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障害って何だろう??ICF(国際生活機能分類)を使って考える

ICFモデル。国際生活機能分類と呼ばれるモデルで、今の福祉制度を考える上で根幹になっているモデルです。

このICF(上図)は2001年に世界保健機関(WHO)が採択したもので、それ以前は、ICIDH(国際障害分類、下図)を使っていました。このICIDHはひと言で言えば、障害はその個人に起因するという考え方で、医学モデルとも呼ばれます。

例えば、交通事故で歩けなくなった子の遠足参加を例にとってICIDHモデルを作ると、

となります。この図では、「遠足に参加できないのは、足が動かない子どものせい」となります。しかし、ICF以降は、障害というのはその人だけに原因があるのではなく、障害とは、「さまざまな要素が作用し合って生まれる『生活のしづらさ』」と定義され、環境との相互作用で決まるものと定められました。

考えてみればその通りで、足が動かないのであれば、車椅子に乗る練習をしたり、周りの子どもが協力してくれたり、車椅子でも行けるところを遠足の目的地にしたりすれば、遠足への参加は可能です。

先ほどICFの図を紹介しましたが、ぶっちゃけこのままでは分かりづらいです。そこで、理解を深めるため、以下にて、宇宙物理の分野で多くの成果を残してきたスティーブン・ホーキング博士を例にとって、ICFモデルを考えてみましょう。

ホーキング博士は、学生時代21歳の時に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、次第に全身の動きが不自由になり、移動は車いすとなり、手も動かなくなり、話せなくなり、飲みこめなくなり、呼吸困難になりました。一時期、うつにもなったというホーキング博士ですが、気持ちだけは持ち直すことができました。

上記の通り、個人要因としては、とても困難を極めました。しかし、環境が彼を支えました。

論文執筆時、顔のわずかな動きだけでPC入力ができるシステムが活躍しました。移動には、車椅子が活躍しました。講演会場では、車椅子で移動できるように配慮して導線がひかれ、ボイスシンセサイザーが文字を音声に変えてて会場に言葉が届けられました。そして、なにより、博士の研究成果や講演を待ち望む人たちの存在がホーキング博士の活動を支えました。

研究への情熱と多く人たちの支援により、ホーキング博士はALS発症後も精力的に研究活動を続け、2018年に惜しまれながら逝去しました。このように、障害は環境との相互作用で決まります。環境を調整したり、周りの人の意識が変化したりすれば、世の中から障害を減らすことが可能です。

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