急の事態の中、梨田阿久生(なしだあくふ)総理大臣が正義勝に尋ねた。

「補佐官の献策により、日本は非武装中立となり、陸海航空自衛隊は解散、日本の秩序を維持する暴力装置は警察や海上保安官などしか存在しなくなった。しかし、B国から寄せられた情報によると、A国は東京湾への奇襲作戦を考えているようだ。ただ、同盟国のB国内では「日本のために若者の命が失われるのか」という世論が強いと聞く。非武装中立論の第一人者として、今後の日本の対応について意見を聴きたい。」

正義勝は即座に答えた。

「武力での抵抗はより激しい反撃を招きます。ガンジーの無抵抗主義に基づいた抵抗をなすべきです。A国許すまじ、日本を守れという国際世論を盛り上げていかなければなりません。そのため、総理には重大な覚悟をしていただく必要があります。」

正義勝は小声で梨田阿久生総理大臣に腹案を伝えた。

「そこまでしなければならないのか。」
「それがマストです。」
「わかった。私も覚悟を決めよう。」

 正義勝の自宅はガルバニウム鋼板をふんだんに使用した小粋な二階建てであった。正義勝が帰宅すると妻と二人の娘が出迎えた。上の娘は小学校の低学年、下の娘は子ども園の年長で、可愛い盛りである。
 正義勝が重い口を開こうとすると妻が遮った。

「あなたの妻ですから、すでに覚悟はできています。どこに行けばいいのですか。」
「東京湾だ。」
「娘を連れて向かいます。」
「すまない。」
「すまないなんて言わないで。そんな言葉はあなたには似合いませんよ。あなたの理想の国のためなんでしょう。『行け』とおっしゃってください。」
「非武装中立は、市民の多くの犠牲を前提に国際世論を盛り上げていかなければならないんだ。本来なら私が行くべきなんだが。」
「あなたではだめ。あなたは一人称が『俺』、背の高い立派な体格、愛車は「ミニ」と言いながら3ナンバーのドイツ車、それも戦隊モノの特撮では主役を張る赤の車でしょう?そんなマッチョイズムの権化のようなあなたが犠牲になるより、私か犠牲になる方が国際世論が動きますよ。」
「すまない。」
「また言っていますよ。」

 そして、妻と娘たちは出かけていく。

「それでは行ってきます。」
「パパ、バイバイ。」

 これが今生の別れになる。正義勝は妻と娘の姿をこれでもかと言わんばかりに大事に瞳の奥にしまい込んだ。

 二日後、正義勝の姿は東京湾に面した戦場跡にあった。ここに上陸したA国の軍隊に多くの市民が虐殺された。その中には正義勝の妻と娘たちも含まれていた。そこでは「A国をしばき隊」と称する市民の非暴力の抵抗グループのリーダーである土間大介(どまだいすけ)が遺体の身元確認作業を行っていた。

「補佐官、すみません。奥様の遺体は発見されたのですが、あまりに酷い状態であったので独断で火葬にしてしまいました。」
「土間君、気にしなくていいよ。そして、気を遣ってくれてありがとう。娘は?」
「はい。敵兵が娘さんを捕まえたときに奥様が・・・」
「そうか。辛い役目を任せてしまったな。」
「補佐官、そこまでして自衛隊を廃止する必要があったのでしょうか?」
「軍事的抵抗は更なる暴力を招くんだ。」
「でも・・・」
「俺は今、妻と娘たちを『よくやった』と褒めているんだよ。同じように総理の依頼に従って多くの市民が我が国のために命を散らせる重い決断をしたんだ。国内では高田浩一(たかだこういち)さんや東岡研介(ひがしおかけんすけ)さん、輪田八十八(わだはちじゅうはち)さんのような反骨心あふれる記者が、国外からはクラッチマッタ・フーミンのような高名な記者が取材をしていたし、これで国際世論が我が国を守れと動き始めるはずだ。」

 そして、日本の同盟国のB国が中心となって国連軍が形成され、激しい戦闘が日本列島のあちこちで繰り広げられた。

 しかし、徐々に支援疲れが生じる恐れがあるので、国連軍の士気を上げるためにはまだまだ多くの市民が虐殺される絵が報道され、国際世論を盛り上がる必要がある。意を受けて非武装中立のために多くの市民がA国の前に立ちはだかり、無惨な姿となって命を落としていった。
 A国をしばき隊の一派である真の漢組(まことのおとこぐみ)で東京大学に在学するエリート候補生の足塚陸(あしづかりく)は、戦車の前に自転車で突入し、砲撃を受けて影も形も無くなった。
 A国をしばき隊から離れて一匹狼となっていた納井芳一(のいほういち)は、A国の上陸地点に立ちはだかったが、上陸部隊の銃撃で蜂の巣となった。銃撃で破壊された水筒からこぼれるオレンジジュースがトマトジュースのように赤く染まっていた。
 そして、足塚陸の死に続けとばかりダイインした真の漢組メンバーらの上を戦車が通過していった。その遺体は戦車が通過した箇所で分かりやすく千切れていた。
 A国は戦場に慰安婦宿を設けず、兵士の強制性交で侵略する国に恐怖を与える方針であった。それは、大規模な強制性交がなされたと報じられた地から帰還した兵士に大統領からの褒章を与えられていることでも明らかであった。その被害は女性ばかりでなく男性にも及んだ。無惨に殺された女性の遺体の中に紛れて肛門から大量の出血のある男性の遺体や性器を切り取られた男性の遺体が散らばっていた。この市民に向けられた無惨な虐殺の絵や報道がいわゆる「国際社会の支援疲れ」を防ぐこととなった。

 十年後、激しい戦闘と虐殺で日本の人口は百分の一まで減少していた。その頃には正義勝は梨田阿久生総理大臣に推されて官房長官に就任していた。そして、自国を守るためではなく、侵略のために戦闘を続けるA国の士気は、経済制裁も相まって徐々に衰え、日本とA国の間に停戦協定が締結された。官房長官秘書官に転身した土間大介がホッとした表情で正義勝の元に歩み寄ってきた。

「官房長官、ようやく停戦となりましたね。」
「土間君がA国をしばき隊から転身してくれたおかげだよ。ただ、俺にはやらなければならないことが残っているんだよ。」
「官房長官はこれからの日本に必要な方です。」
「太平洋戦争で特攻という下策を提案した大西瀧治郎はどのように責任を取ったか土間君ならご存知だよね。私が大西瀧治郎程度の責任の取り方すらできないなんてことがあってはならないと俺は思っている。」
「官房長官。」
「いいね。俺はこときれる瞬間まで、市民を犠牲に国を守る手段をとった責任を感じたいと思っている。間違っても介錯しようなんて考えるんじゃないよ。」
 二日後、官房長官執務室に土間大介が入ると、腹と胸から流れた血の海の中で正義勝は息絶えていた。血で描かれた赤い複雑な曲線は、正義勝の指に繋がっていた。相当苦しんで亡くなったのだろう。
 正義勝の葬式は国葬となった。多くの市民が非武装中立で日本を守った正義勝を讃え、その死を悲しんだ。
 その後、日本は人口減に対応して移民を大々的に受け入れるようになった。とくに同盟国のB国からの移民が多く、日本人は少数派となった。そのうち、日本民族は徐々に移住してきた大勢のB国の民族に同化し、そのうちに公用語がB国語へと変更された。
 そして、百年後、日本はB国の何番目かの州となり日本という国は存在しなくなった。土間大介が設立したA国をしばき隊の第十五代総帥を務める半田信平(はんたのぶひら)は、先住民族とされた日本民族を血統のみで認定する日本共同会議の会長と日本民族博物館「OSSU(おっす)」の館長を務めていた。B国内では認定日本民族と「OSSU」が「公金チューチュー」なのではないかという批判が根強いが、すべてヘイトスピーチと先住民族に対する差別と切って捨てればいいので対応は簡単であった。そして、世界の誰一人として日本語で物事を考える者が存在しなくなってまもなく五十年になろうとしていた。