あゆみ野クリニック

私は都会に移った方が良いという忠告はしばしば聞きます。それは事実です。JAMAに日々目を通しているとか、中医学が得意だと言っても、石巻の開業医としては一文にもならない。そういうことは、大都会でこそ評価されるのです。

しかし当院は「あゆみ野クリニック」です。あゆみ野にあるからあゆみ野クリニック。一見平凡なネーミングですが、「あゆみ野」はまるごと震災復興地区です。つまりあの大震災で家を流された人々だけが住むところです。当院はそこの唯一の医療機関なのです。

当院の大家さん、私が言う「阿部の爺さん」はこのあゆみ野駅前の土地をかっちめた時、色々な店に声を掛けたそうです。スーパーとかコンビニとか。しかし全部断わられたそうです。

「あゆみ野の家は新しくてきれいだが、全員が被災者だ。つまり貧しい。貧しい人しかいないところに店舗は作れない。経営が成り立たない」。

私は自分自身であゆみ野クリニックをやってみて、その意見はまさにその通りだと実感しました。スーパーやコンビニが展開出来ないところは、クリニックもやれない。スーパーもコンビニもクリニックも、「人相手」ですから。そこに住む人が貧しくて買い物にも来れない場所では、クリニックも厳しいのです。

どうか石巻の皆さん、当院に来て下さい。私は内科全般はもとより、認知症を始めとする高齢者医療と漢方のエキスパートです。こういう分野においては他の医者には負けません。しかし当院の基本的なスタンスは「震災復興地区あゆみ野にあるたった一軒の医療機関」です。しかしそれを存続させるためには、石巻市民はもちろん、多くの方々のご支援が必要なのです。当院は民間施設です。市から補助金を貰って運営しているのではありません。だからこそ、市民の協力なくしては存続出来ないのです。震災で家を流された人々のために作られた町「あゆみ野」。そこのただ一軒のクリニックを存続させるために、市民の皆さんのお力を貸してください。皆さんが受診してくれればよいのです。なんでもいいから受診してくだされば、私が出来る治療はやりますし、これは別の専門医に紹介すべきだと判断すればそうします。

私は、あゆみ野の人が必要と思ってきたら、何でも診るのです。風邪引いた、熱出した、転んだら膝が痛い、刺身食ったら蕁麻疹になった・・・全部診ます。自分がやれそうなら自分で治療するし、これは専門医に紹介と判断したらそうします。ともかくここは、あゆみ野の「医療の窓口」なのです。

私が諦めたら、あゆみ野から医療機関は消えます。このクリニックは私で三代目です。私が投げ出したら、もはや誰もここを継ぐ医者はいません。どうかお力添えしてください。当院を御受診ください。

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