古川は10年前、被災した和歌山を訪れた日に中上健次の ルポルタージュ『紀州』から「和歌山」の項を繙いて(それは今朝、四月十三日のことだ)、以下の記述に出喰わし、ほとんど絶句状態に入る。 著者は有田に突発したコレラ渦に触れている。 〈東京に住む私の元に送られて来た紀南新宮の地方紙の広告欄に、「県内の野菜は一切扱っておりません」と太字で文句が刷られていた。その時、和歌山県ナンバーの車は他県のドライブインに入るのを拒まれたとも、どちらから来ました? と人に訊ねられて、和