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弁護士は足りない!

司法改革を語るには身に余ることは承知している

20年前頃,子ども福祉関係の現場でボランティアなどしながら,教育実習も行ったし,教育学部での学びを中心に,法律をかじり(家族法中心に!),そして,法曹を目指すことを決意した頃には,あまり実感がなかったが,それは,もう始まっていたようだった

すでに閉校してしまったが,愛すべき母校において記録されている12年史を参考にひも解いていこうと思う

司法改革を担ったのは、司法制度改革審議会である。1999(平成11)年に成立した司法制度改革審議会設置法2条は、司法制度改革審議会の役割をこう規定している。「二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的な施策について調査審議する」。ここに、国民が司法制度をより利用しやすくするために、国民自身が司法制度に関与し(裁判員制度)、また、国民の司法への参加を補助する「法曹」を充実強化する(法科大学院制度)という司法改革の二つの大きな制度改革のプランが、すでに示されている。
 司法制度改革審議会は、1999(平成11)年12月21日に「司法制度改革に向けて−論点整理−」を発表する。そこには、司法制度改革が「民法典の編さんから100年、日本国憲法制定から50年の今この時にあたって、司法に豊かな活力を吹き込むための根本的な制度改革」であり、また、「近代の幕開け以来、130年にわたってこの国が背負い続けてきた課題、すなわち、一国の法がこの国の血肉と化し、『この国のかたち』となるため」の改革であるとの認識が示されている。
 ところで、なぜ司法制度改革が必要なのであろうか。「論点整理」は、次のように述べる。「この国が豊かな創造性とエネルギーを取り戻すため」、「政治改革・行政改革・地方分権推進・規制緩和等の経済構造改革」がなされた。これらの改革によって、「国民一人ひとりが、統治客体意識から脱却し、自律的でかつ社会的責任を負った統治主体」となることがめざされている。しかし、そのような社会においては、ともすれば、国民の間でさまざまな紛争が起きる。その紛争を「公正かつ透明な法的ルールの下で適正かつ迅速に解決される仕組み」が整えられなければならない。また、政治改革・行政改革による「統治能力の資質の向上」が行き過ぎて基本的人権を損ねることのないようにしなければならない。そのために、司法の「制度的基盤の強化」と「人的基盤の強化」が喫緊の課題とされたのである。
 「論点整理」は、構造改革後に必要となる課題に対応するには、わが国の法曹人口が少なすぎると指摘する。しかし、問題は量だけではない。重要なのは、「21世紀の司法を支えるにふさわしい資質と能力(倫理面を含む)を備えた法曹をどのようにして養成するか」である。その役割を担うのに最も適しているのは大学であるとされた。こうして、「論点整理」は、次のように、法科大学院の設立を積極的に提言したのである。
 「法律家に対する教育の在り方が一国の法制度の根幹を形成する」といわれるように、古典的教養と現代社会に関する広い視野をもち、かつ、「国民の社会生活上の医師」たる専門的職業人としての自覚と資質を備えた人材を育成する上で、大学(大学院)に課された責務は重く、法曹養成のためのプロフェッショナルスクールの設置を含め、法学教育の在り方について抜本的な検討を加えるべきである。
 2000(平成12)年11月20日、司法制度改革審議会は、「中間報告」を発表した。中間報告は、「『法科大学院』(仮称。以下同じ。)を含む法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、計画的にできるだけ早期に、年間3,000人程度の新規法曹の確保を目指す必要がある、との結論に達した」と明言し、「全国的な適正配置」、「実務との融合」、「他学部、他大学の出身者や社会人等の受入れ」など、法科大学院の「制度設計の基本的考え方」を示したのである。
 中間報告の発表によって、全国の法学系の大学は法科大学院の設置を模索するようになる。信州大学も、その多くの大学のうちの一つであったのである。

司法改革が目指したもの

1 制度的基盤
(1) 国民がより利用しやすい司法の実現
○ 弁護士の在り方
弁護士へのアクセスの拡充
弁護士過疎への対応
・ 弁護士と隣接法律専門職種等との関係
○ 法律扶助制度の拡充
○ 裁判手続外の紛争解決手段(ADR)の在り方
○ 司法に関する情報公開・提供の在り方
(2) 国民の期待に応える民事司法の在り方
○ 裁判所へのアクセスの拡充
○ 民事裁判の充実・迅速化
○ 専門的知見を要する事件への対応
○ 民事執行制度の在り方
○ 司法の行政に対するチェック機能の充実
(3) 国民の期待に応える刑事司法の在り方
○ 新たな時代に対応し得る捜査・公判手続
○ 刑事裁判の充実・迅速化
○ 被疑者・被告人の公的弁護制度の在り方
(4) 国民の司法参加
○ 陪審制・参審制
○ 既存の司法参加制度の在り方
2 人的基盤
(1) 法曹人口と法曹養成制度
法曹人口の適正な増加
○ 法曹養成制度の在り方
・ 司法試験制度、司法修習制度の在り方
・ 大学法学教育の役割
○ 法曹倫理
(2) 法曹一元
(3) 裁判所・検察庁の人的体制の充実
3 その他
○ 司法の国際化への対応
○ 司法関連予算の確保

2001年に司法試験挑戦を思いつき,2002年から受験を始めた

最初は玉砕の連続ではあったし,個人的な事情で,半端なく足踏みすることとなり,元々他学部なのもあって,情報弱者そのもの,ロースクール型への移行など知ることもなかった

2004年から奮起することになって,2005年の司法試験に向けて全力疾走,短答試験こそ突破したものの,そびえたつ厚い壁にこそ触れて絶望だけ覚える

何年も浪人しても,あと一歩のところで合格しない現象を目の当たりにした

すでに,ロースクールが始まり,2006年には第一回新司法試験が実施され,理念どおりにはいかなくとも,旧司法試験に比べて大幅に上昇した合格率を示すことにより,「努力が実る試験」へと生まれ変わっていくように見えた

司法試験の受験に疲弊してはいたけども,2007年より信州大学大学院法曹法務研究科に私も入学することになる

2005年に開校していたので,3期生だった

あえて未修コースしかない地方の国立系で,学ぶことで,合理的な合格方法を知りたいということが,最終合格の目標に付随して自分の中にあった

都心の大型ロースクールにおいては,元々のハイスペックで若いパワー炸裂の最短合格モデルが量産されるだろうが,すでに浪人を重ねてきた自分にとっては興味がなかった

いかに効率よく,合理的な学びの中で無理なく合格するか,こそが,興味の要

好運にも第一子を授かり,待機児童問題とも無縁な地方の養育環境の恩恵に与りながら,育児とキャリアの両立を実践していく

保育園を利用する時間だけが,集中して勉強できるからこそ,効率よい学びができる

妊娠・出産と育児の両立の中での挑戦を果たすことで,次世代こそそれが通常の形として要求されることになる未来を想定すれば,その経験が役に立てることもあるだろうと期待していた

幸いにも休学することも退学することもなく,無事卒業し,受験資格を得た

2010年のことである

しかし,当初3000人の合格者輩出を想定されていたロースクール構想は,一度もその数字を実現することなく修正を余儀なくされ,せいぜい2000人強の合格者数にとどまっていた(現在は,1500人程度になっている)

単純な自分の実力不足が敗因だと考えているが,さらに浪人を重ねることになる

3000人構想を前提に,ロースクール生があふれている中で,2000人ずつしか受からないことになれば,挑戦者が滞留するのも自然であった

旧司法試験はしばらく細々と続いていたが,猛者たちだけが残る厳しい競争を諦めて新司法試験挑戦へと移行したはずが,結果として,同じく厳しい競争となった

それでも,2012年に合格する

3回目の挑戦で,それが当時の受験制度上最後の挑戦権によるものだった

なぜ,司法試験制度が目まぐるしい変動にさらされていたか

司法改革を成し遂げようとする理念と,それに対する半端ない抵抗勢力のし烈なせめぎ合いがあったことを,ただの浪人生としては知る術もなかった

2013年司法修習生

ご縁とは不思議なもので,司法試験合格後法曹になるまでに必要な司法修習において,実務修習中の弁護修習において直接指導してくださった恩師が,実は,この司法改革の担い手だった!!

その功績を知るのは,さらにまたずいぶん後になってしまうのだけど,数々の歴史的な闘いを繰り広げながらも,夢描いて,魂を込めて挑戦されていたことを知る

つづく



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