緒方 胤浩

フードデザインリサーチャー|3Dフードデザイナー|『フードデザイン 未来の食を探るデザ…

緒方 胤浩

フードデザインリサーチャー|3Dフードデザイナー|『フードデザイン 未来の食を探るデザインリサーチ』(2022年、BNN)共著|https://kazuhiroogata.com/

マガジン

  • 「フードデザイン」をよりよく知れる本棚

    デザインやアートだけでなく研究領域なども対象に、フードデザインに関連した本を紹介します。

最近の記事

脱植民地化デザインを読む(1)

こんにちは、緒方です。 『Decolonizing Design: A Cultural Justice Guidebook』を読んだので、この本の概要を紹介します。 はじめに「脱植民地化」という言葉は、近年のデザイン(リサーチ)の動向において、重要なキーワードの一つになっています。そこで、脱植民地化デザインの中心的な存在である著者 Elizabeth (Dori) Tunstall 氏が何を語ったのか、原典をあたりました。日本のデザイン文脈でも少しずつ議論され始めているこ

    • グッドデザイン賞にみるフードデザイン事例5選

      こんにちは、『フードデザイン』の緒方です。  今回は過去のグッドデザイン賞を振り返り、フードデザインの視点から特に興味深いと感じた製品やサービス、プロジェクトをいくつかピックアップして紹介します。サステナビリティに関連する取り組みが1990年代から実践されていたことを再認識し、再評価するという内容になっています。 バナナ・ペーパー・プロジェクトまず一つ目は、2003年にエコロジーデザイン賞を受賞した「バナナ・ペーパー・プロジェクト」です。これは、バナナ生産時に廃棄されるバナ

      • ポートフォリオサイトのCO₂排出量を約99%削減しました

        みなさん、こんにちは。今回はフードデザインから少し離れて、自分のポートフォリオサイトを改善した話について書いていきます。特に難しいことはしなかったので、ぜひみなさんにも試してもらえればと思い、記事にしてみました。 きっかけ最近は個人的に興味のあるイベントがたくさん開催され、とても刺激的な毎日です。その中で、イギリスのデザインカウンシル主催の「Design for Planet Festival 2023」での講演をきっかけに、自分自身のポートフォリオサイトをサステナビリティ

        • 未来の食と農業のデザイン展「SPACEFARMING」に行ってきました!

          先日、オランダのアイントホーフェンで開催中の展覧会「SPACEFARMING」に行ってきました。本記事では、展示の内容をお伝えすることで、フードデザインの面白さや魅力をお伝えできればと思います。 はじめに今回訪れた展覧会「SPACEFARMING」は、宇宙での食糧生産の可能性を探るとともに、その知見を地上での生活向上に応用する手法を提案していました。この展示では、科学者から技術者、農家、デザイナー、哲学者、生産者、アーティストまで、多様な専門家たちのアイデアやイノベーション

        脱植民地化デザインを読む(1)

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        • 「フードデザイン」をよりよく知れる本棚
          12本

        記事

          フードデザインいまむかし|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。  今回は、フードデザインのど真ん中ではないですが、1960年代に食べものをデザインの対象のように捉えてエッセイを記していたブルーノ・ムナーリから、フードデザインのど真ん中で界隈を牽引してきたマルティ・ギシェの最新作、そしてフードデザインをテーマにした最新の展覧会図録、この3冊を紹介します。  これまで同様、ここでフードデザインは、デザイン文脈に軸

          フードデザインいまむかし|フードデザインをよりよく知るための本

          フードデザイン/アート/カルチャー2|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。  今回はフードデザイン/アート/カルチャーの書籍を紹介する後編の記事です。中期的なフードデザインの歴史において取り上げられるDaniel Spoerri(1960年代にEat Artのムーブメントを主導した)や、短期的な歴史に大きな影響を与えたエル・ブジのクリエイティブチームメンバーのひとり、Luki Huberなどの作品集を取り上げつつ、食とデ

          フードデザイン/アート/カルチャー2|フードデザインをよりよく知るための本

          フードデザイン/アート/カルチャー1|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。  今回はこのシリーズ最後のトピック「フードデザイン/アート/カルチャー」についてです。なぜこれらのトピックに注目するかと言うと、既存の食を見つめ直し、新たな食に向き合うために重要な側面だからです。  最近話題になった「マイコプロテインを主原料とした、3Dプリンタで作られる代替サーモン」のように、科学技術の進展によって新しい食のあり方が急速に現れる

          フードデザイン/アート/カルチャー1|フードデザインをよりよく知るための本

          フードデザイン事例集|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。  食とデザインの文脈における取り組みだけでなく、食をデザインすることを考える上で学ぶべき事例は数多くあります。その土地での気候に沿った食材の加工方法や、食を起点にした都市計画、ひとつの食材を様々な角度で掘り下げる方法、食材を調達する方法、食のために作り出されてきた道具、持続可能性のために取り組むレストランなど、過去と現在のフードデザインを知るため

          フードデザイン事例集|フードデザインをよりよく知るための本

          フードデザイン作品集|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。  今回はフードデザインの作品やプロジェクトを掲載する書籍を取り上げます。1冊目と2冊目はすでに世にある食に関する製品やパッケージ、空間の中でどのようにデザインが活かされているのか?という視点から、結果としてのフードデザインの姿が描かれています。その後、フードデザインの考え方に従って取り組まれたプロジェクトや、その成果物としての作品やコンセプトモデ

          フードデザイン作品集|フードデザインをよりよく知るための本

          フードデザインリサーチと周辺研究領域|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。  今回は少し目線を変えて、フードデザインの学術的な側面に触れていきます。そういう領域が存在するんだな!ということをお伝えできればと思います。ただし、前回紹介した日本国内における栄養学や家政学を中心としたフードデザインの研究ではなく、デザイン分野から広がったフードデザインの研究について取り扱います。  ここでフードデザインリサーチとは、デザイン理論

          フードデザインリサーチと周辺研究領域|フードデザインをよりよく知るための本

          日本におけるフードデザイン|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。  これまでは主に欧州で展開されていたフードデザインに注目してきましたが、今回は日本におけるフードデザインに焦点を当ててみます。 選書〈日本におけるフードデザイン〉日本においては、家庭科の一科目としてフードデザインという言葉が使われています。  この言葉が家庭科の内容に組み込まれたのは、平成10年(1998年)に告示され、平成15年(2003年)

          日本におけるフードデザイン|フードデザインをよりよく知るための本

          フードデザイン展覧会カタログ|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。  これまでが比較的個人のデザイナーに注目していましたが、今回はデザイナーの作品やプロジェクト、インスタレーション、あるいは実装された事例などを幅広く取り扱った「フードデザイン」をテーマにした展覧会のカタログを紹介します。 選書〈展覧会カタログ〉ちなみに、今回も紹介する書籍から引用文をいくつか取り上げていますが、これらの引用を通じて、フードデザイ

          フードデザイン展覧会カタログ|フードデザインをよりよく知るための本

          フードデザイナー第2世代|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。  デザイン文脈におけるフードデザインは基本的にヨーロッパを中心に広がっているため、第1世代のデザイナーたちはオランダやスペインなどで活動する人々に限定されていました。  しかし、2010年以降に活躍し始める第2世代のフードデザイナーたちは、欧州のみならず、南米や台湾などを拠点にして活動しています。今回紹介するうちのひと組 UOVO Food De

          フードデザイナー第2世代|フードデザインをよりよく知るための本

          フードデザイナー第1世代|フードデザインをよりよく知るための本

          はじめに先日発表された「食文化デザインコース」開設のニュース、みなさんはもうご存知でしょうか。ついに国内の芸術大学で「食」を本格的に学べる日が来たことにとても感銘を受けています!完全オンラインとのことで、味や香りを間接的に伝え合う必要があるため、なおさら表現力が鍛えられそうですね。  国内でフードデザイナーとして長く活動されてきた中山晴奈さんや、分子調理をはじめ、新しい食の研究を牽引する石川伸一さん、世界中の台所を巡り各国の暮らしや社会の姿を発信する岡根谷実里さんなど、日頃か

          フードデザイナー第1世代|フードデザインをよりよく知るための本

          3Dプリントフード初(?)のレシピブックを公開しました2

          今回の記事では、前回に引き続き「デジタルフードデザイン」に関する取り組みをまとめたレポートの内容を紹介します。 はじめに私はフードデザインリサーチャーとして、エスノグラフィー調査やワークショップを通じてユーザーの発話や行動を分析し、ありうる食体験を探求してきました。  今回ご紹介するような作品群は、デザインしたものを通じて議論を促すことを目的としています。予測と言うには粗末なものですが、「こんな未来もあり得るのでは?」という食に関するシナリオ(仮説)を、写真や3Dモデルで表

          3Dプリントフード初(?)のレシピブックを公開しました2

          3Dプリントフード初(?)のレシピブックを公開しました

          今回は、昨年度の「デジタルフードデザイン」に関する活動をまとめたレポート兼ポートフォリオをご紹介します。 はじめにこの冊子は、2022年夏に企画・運営を主導したサマースクール「School of Food Futures」(主催:京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab|運営協力:MTRL・FabCafe Kyoto)の内容に加え、関連イベント「チョコレートフューチャーズ」と「お花見フューチャーズ」の内容を盛り込んで作成したものです。 第1部では、サマースクールの

          3Dプリントフード初(?)のレシピブックを公開しました