多面世界への通行


梅雨の狭間に
季節外れの肌寒さ
しかし木々や花々は後戻りができず
ちぐはぐな印象を与えながらも
時間によって変化したその体を震えながら晒す

形だけを
ただ形だけをください
それでほとんどの場合問題なく
自分を保ち、人を騙して
心はそこになくても
私は私で成立するのだから

どうせ皆中身など見ていない
あるいはわかりやすく与えられたその一部
それを己の、あるいは他者の全てと錯覚し
二次元世界の窮屈さと安定の中に溶けゆく

奥行きもなければ重みもない
質感もなければ温度もない
それがあなた方の場所なのだ
僕がもがいているこの愛おしき
痛みに満ちた重苦しい世界へは
決して目に見えない魂というものだけが行き着けるのだ

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