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妻は僕に「存在してくれるだけでいいよ」という

僕はどうも一目惚れ体質なのか、彼女(身を引き裂かれる)をあんなに引きずっていたが、あっさり妻に一目惚れした。

初めて妻と出会ったのは仕事関係からだった。少し特殊な仕事なので詳細は控えるが、穏やかな物腰で柔らかい印象を受ける言葉使いの奥に今からチャレンジする企画を話す時に見せたプロフェッショナルな姿に惹かれた。

だが、何回目か会ったときに娘たちの存在を知る。既婚者だったのか。と落胆したが、その時まであれだけ引きずっていた彼女の存在を忘れていた事に気付き、単純に彼女を超える存在が出て来た事に嬉しく思った。

妻は既婚だから諦めようと思い、セフレじゃなく、誰かとデートをし、時間を共有する楽しさを感じる事ができるようになっていた。

そんな中も妻とは仕事で会っていた。ある日、僕がなぜ店をしようと思ったのかを話す必要があった時、僕は僕のGID問題を話さなければ、飲食店を始める本当の気持ちは伝えられないと思ってカミングアウトした。妻がどう答えたか忘れてしまったが、僕はどんな思考を経て、飲食店という答えを出したのかを知ってもらいたかった。

僕は自分のカミングアウトから一層妻に気持ちが動く。ある時旦那さんの話が全く出ない事に気付きそれとなく聞いてみると、なんとシングルだった。子供がいた事だけで既婚者だと早とちりをしていただけだった。

この恋は全く問題ないと思った僕は止まらなかった。妻に猛アタックし、付き合う様になり、子供たちと一緒に遊びに出かけるようになった。

愛する妻が子供たちに接する母の姿に深い愛情を感じた。目の前に家族がいる。その中にいる僕は家族の一員になれているような錯覚を覚え、自然と僕はそこにいたいと思う様になった。

同時に妻が僕に注ぐ愛は、今までに感じた事ない様な深く優しい気持ちで、僕が持っていた不安を打ち消していく。大事に慈しまれる言動になれていない僕は受け止め方を知らない。戸惑う。しかし失いたくない思いから逃げる事をやめ、ひとつひとつ自分の言葉にして伝えるようになった。妻と向き合うというより、自分自身の気持ちと向き合う感じかもしれない。

そして僕も愛情深い人間だったんだと知る。受け止めることができる様になり、今度は際限なく愛することができるようになっていた。
相手に求めなくても満たされていく事がこんなに幸せな事なんだとわかった。

この関係を続けるために、子供たちの気持ちを最優先に考える事を常に意識した。子供と妻は一心同体みたいなもんで、妻が苛立てば子供は荒れる。子供に何かあれば(小さいほど何もない日はない)妻は大変でいっぱいいっぱいになる。

ただの彼氏の僕にできることは限られていて、少しずつ子供との関係を作り、信頼してもらう事に努めなければならない。その積み重ねの日々の先に僕にできる事が生まれる。
全ては妻が大事な存在だから、妻が大事にしているその子供自身の未来を考えてきた。

そして妻と入籍し、子供と養子縁組し法的に養父となった。僕が夫になり父になるなんて。


妻が先日誕生日を迎えた。今年もプレゼントを2つ用意した。ひとつは毎年欠かさず贈る色とりどりの紅茶。もうひとつは一年妻を見続けて妻が喜んでもらえる物を。

今年の妻から「毎年幸せが大きくなってる」と返事をもらった。

そんな事言ってくれるからこの先も僕は毎日妻の言葉と気持ちを聞いていく。

僕は今、妻の大きく深い愛情の中でぬくぬくと生きてる。




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