第20球 プロ野球選手の少年時代 外野手編

 皆さま、こんにちは。広島アビーズの丘野 高士(おかの こうじ)です。奥野さんからの指名で今回のエッセイは僕が担当します。
 奥野さんと言えば! 今年の交流戦で僕はセンターを守っていたのですが、ホームで奥野さんを刺せず、しかもその得点が決勝点になってしまったこともあって、すごくすごく悔しかったんです。奥野さんの走塁が上手いというのは知っていました。映像も確認して、ちゃんと用意していたつもりでした。……来季はつもりじゃなくて、しっかり結果でお見せできるようにがんばります!

 プロ野球選手の少年時代という共通テーマでエッセイを書くのも今回の僕で最終回です。(リレーエッセイ自体はもう少し続きますよー!)
 最終回、オオトリ、なんか、緊張しますね。と言っても、なんかすっごい文章が読めるなんてことはないので、いつものテンションでお読みいただけたらと思います。

 奥野さんは子供の頃からぽっちゃりだったという話をしていらっしゃいましたが、僕は子供の頃から小さかったんですよね。それで名前が高士とか、何度も突っ込まれて……今よりあと10センチは高くなってもよかったはずなんですけど、なぜか伸びなかったんですよね。

 埼玉ネオゼフィルスに氷口(ひぐち)って選手がいるんですが、あいつが今プロ野球界では一番小さくて、僕は氷口の次に小さいです。そういう縁もあって、氷口とは2年前のオフに声をかけてたまにご飯を食べに行く仲になったんですが、あいつ、あんまり自分のこと話さないんですよ。聞けばちゃんと話してくれるんですけどね。それで氷口も僕と同じように、大きなやつには負けたくないっていう気持ちはやっぱりあって、リーグは違うけど、それぞれの場所で自分たちにしかないものを出していこうぜみたいな話はよくしています。

 なので、最初に言っておきたいのは、小さいのを理由にプロ野球選手をあきらめることだけはしないでほしいということです。むしろ、それを武器にしてプロを目指してほしいと思っています。そりゃあ僕も、デカいやつにあこがれました。もっと大きかったらすべてのことがもっと上手くできたんじゃないかって思ってばっかりでした。でも、ぶーたれていて身長が伸びるわけじゃないし、だったら負けないよう練習するしかないじゃん! と気持ちを奮い立たせてやってきました。

 僕は元々内野手だったのですが、必要以上に走りまわっていたからか、あるときから外野を任されるようになり、その守備範囲の広さ、というか外野の広さになぜかテンションがあがって、あっち(ライト)にこっち(レフト)にボールを追いかけまくっていました。今思うと、レフトとライトの選手には申し訳ないことしたな……と思うのですが、走れるのがすごく楽しくて、どんな打球が来ても捕ってやるという気持ちでいつもいました。

 小さいと足が速いってイメージありませんか? 自分で言っちゃいますが、僕はそのイメージ通り足だけは速くて、これだけはチームの誰にも負けないという自信がありました。小さいと他の選手に埋もれて見てもらえないんじゃないかという不安もありましたが、何か、どこか、一つでも抜き出たものがあれば、それを見てもらえればもしかしたら、という希望を僕は持ち続けました。

 結果、僕は走り続けて良かったと思えるチャンスをいただきました。それが、ドラフト会議での広島アビーズからの6位指名です。ドラフト上位指名にこだわる人もいますが、確かにいろんなことを考えたら上位のほうがいいのは当然ですし、下位指名は博打みたいなところもあるかもしれません。それでも僕は、こんな小さな僕でも、見てくれて、指名しようと考えて、本当に指名してもらえた、という事実が本当にうれしくて、指名がわかったときはふるえました。

 でも、入団してすぐ、体力の違いを痛感させられました。以前のエッセイで北海道レインディアの岩川さんも書いていましたが、体力ってマジ大事です。これがないと何にも始まりません。同じルーキーでも、ここまで違うのかってくらい、僕には体力がありませんでした。それなりにあるつもりでいたので、新人合同自主トレは本当にいろんな意味で目からウロコでした。だからといって、あきらめたり絶望したりなんてことはしませんでしたよ。小さいからおまえにはまだ無理、と言われるのだけは悔しくて嫌だったので、必死でした。必死に食らいついて、なんとか一軍の試合に呼んでもらえるようになりました。
 でも僕はまだ、一軍に定着したといえる選手ではありません。ケガでもしたらすぐに今の場所を失う。だからケガが怖い。でも、怖いと言って怖じ気づいていたらなにもできない。とにかくやる。いまできることをしっかりやる。それは子供の頃からずっと変わらない気持ちです。

 小さくてもいいじゃないか。小さいというのはそれだけで武器になる。それをこれからの僕のプレーで見せていけたらと思っています。

 それでは、次回のエッセイもお楽しみに。
 広島アビーズの丘野高士でした。

◇丘野高士プロフィール◇
広島アビーズの内野手として今季68試合に出場。俊足を生かした広大な守備範囲でスポーツ番組のファインプレーコーナーで何度もそのキャッチがピックアップされた。来季は課題であるバッティングを克服し一軍定着、レギュラー奪取を狙う。

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