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【第1回】私立古賀裕人文学賞:結果発表

はじめに

いきなりはじまったこの企画、
私立古賀裕人文学賞(#古賀コン)。

皆さまのご協力とご拡散のお蔭様で、沢山のご応募を頂くことができました…!

ほんとうれしい…… ( ;∀;)♡

いや、

ほんとうれぴよ丸…… ( ;∀;)♡(?)

ご応募頂いた皆さま、情報を拡散頂いた皆さま、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。
とてもとっても嬉しくて、作品のURLを頂くたびにリアルで小躍りをしておりましたですよ!
感謝してもしきれんです。

さて、第1回のテーマは「蒐集」でした。

この企画はあくまでも私的なものですので、テーマについても「私個人にとって大切な、あるいは重要な意味を持つもの」を選んでおりますです。

とはいえテーマに対する個人的な思いをここでご説明してしまうと作品をお読み頂く際のノイズになりますので、一旦割愛させて頂きます。
※詳しくは7月1日(土)21時~実施予定のTwitterスペースにてお話しできればと思っております…!

今回やってみて個人的に一番面白かったのは、「ルールやテーマに対する問合せが一切来なかった」という点でした。
企画初回なので「1時間」や「蒐集」の使い方に関する確認や質問が来るかな~と思っていたのですが、結局1件もありませんでした。
それは募集要項を読んだ皆さまが「自分なりに解釈して」、「自主的にルール設定を行った」ことの顕れであり、そこには各自の価値観、モラル、好みが大いに反映されているだろうと。それが何より私の興味関心を刺激してくれました。最高です。

私、人が何かを選択する瞬間が大好きなんです。
選択に宿る芸術性の虜なのです、私。
ほぼ病気。
※詳しくは7月1日(土)21時~実施予定のTwitterスペースにてお話しできればと思っております…!

私のツイートを見て募集要項のリンクを踏むのか踏まないのかも選択。
募集要項を読んで書いてみようかやめとこか選ぶのも選択。
良く分からない1時間ルールをきちんと守るのかテキトーに流すのか決めるのも選択。
一文字目も選択。どこでやめるかも選択。

そんな数々の選択の果てに書き上げられ、私の手元に届いた作品は、その全てが宝島です。(島!)
こんな贅沢ってないよ。
カニ鍋だよ。
※詳しくは7月1日(土)21時~実施予定のTwitterスペースにてお話しできればと思っております…!

頂いた大事な作品は万事公正を期すため、全て一同日中に拝読し、優勝作品選考を実施しました。
この賞はあくまでも私個人の趣味嗜好によって、その場その時に最も心打たれた作品を選択するものであります故、決して各作品の優劣を判定するものではございません。
そこのところ、よろしくご理解ご容赦頂けましたら幸いですm(__)m

本当に全作品最高に面白いのでたくさんの人に読んで欲しい!!!
ぜひ楽しんで行ってください☺

全作品講評

※掲載の順番は優劣順位ではなく応募順でございます故。

①ki 作 『これは、なんだろう。』

講評:むちゃくちゃ面白いい!!いや~むちゃくちゃ面白かったなぁ~。今時の若者の語りでいてやや露文学ぽくて煙渋い(それでいて神経質っぽい)お洒落パッケージ感も備えた私小説風の作品。最後に写真が出て来て「これは、なんだろう」のド真ん中。知的好奇心と憧憬の交差する場所に今の住処あり。応募してくれてありがとう…!この作品を読めてすごく嬉しかったです。自分の幼少期と照らし合わせてもまじで身に覚えのない体験を他人がしているのだと思ったら、やっぱり人間って面白いなと改めて。

②えこ 作 『蒐集者と回収車』

講評:『もじりの文学史』という教科書があれば絶対に載せたい単語が生まれてしまった。。「バーゲンダッシュ」という言葉はバーゲン/ダッシュという既存の単語の組み合わせであるにも関わらず前後の文脈から一手で某赤茶蓋アイスクリームブランドのオマージュであると分かりそこには個人の知性が必要とされない。確かに理解に二手三手かかるもじりも面白いが、奇妙な空気感、先行きの不穏当さを邪魔しないようにそっと置く(それでも小さな笑いがやや尾を引くため一旦水を飲む)にはこれがギリギリだろうという絶妙なライン。感服した。

③紙文 作 『パンピーちゃんには通じない!☆』

講評:たとえばオムニバス形式の舞台を上演する時、演出家として一番こだわりたいのはやっぱり開演~最初に配置する掴みの作品でありまして、寝ても覚めてもどれを選ぼうか考えちゃうものなんですよねぇ。一発目の作品は上演全体の空気感や色味、方向性を示唆すると共に、きっちりがっちり観客のハートをキャッチして没入感を持ってもらうという極大の役目がある訳です。そこでコケたらその後の作品は全然興味持ってもらえないし観てもらえない。だからこの言い方で私の想いが伝わるかどうかギリではありますが私の中では最大級の賛辞でありまして、「もし演出するならこれを一作品目に置きたい」。

④堀部未知 作 『そして耳たぶに触れる』

講評:もう面白くて面白くて繰り返し読んだ。読み終わるのがもったいなくて途中で何度も先頭に戻った。正常とは言えずそれゆえの面白さを付与された文章で最後まで書き切るのは細いワイヤーの上をチェンバロ弾きながらスタスタと歩いていくようなもので、幼少期の体験と学習に依るところが大きい類の才能であります。最初から最後までどの一文を取り出してもそれ単体で面白く、前後との組み合わせで如何様にも味わいが変化する。そんな文章を見たのはシェークスピア以来だと言ったら怒る人も居るかもしれないけれど私は本当にそう思ったんだもん。

⑤齋藤優 作 『追跡セゾン』

講評:練度という表現が一般的かはわかりませんが練度の高い作品の初手一文目は空間転移の術式であると思っているんですよ。さて読もうかと思って先頭の一文に目を向けたらもうその世界の中に入っちゃってる。そんな作品に出合った時、やはり文学は芸術だなと毎度毎回改めて納得させられるんです。それは正しく世界の創造行為であって、齋藤さんがこの夕方を1時間足らずで創り上げたことに畏怖の念さえ抱きました。すばらしいそして、おそろしい。ちょっとえっち。「なんでそこちょっとえっちなんだろう」の問いが内包する価値の尊さたるや。

⑥ハギワラシンジ 作 『繁殖のルール』

講評:凝るのも良いが、真っすぐも良い。ツーシームも良いけれどフォーシームが見たい。それが私たちじゃないですか。ハギワラシンジの真っすぐな想いは初夏の風に乗って、私たちの心の花弁を揺らしたね。揺らしたんだよね。揺れましたよ。恐らくベルも鳴りました。最初から最後まで何言ってんだと思う人も居るかもしれない。世の中には色んな人が居るから。でも私は泣いたね。読み手に想いを届けるための独白じゃない。ルールブックをただ読み上げているだけ。ただ自分が立っている場所を説明しただけ。でもそれって誰にでも出来ることじゃあないんだよ。みんな自分がどこに立ってるか分からないんだもの。自分の世界のルールは自分自身で決めなくちゃ。一番大事なことが書いてあったんだよ。

⑦ましこ 作 『顔のない運転手』

青のショートストーリー - 顔のない運転手 (syosetu.com)

講評:学生時代を過ごした街に降りると、何の変哲もない街灯も名前も知らない八百屋のおやじも好き勝手に脳みそを刺激してきて困る。記憶と感情と身体は切っても切れない関係だから、私たちは毎日失敗ばかりだから、昔のクラスメイトに会うというのは自分の肛門を眼前に突き付けられるようなもんで、平気な顔して同窓会に行ける人間は全員肛門耐性が異常に強いと言わざるを得ない。私はちっぽけな虫なので、同窓会のハガキが届くと恥ずかしくって恥ずかしくって布団を被って朝まで泣いてしまう。だから作中に漂う不穏な浮遊感が演出なのか私自身の劣等感に依るものなのかがずっと分からず(あるいは境界が曖昧なため)、ずっともぞもぞしてた。今ももぞもぞしてる。

⑧ふきげん 作 『本の重さ』

講評:短い文章の中に小説技法的な面白さとエッセイユーモア的な面白さが混在していて、腕の立つパティシエが作るエクレアのような美味しさがあった。どこを食べても成立していて、かと言って全てが計算で作られた訳でもないアドリブ的な要素も感じられる作品。深い洞察と諦めの混在する部屋。最後の一文には深く共感してしまい「うそうそ!(笑)それじゃあまるで家じゃ心休まらないみたいじゃないか!(笑)」などと空中に向かって言ってみたりしたがただ寂しくなっただけだった。結婚とは。結婚とは。エクレアが美味い店は何食っても全部美味い。事実、1本1,800円くらいするエクレア食べちゃうとプチパラダイムシフト起きちゃうんですよな。

⑨藍笹キミコ  作『澱み蒐集 』

澱み蒐集 | あんしんするにおい (ameblo.jp)

講評:読み終わり間際、きっとこの作品の中で最も記憶に残るのは「かまぼこ」だろうという確信があって読み切った。でも実際には、たしかにかまぼこが頭に残りながらも、心にはやや強めに「一生懸命やったのに。」が残った。一生懸命やったのになんかぐちゃぐちゃになっちゃうのが人生だ。くるくる回りながら、丁寧にほぐしながら、ぐちゃぐちゃになってしまうのが私たちだ。だからもうすっかりかまぼこ食べたくなっちゃってる。だからもうすっかりかまぼこ食べたくなっちゃってる私が居る。それはきっと私が私なりに不器用なりにも一生懸命やっている証拠だよね。好きだ~。ふとした時にまた読み直したくなる作品。というか既に読み直したくなっているのでこれ書き終わったらまた読む。

ーー以下、締切後にご応募頂いた作品のため講評のみになり〼ーー

⑩只鳴どれみ 作 『シュー学旅行』

講評:いやもう最高。最の高の最&高でした。まじで好き。超気持ちいい。なんも言えねえ。最初から最後までずっと笑いながら読んじゃった。とにかく語感とリズムがむちゃくちゃ良くてこれは相当に良質なセンス。「は?」と「あ?」とあるいは繰り返しで刻まれるビートがめちゃくちゃ気持ち良くて心地よくて可笑しくて、何度でも声に出して読みたい、そう、こういうのが本当に声に出して読みたい日本語っていうものなんですよ。天才。まじで国語の教科書に載せるべき。どうして〆切時間間違えちゃったの…涙

⑪… 作 『あお』※web未公開

あお

空をあつめている
できるだけ多く
できるだけ深く
空をあつめているともだちにもらった
ふくろの中に閉じ込めて
季節が変わるまで窓辺に放置する

数カ月後、ふくろに隙間ができたら
体温であたためながら形を変えてゆく

引っ越したばかりなので足りないものを
いくらか成形して固まるまで昼寝をする

目を瞑る時にいつも私は眼球が丸かったことを思いだす
何かを見ているときの目はどこかの惑星のせいで
自分の形を忘れているそうだ

いかにも繊細そうに生きている人は 本当のあおをしらず
自分が鉱物だったことも忘れている

だったら私ももっと適当に生きてみようか

目が覚めて、だいたい固まったあおを並べて
記念撮影をしてから、
夕ご飯のおかずを買いに出かけた。

講評:はじめましての方、なのかも分からない匿名な方からのご応募。「締切後の提出なのでお目通しいただけるだけで嬉しいです」のメッセージと共に頂戴した作品でしたが、あまりにも私の感性と知識体系に似通っているので過去の自分から作品が送られて来たのかと思ってとても不思議な気持ちになりました。あなたは私…ではないですよね???笑
とても素敵な作品でしたので最後に載せさせて頂きました。書いて頂けて、読ませて頂けて嬉しかったです。ぜひ次回は本選に(/・ω・)/

以上、全作品講評でございました。

それではついに、優勝作品の発表です。
今回本当に悩みました。
でも選択しました。
誰かこの選択も芸術だと言ってくれ!!!

各賞概要

とその前に、各賞の概要は以下の通りデス。

「最優秀古賀賞」
・最優秀作品に与えられる賞で、今回の優勝作品です。
・嘘偽りなく真っ直ぐに私の胸を打った作品に授与します。
・読んで魂が震えたか、それだけで決めます。

「裕人賞」
・優秀作品に与えられる賞です。
・私の文学的琴線に触れた作品の中から、
・特に言葉や文章の面白さを重視して選出します。

🐸賞」
・優秀作品に与えられる賞です。
・私の文学的琴線に触れた作品の中から、
・特に構成や視点の面白さを重視して選出します。

本当は優勝作品だけに賞を授与しようとおもったのですが、あまりにも素晴らしい作品が多かったため、急遽優秀賞を2つ増設しました…!てへへ
大したものは贈れませんが、ぜひ気持ちを受け取ってもらえたら嬉しいです。

では……
結果発表ぉ〜!📣

【第1回】#古賀コン 受賞作品発表

第1回私立古賀裕人文学賞、受賞作品は以下の通りです👏👏👏

最優秀古賀賞:

 ハギワラシンジ 作 『繁殖のルール』

裕人賞:

 堀部未知 作 『そして耳たぶに触れる』

🐸賞:

 ki 作 『これは、なんだろう。』

わーーーッ!!!👏👏👏

受賞者の皆さま、おめでとうございまーーーす!!!👏👏👏

「最優秀古賀賞」には、ハギワラシンジさんの『繁殖のルール』を選ばせて頂きました。
理由はシンプル、普通に滅茶苦茶感動してガチ泣きしたからです。
まさか1時間制限の縛りがある中で泣くほど感動できる作品に出合えるとは想定しておらず、今回すべての作品は近所のタリーズコーヒーで読んでいたのですが、『繁殖のルール』を読んだ後はさすがに一旦店の外に出ました。
とにかく最高、素晴らしいのひと言。
思ったことを、伝わるように書く。自分のことを書く。という作文の原点を見たような気がするんです。
ジャン=ジャック・ルソーはあらゆるものを「透明」と「障害」で説明しましたが、『繁殖のルール』を通じてハギワラさんと私の関わりは確かに透明であったと断言できます。
全てが不確かなこの世界にあって、そればっかりは本当な気がするんです。
ひねくれ者の私ですが今回ばかりは手放しで称賛致します。
ブラボー、そして謝謝。

優秀作品のひとつめ「裕人賞」には、堀部未知さんの『そして耳たぶに触れる』を選出致しました。
講評にも書いた通り何度読んでもどこを読んでも面白く、堀部さんのワードセンスとスタイルに完全に惚れてしまいました。
私、自分が書いた作品って結構好きで何度も読み返しちゃうんですが、他人が書いた作品でそんな何回も読み直しちゃうことってほんと稀なんですよね。まじで好きです。
ぜひこれからも古賀コンにご参加頂きたいですし、そうでなくともwebに残っている堀部さんの作品は全て漁り尽くす所存であります。
今回ご縁を頂けたことに本当に感謝です。好きです。

優秀作品ふたつめ「🐸賞」には、kiさんの『これは、なんだろう』を選出致しました。
kiさんは今回募集をかけてからの瞬発力でいえば抜群の一番乗りで、それでいて狙いすましたような完璧な構成で作品を纏めて下さいました。
普段は創作家というよりはクリエイター寄りのお仕事をされていますが、バズらせ屋の本領発揮という感じで従来の文学賞にはない新しい風を感じられた部分も加点要素になりました。

今回、本当にすべての作品がハイクオリティで、各賞の選出にはかなり苦労をしました。
本当であればすべての作品に賞を出したい気持ちだし、まだまだそれぞれの作品の魅力を語り切れていません。
そこで繰り返しにはなりますが7月1日(土)21時~、Twitterスペースにて講評&振り返りトーク会を実施致しますのでぜひ聴きに来て下さい…!!

【第1回】#古賀コン後夜祭 @Twitterスペース

日時:2023年7月1日(土)21時00分~
場所:古賀裕人のTwitterスペースにて
テーマ:第1回私立古賀裕人文学賞講評&振り返りトーク
このnote内に書き切れなかった各作品への想いを語らせて下さい。
聞き専大歓迎!もし一緒に話してくれる方はぜひ上がって来て下さい(^^)/
まじで語り足りてないのでむちゃくちゃ喋りまくります!!!
各作品の魅力をもっともっと語り尽くしたいんだ私は!!!
ワイヤレスイヤホンの充電が切れるまでやります。←

おわりに

ここまでお読み頂いた皆さま、長々とお付き合いを頂きありがとうございました。
この私立古賀裕人文学賞、はじめてみるまではどうなるものか不安もありましたが、皆さまのお蔭様で本当に素敵な作品たちと出会え、また新たな世界を垣間見ることが叶いました。
この取り組みを応援して下さったすべての方に心より感謝申し上げます。

さてこの企画は年4回の開催を計画しております故、次回お会いできるのは本年9月頃かと存じます。

今回受賞された方はもちろん、参加頂いた皆さまも制限なく何度でもご参加頂けますので、またお会いできるのを楽しみにお待ちしております。
例によって急に告知しますので、ぜひTwitterの方をチェック願います。

また今回は応募を見送られた方も、ぜひ次回は参加してみて下さい。
参加してみようかなというあなたのその選択だけで、白米3杯いける私です。

2023年6月29日
古賀 裕人


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