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言葉はなくとも

ぼんやり考え事をしている時に温かく体に触れるもの。気づくと2匹の猫がいつのまにか両側に寄り添っていた。
「どうしたの?」と私に尋ねることもなく無言のままで。

でも彼らの体から「よかったら撫でてもいいんだよ?」のオーラが出ているので、その湿った鼻先に頬を寄せる。ふわふわとした柔らかな胸にたっぷりと顔をうずめる。
ひなたのいい匂い。ぷにぷにした癒しの肉球をそっと握り、その体を抱きしめる。
されるがままを許してくれる愛しい者たち。

自分も無言のまま猫たちの顔にゆっくりと指を滑らせる。ざらざらとした舌で私の指を舐め、喉を鳴らしながらの甘噛みはキュッと仄痛い。
そこに言葉はなくても「君が好きだよ」というありがたい幸せなメッセージが伝わってくる。
言葉のない世界も悪くないかもしれない。

でも無言は時に、いかなる暴力より暴力になることを知っている。どんな言葉よりも深く人の心を傷つけることも...
そう、そんなことをぼんやり考えていたところだったのだ。

♬目を閉じて浮かべた密やかな逃げ場所は
 シチリアの浜辺の絵ハガキとよく似てた

 猫になりたい 言葉は儚い
 消えないようにキズつけてあげるよ

        スピッツ『猫になりたい』

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