見出し画像

子どもは弱く強かだ。_落下の解剖学

##ネタバレと私情が交錯しまくった内容になっていると思います##

タイトルで科捜研の女とか法医学教室の事件ファイル的な話かと思う人も多いだろうけど全然違います。
法廷ミステリー?とも違う。

山奥に住む家族の夫が死んだ。
自殺かもしれないけど他殺なら奥さんが犯人だろ。という話。

着地点は曖昧で観る人に委ねちゃう結末で好き嫌いわかれそう。
こういうの私はモヤモヤするタイプなんだけど、この作品は結構のめり込んで観れた。でも多分家だったら速攻寝てる。なので映画館で観て良かった。
時間が経つといろんな解釈が自分の中で生まれるスルメ映画かなと。

まず言いたいのは犬のスヌープが素晴らしい。
びっくりした。CGかと思った。動きは勿論、間の取り方や表情なんかも凄くて。
ダニエルに試されて死にかけるシーンもCGじゃないなんて。
全体的に良い作品なんだけど犬で5割り増し。
ラストシーンなんて・・あらららスヌープまでも!?ってなるもの。

話のメインは、死んだ夫と奥さんの関係性。
話が進むたびに色々と分かってくると、途中から自殺だろうが他殺だろうがどうでもよくなってくる。これが退屈せず集中できたところ。
この夫婦はお互いの母国じゃない場所で知り合って、お互いの母国語じゃない言葉でコミュニケーションし、子育てし、片方の母国の、しかも山奥に家を構えた。
お互い同じような仕事をしていて奥さんはその仕事で成功していて、夫は家で別の仕事をしようとしている、それを奥さんはあまりよく思っていない。
もうこの夫婦は終わっていて奥さんも奥さんだけど旦那さんも相当っていう。

なんかもうそこから「落下」よね。そこを「解剖」だよね多分。

こういう人と人とのエピソードってどちら側からなのかどちらの味方なのか、自分に相手がどう振る舞っているかで印象ってガラリと変わるし
何回もある裁判のシーンでも検事や弁護士や裁判長のような人物でさえも主観や自分の一方的な思いをぶつけてくるし。弁護士なんか奥さんのこと好きだったという。
夫婦の関係もその周りのことも、時間が経つたびにさまざまな要素が頭に入っていき目が離せなくなる。

主に説明とか供述とか会話から「ああ、こういうことかな」と観る人に考えさせるような作品。
だからかなんか妙に自分に当てはめてドキッとしてみたり、なんだか身近なことのように思えてくる不思議。

憶測や主観で判断するなといっているけど登場人物皆、憶測や主観でモノ言ってる感じ。それを黙ってみていて最後にうまく使ったのがダニエルかなあと。

結局1番しんどいのは子ども。大人のシステムに従わなきゃいけないから。
ただ救いだったのは息子ダニエルが恐らく“望んだ”形におさまったことだ。
父が亡くなって、その事について1年以上大人たちがあーだこーだしている間にダニエルも強かに考えていたのだ。
だたダニエルが望んだ形に収まったとしても、それがダニエルにとって幸せかどうか分からない。
だって裁判が終わり母と子の再会を見ても、わー!!!良かったねえ!!母ちゃん!!わーん!!とはなっていなかったからね。なんだかしばらく、というかずっと子の微妙な時間は続いていくのかなという気分になる。
もしかするとこれは夫が望んでいたかもしれないと思うとゾッともする。

私は両親が離婚していて、当時中学生だった私は父親についた。
父親は全く育児に関与してなかったし、母親からは父親の悪口を散々聞かされ洗脳されており、年頃だった私にとって父は脅威だったのだけど
私が物心ついた頃から夫婦仲は良くなくて
その理由は中学生にもなると理解できるようになっていた。
今までの関係性から母親についていく方が側から見てスムーズだったかもしれないけど
今後私が成長し大人になった時に脅威となるのはどちらだろうと考えると父親を選ぶ結果となった。私も強かに考えていたんだなあと思う。7歳年上の姉の存在もとても大きかったけどね(姉も父方についた)
その結果、苦労したこともあったけど、私はきちんと働いて稼ぐことを覚え、家を出て結婚して子を産んで育てている。
母親は当時娘達の選択に多少なりともショックだったと思うが、すぐ自分のもとに来るだろうとたかを括って余裕で家を出たと思う。
それが今、もう10年以上絶縁中である。子供産んだことも住んでる場所も伝えていない。
それが私にとって幸せかどうか。分からないけど多分幸せだ。

今息子は、私を見て、彼なりに色々考えているのかな。と思うと気が引き締まる。
ただね、人と人、個人と個人なんだよな。血が繋がっていても、夫婦であっても一人の人間、脳みそ持ってる人間なんだよな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?