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子どもの平等を考える~国籍法事件1

読書感想文を掲載したいものなど、あふれていくが、本腰を入れて、重要な違憲判決に向き合うことにする。ボリューミーなため覚悟を要した。

平成20年の違憲判決があってこそ、相続分差別違憲判決、再婚禁止規定違憲判決と続いてきたように思う。大切な転換点だ。

平成20年6月4日の最高裁大法廷判決。

この頃、私は、間もなくお食い初め式を待つ乳児を育てつつ、ロースクールに通う日々で、目の前のレポート、テスト対策、育休中の夫(当時)との暮らしで精いっぱいで、タイムリーに検討することができていなかった。

絶望を味わった、非嫡出子差別(優遇されている方も差 別 はされているから、嫡出子差別と普段は呼んでいる)の闇深さ苦みがドロドロしくて、私は、結婚の魅力を一切失った。でも、当時「婚姻」していたのは、初めてのわが子の誕生を前に、まだ受験生という何も果たしていない、将来も見えない弱さでは、とても、太刀打ちできず、「わが子を思って」嫡出子となる結婚を選んだ。自分の中の差別を忌避できなかったのだ。相続分差別もまだ残る中で、それでも早くわが子を抱いてみたいという希望とのバランスと思えば、通称使用での別姓婚生活というのも受け入れられるものであった。

その嫡出子差別を切り崩していく契機となるのが国籍法違憲判決だ。

とても長い。連載を覚悟していく。

今日は、事案の紹介から。違憲判決をもたらした事件は2つあり、最終的に同日の違憲判決となった。時系列的に早く申し立てられた方から見ていく。


事案の概要

本件は,法律上の婚姻関係にない日本国民である父とフィリピン共和国籍を有する母との間に本邦において出生した上告人が,出生後父から認知されたことを理由として平成15年に法務大臣あてに国籍取得届を提出したところ,国籍取得の条件を備えておらず,日本国籍を取得していないものとされたことから,被上告人に対し,日本国籍を有することの確認を求めている事案である。

退去強制命令発付処分取消等請求事件の方だ。

父は日本人、母はフィリピン人、父母は婚姻していないが、父は認知し父子関係が法的にある。しかし、日本国籍取得が認められなかった。なぜか。

国籍法2条1号,3条について

 国籍法2条1号は,子は出生の時に父又は母が日本国民であるときに日本国民とする旨を規定して,日本国籍の生来的取得について,いわゆる父母両系血統主義によることを定めている。したがって,子が出生の時に日本国民である父又は母との間に法律上の親子関係を有するときは,生来的に日本国籍を取得することになる。

生来的に日本国籍を取得する条件は、出生の時に、父か母かがどちらか一方でいいので、日本人であること、という。分娩という事実によって、母子関係は出生時に親子関係が形成される。しかし、父子関係の場合は。。。問題の背景が見えてくる。

 国籍法3条1項は,「父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で20歳未満のもの(日本国民であった者を除く。)は,認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であった場合において,その父又は母が現に日本国民であるとき,又はその死亡の時に日本国民であったときは,法務大臣に届け出ることによって,日本の国籍を取得することができる。」と規定し,同条2項は,「前項の規定による届出をした者は,その届出の時に日本の国籍を取得する。」と規定している。同条1項は,父又は母が認知をした場合について規定しているが,日本国民である母の非嫡出子は,出生により母との間に法律上の親子関係が生ずると解され,また,日本国民である父が胎児認知した子は,出生時に父との間に法律上の親子関係が生ずることとなり,それぞれ同法2条1号により生来的に日本国籍を取得することから,同法3条1項は,実際上は,法律上の婚姻関係にない日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した子で,父から胎児認知を受けていないものに限り適用されることになる。

胎児認知でなければ、婚姻していない父母の間に生まれた子は、父の認知があるまで、父子関係が存在せず、すなわち、出生時には、親子関係がないことになる。生物学上「父」が日本人でも、法律上の父が不在となると、母が日本人でなければ、国籍の生来取得の要件である、父か母のいずれかが日本人という要件を満たさないことになる。準正すれば、国籍の取得が可能というフォローが規定されているが、はてさて。

原判決等

上告人は,国籍法2条1号に基づく日本国籍の取得を主張するほか,日本国民である父の非嫡出子について,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した者のみが法務大臣に届け出ることにより日本国籍を取得することができるとした同法3条1項の規定が憲法14条1項に違反するとして,上告人が法務大臣あてに国籍取得届を提出したことにより日本国籍を取得した旨を主張した。

主張は2つ。

父母は婚姻をしていないが、日本人の父の子ではあるのだから、当然、生来的に日本国籍を取得するだろうというもの。また、これを否定することを前提に、準正して嫡出子になった場合にのみ国籍取得を認めることは、平等原則に違反するというもの。

原判決、すなわち、高等裁判所では、違憲ではないと判断していた。1審では違憲判決がされていたことを覆したのだ。原告からみれば逆転敗訴という経過をたどる。

 これに対し,原判決は,国籍法2条1号に基づく日本国籍の取得を否定した上,同法3条1項に関する上記主張につき,仮に同項の規定が憲法14条1項に違反し,無効であったとしても,そのことから,出生後に日本国民である父から認知を受けたにとどまる子が日本国籍を取得する制度が創設されるわけではなく,上告人が当然に日本国籍を取得することにはならないし,また,国籍法については,法律上の文言を厳密に解釈することが要請され,立法者の意思に反するような類推解釈ないし拡張解釈は許されず,そのような解釈の名の下に同法に定めのない国籍取得の要件を創設することは,裁判所が立法作用を行うものとして許されないから,上告人が同法3条1項の類推解釈ないし拡張解釈によって日本国籍を取得したということもできないと判断して,上告人の請求を棄却した。

規定が平等原則に反する可能性を否定しなかった。とはいえ、今度は、立法作用との抵触が問題になると指摘している。あえて、敗訴判決として、最高裁の判断を仰いだともいえる。

司法が役割を全うするにも苦労することがうかがえる。

裁判官も各々意見を示している。じっくり研究していく。

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