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科学的に考える子育て - 勉強は子どもを幸せにするのしないの? -

ステラでも大変お世話になっている子どもの発達科学研究所の和久田学先生が新著を出したということで、早速読んでみました。

「科学的に考える子育て」という本書のタイトルにもあるとおり、「子育て」を科学的に捉える入門書と言える本でした。

私は、教育業界に身を置いて20年くらいになりますが、成功例などが属人的で、「それをそのまま持ち込んでも、うまくいかんやろ~」と思ってしまう事例に数多く出会ってきました。

例えば、○○先生の「東大医学部に自分の子どもを進学させた10の方法」とか。まずその先生がいて、そして、そこにその人の遺伝子を受け継いだ子どもがいて、その人特有の環境作りが前提にあるはず。なのに、そういったものをすっ飛ばして、10の方法だけ実践しても効果は何も得られない。受け売りで全部実践しようものなら、無理がたたって逆効果を起こす可能性もあります。私自身、このような場面をたくさん見てきました。

本書で書かれていることは、全て科学的知見に基づくことがばかりで、上記のような場面に出会うことなく、安心して読むことができました。具体的には、「勉強と幸せの関係」(第1章)や「ついつい叱ってしまうメカニズム」(第2章)、「行動を分析すること」(第6章)、「脳科学の話」(第8章)などについて科学的知見から分かりやすく書かれています。

特に印象的だったのは、勉強と幸せの関係。「勉強したら幸せになれるのか?」と問われれば、答えは「NO」です。親という生き物は、子どもの幸せを願って、ついつい「勉強しなさい」と言ってしまうものですが。。。

幸せに影響を与えるのは、認知スキル(いわゆる偏差値的なもの)よりも非認知スキル(自己効力感・社会性・自己コントロールスキル(忍耐力))の方です。確かに、勉強することで認知スキルは高まるけれども、そのために、自己効力感などの非認知スキルを下げていたら本末転倒です。勉強が元々得意ではない子どもをなんとか成績上げようとガミガミ叱りまくって、子どもの自己効力感を下げるくらいなら、むしろ、そんなことは諦めて、良好な関係を築くことに注力する方がその子の幸せに繋がります。

「幸せ」という一見科学では解き明かせなさそうなことにも科学的な分析があって、非常に納得感が高かったです。この他、行動分析(ABC分析)や脳の発達の話もあり非常に勉強になる本でした。

「教育」や「子育て」というものを科学的に捉えたいと思っている方にオススメの本です。

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