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不思議なきもち

次女が電車で通学している。学校帰りに友人と遊んで帰る。そこは僕も青春時代を過ごした場所で、なんとも言えない不思議なきもちになる。

僕は私立受験の時にワザと筆箱を忘れた。なぜなら受験校は女子校で合格したら困るからだ。当時、私立はほぼ男子は男子校、女子は女子校だった。僕は女子所属だから当然女子高。受験日、隣の席の女の子が筆箱を忘れた僕を察して予備の鉛筆と消しゴムを貸してくれた。とんでもなく良い人だった。


そして僕は女子校に合格してしまう。
これは大変な事になった。

正直焦った。もし公立落ちたら女子高に入れられる。そんな事になれば、その先一生女子校がついてまわるのだ。ありえない。だが、受験勉強をしていなかった僕にはなす術がなかった。

ただ、僕は中学の時に剣道をしていてその地域ではそこそこ強かった。公立2校から話がきたりしていたが、高校そのものに行く気がなかった僕は早々に断っていた。あの時推薦で行っておけばと後悔したが、剣道自体もする気はなかったのだ。もう、制服着る事も女子として扱われる事もどうしても嫌だった。

しかし、剣道をしていたおかげで公立校に合格した事を知る。入学前に顧問から練習に来るよう言われ、どれだけ拒否しようとも逆らえないそんな時代だった。子供に拒否権はない。家の前に顧問が迎えに来て「防具を持ってこい」と。

女子校よりマシだと言い聞かせて入学したが、可愛い制服を着る事がもう無理だった。中学まではまだ我慢できたが毎日が嫌で、ほぼ毎日遅刻した。過敏性大腸炎や自律神経失調症とも言われ、食べれなく163センチで40キロまで落ちた。

「思春期だから」と医者はいう。
「女の子だから」と医者がいう。

体力も気力もなくなる。
1年レギュラーに選ばれた僕は春の公式戦に出た。そこで中学の時の監督らも見に来ていた。辛うじて成績を残す僕に「剣道が変わったな(弱くなったな)」と言った。自分でもわかっていた。筋肉も気力もない。

「すっかり腑抜けやがって!!!」
顧問の裏拳が僕の顎に命中する。
そらそうだろう、成績残すために入れた選手は全くやる気がない。

入学してすぐのオリエンテーションである泊まりのキャンプすら、試合で行かせてもらえなかった。

そんな時代。

「退学します」と親と担任に言った。
もちろん無理なのだ。校長室に呼ばれ延々と将来の話を聞かされる。家には部活の先輩の親までくる始末。「3年生を押しのけてレギュラー取ったんだから責任もちなさい」と。

逃げ場はない。

そんな時、彼(揺れる思春期をー)が中学の時に使っていた防具を一式くれた。もらった男子用の道着をきて、凛々しい胴をつけた。なんだか剣道している時だけは解放された気になった。

そんな息苦しい高校生活の合間に、彼や友人が連れ出してくれた思い入れのある街。そこで次女は友達と過ごしている。

不思議なきもちにさせられる。
次女にとっても大事な高校の思い出になればいいなぁと。





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