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水道橋博士元参議院議員の「反スラップ訴訟法制定の公約」とは一体何だったのか

水道橋博士元参議院議員が敗訴

 水道橋博士元参議院議員のツイートが名誉毀損にあたるとして松井一郎元大阪市長が損害賠償を求めて提起した民事訴訟について、大阪地方裁判所は、被告である水道橋博士元参議院議員に対して110万円の支払いを求める判決を言い渡しました。

 タレントで元参院議員の水道橋博士氏(60)のツイッター投稿で名誉を毀損されたとして、日本維新の会前代表、松井一郎氏(59)=4月に大阪市長を退任=が計550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、大阪地裁であり、冨上智子裁判長は「社会的評価を低下させたことは明らか」として、水道橋博士氏に110万円の支払いを命じた。
 判決理由で冨上裁判長は、被告が昨年2月、松井氏に関する動画をツイッターでリンクし、「維新の闇」「経歴ヤバすぎ」といった文言が並ぶサムネイル(動画の要約画像)とともに「下調べが凄い。知らなかったことが多い」とのメッセージを併せて投稿したと指摘。「(読者は)疑惑が具体的で確度の高いものと理解する」と認定した。
 被告側は「(当時市長だった松井氏の)疑惑の存否は公共の利害に関する」として、言論を封じ込める「スラップ訴訟」だと反論していたが、冨上裁判長は動画で言及された「疑惑」が真実との立証がなされていないことも踏まえ、被告側の主張を退けた。
 松井氏は「デマを拡散して、人を誹謗中傷することは絶対に許せない。今後このような事案がなくなることを強く望む」とコメント。水道橋博士氏は「主張が認められず誠に残念。控訴して争う」としている。

産経新聞「水道橋博士の投稿は松井一郎氏への『名誉毀損』110万円賠償命令 大阪地裁」

反スラップ法制定を公約として当選した水道橋博士元参議院議員

 この水道橋博士元参議院議員は、令和22年7月の参議院議員通常選挙にれいわ新選組から「反スラップ法制定」を公約の一つに掲げて当選していました。

 18日、浅草キッドの水道橋博士が今夏におこなわれる参院選れいわ新選組から出馬すると表明し、話題を集めている。というのも、水道橋博士が出馬を表明した際、「消費税ゼロ」などの政策とあわせて、このように公言したからだ。

「反スラップ訴訟法をつくる」
松井一郎さんに対し、俺をこうやったことを絶対に後悔させる」

 ご存知のとおり、松井一郎・大阪市長は水道橋博士を名誉毀損で提訴、550万円の損害賠償訴訟を起こした。これは、松井市長や維新への批判を強めていた水道橋博士に対する嫌がらせ、批判封じ込めのためのスラップ訴訟であることは明らかだが、それに対し、水道橋博士は法廷のみならず国会議員として根本から戦うと宣言したのだ。
 この水道橋博士の怒りは当然のものだろう。というのも、松井市長のやり方はあまりにも卑劣なものだったからだ。
 事の発端は2月に遡る。水道橋博士は2月13日に「【維新の闇!】大阪市長・松井一郎の経歴を調べたらヤバかった!」というYouTube動画にリンクを貼った上で、〈これは下調べが凄いですね。知らなかったことが多いです。維新の人たち&支持者は事実でないなら今すぐ訴えるべきだと思いますよ(笑)〉と投稿。すると、松井市長は〈水道橋さん、これらの誹謗中傷デマは名誉毀損の判決が出ています。言い訳理屈つけてのツイートもダメ、法的手続きします〉と噛み付いた。つまり、松井市長は“名誉毀損の判決が出ている誹謗中傷デマを流すな!訴えるぞ!”などと言い出したのだ。
 しかし、この松井市長の主張は明らかにおかしい。まず、松井市長は〈これらの誹謗中傷デマは名誉毀損の判決が出ています〉と述べたが、これは松井市長が過去の女子中学生に暴行をしたとするSNS上の投稿に対して松井氏がおこなった損害賠償訴訟で、2021年に大阪地裁が松井氏への名誉毀損を認めた一件を指していると思われる。だが、問題の動画は、敗訴した投稿ではなく、むしろ、中学生への暴行という情報は根拠不明で、松井氏本人も事実を否定、裁判でも勝訴していると伝えていた。
 いや、それ以前に、水道橋博士がツイートに貼り付けた動画は再生時間を指定してリンクしており、指定されていたのは松井氏のファミリー企業が大阪市内の映像設備改修工事や照明設備LED化工事などの仕事をおこなっているという疑惑を紹介している場面だった。つまり、水道橋博士が投稿した動画の指定箇所は、名誉毀損が認められた誹謗中傷デマではないし、前述したように動画内でもその裁判結果はきちんと伝えられており、けっしてその誹謗中傷デマを流しているわけではないのだ。
 水道橋博士が取り上げたファミリー企業の問題にしても、もし松井氏が事実無根だと主張するのならば、疑惑に対してまずはしっかり説明をおこなうべきだ。そうしたこともすっ飛ばし、動画の投稿者でもない水道橋博士を提訴するとは、公人としてあるまじき行為としか言いようがない。

甘利明・前自民党幹事長のスラップ訴訟圧力の成功で、味をしめた安倍自民党

 維新といえば、創設者である橋下徹氏も批判的言論の萎縮を狙ったとしか思えない訴訟を起こしてきたが、松井市長もたびたび自身の批判に対して訴訟をちらつかせている。とくにこの水道橋博士に対する提訴は、水道橋博士をある種の“見せしめ”にすることによって、維新の批判を封じ込めようという意図がミエミエだ。
 だが、このようなスラップ訴訟を仕掛ける政治家は、維新にかぎった話ではない。とくに政権与党である自民党の有力議員たちも、同様に卑劣なスラップ訴訟を起こしているからだ。
 近年でいえば、その筆頭は青山学院大の中野昌宏教授を訴えた自民党の世耕弘成・参院幹事長だろう。中野教授は2019年に、世耕氏と統一教会の関連団体「原理研究会」の関係についてツイート。すると、世耕氏はその内容が虚偽だとして中野教授を提訴したのだ。
 これに対し、中野教授は世耕氏の提訴はスラップだとし、2020年に世耕氏を反訴。会見では「批判者をだまらせるなど、公共の言論空間の萎縮を目的とした人権侵害だ」「政治家への市民の言論は公的なもの。裁判で負けると最高裁判例ができ、市民が政治家への疑惑や政治姿勢・思想について、証拠がないと論評できなくなる」と批判をおこなったが、まさにそのとおりだろう。
 また、自民党議員による言論の萎縮を狙ったスラップ訴訟は、メディア相手に次々に起こされてきた。とくにスラップ訴訟として象徴的なのが、甘利明・前自民党幹事長がテレビ東京などを相手に起こした合計1100万円もの高額名誉毀損裁判だろう。
 甘利氏が問題にしたのは、2011年6月に放送されたテレビ東京の報道番組『田勢康弘の週刊ニュース新書』。同番組は原発事故の責任を検証する企画で、第一次安倍内閣でも経産相を務め、原子力行政に深くかかわっていた甘利氏をインタビュー。その際に記者は、2006年に地震に起因した事故によって原発の電源が失われる可能性を指摘していた日本共産党議員の質問主意書をもとに、津波被害による電源喪失の可能性が指摘されていた問題を追及。すると、突然、甘利が席を立って取材をボイコットし、記者にテープを消し、インタビューを流さないように要求。しかし、テレ東の記者はその要求を拒否し、番組では甘利氏がいなくなって空席となった椅子を映し「取材は中断となりました」とナレーションとテロップを入れて放送した。これに対して、甘利氏は東京地裁にテレ東や記者らを名誉毀損で訴えたのである。
 つまり、甘利氏は原発事故の責任を問われたことに逆上して取材拒否した上、自分が逃げたという印象を与えるような報道をされたことが「名誉毀損にあたる」と訴えたのだ。ただ、それだけでは大義がたたないために、テレ東が番組で「津波による電源喪失を指摘」と報じていたことをとらえ、「質問主意書には津波のことは書いていない」と抗議したのだ。
 言っておくが、問題の質問主意書には津波によって冷却機能喪失の危険性を指摘する記述がある。だが、弱腰のテレ東は、訴訟を起こされる前になんとかなだめようと、地震を津波と間違えた部分だけを訂正してしまった。その結果、訴訟でもほとんどのところで甘利側の言い分が却下されたが、この枝葉末節の部分をテレ東がすでに間違いを認めているとみなされ、2013年に330万円の損害賠償金がテレ東側に命じられたのだ。しかも、テレ東は現場の意向を無視して控訴を断念。報道そのものが「虚偽」「捏造」だったということになってしまった。

(略)

 圧倒的な力を持つ権力者が、批判を封じ込めるために訴訟を起こす──。しかし、その卑劣な目的のために標的にされた水道橋博士は、松井市長の恫喝に屈することはなかった。しかも、アメリカの複数の州で制定されている、スラップ訴訟を禁じる「反スラップ訴訟法」を日本でもつくるべく、選挙にまで打って出るというのである。
 水道橋博士は、19日にYouTubeで公開された、れいわ新選組参院選全国比例区候補者である長谷川ういこ氏とのオンライン対談で、このように語っている。

「とにかく僕のなかではこのスラップ訴訟というものが、矮小化する、ブラックボックスのなかにある、非現代的な、たいへんな民主主義の危機の問題だということをきっちりと伝えられれば、それが第一の目的です」

「本当に見くびってますよ。『芸人なんてそんなもんだろう。俺がこう言ったら黙るだろう』みたいなところなんで」

松井一郎さんに対しては、僕に対してそれ(スラップ訴訟)をやったっていうのを、生涯にわたって後悔させる」

 公人中の公人である政治家による、言論の自由を阻害しようとするスラップ訴訟は絶対に許さない。水道橋博士の勇気ある行動と今後の奮闘に期待したい。

LITERA「れいわから出馬 水道橋博士が主張する『反スラップ訴訟法』の重要性!維新・松井だけでなく自民党も批判封じ込めで訴訟乱発」

 水道橋博士元参議院議員は、松井一郎元大阪市長が提起した民事訴訟を「スラップ訴訟」であると主張し、反スラップ訴訟法を制定することを公約の一つに掲げて参議院議員となったものの、大阪地方裁判所でスラップ訴訟であるとの主張は一掃され、名誉毀損による不法行為が認められて敗訴しているわけです。結果として水道橋博士元参議院議員は、スラップでも何でもない民事訴訟をスラップであると主張することによって参議院議員になったと言ってもよいのかもしれません。水道橋博士元参議院議員は、このあたりの事実をどのように整理なさっていらっしゃるのでしょうか。

LITERAの杜撰なスラップ訴訟認定

 このLITERAは、「圧倒的な力を持つ権力者」が「批判を封じ込めるために訴訟を起こす」ことをスラップ訴訟と杜撰な定義を掲げていますが、LITERAの定義によるスラップ訴訟を数多くなした国会議員として頭に思い浮かぶのは、有田芳生元参議院議員です。有田芳生参議院議員は産経新聞の阿比留瑠比さん、加藤清隆さんなどのマスコミ人を相手に名誉毀損による不法行為を原因とした損害賠償請求訴訟を提起しています。有田芳生元参議院議員の提起した民事訴訟は、マスコミ人ではないただの素人であった水道橋博士博士元参議院議員ではなく、国民の知る権利を保障するマスコミを標的としたものであるわけですから、LITERAの定義によればより深刻なスラップ訴訟になるはずですが、何の言及もないのはどうしてでしょうか。