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アラオス「オンボーディングの秘訣は臓器移植に学べ」

アラオスの著作 It's Not the How or the What but the Who からオンボーディングについて語った第24章を抄訳して紹介したい。関心を持った向きは、マイケル・ワトキンスの『ハーバード流マネジメント講座 90日で成果を出すリーダー』や、ニアム・オキーフの『あなたは最初の100日間に何をすべきか』を手にとっても良いかもしれない。

この世界では何千もの患者が日々臓器移植手術を受けている。その何倍もの人々が、リスト待ちの状態だ。ようやく移植を受けることができたとしても、異物を排除しようする拒絶反応の脅威に晒されることになる。

医師は成功を確約することはできないが、失敗のリスクを低めるために、主に3つのことに取り組んできた。(1)移植する臓器の健康状態をチェックすること、(2)適合性を確認すること、(3)術前、術後にきちんと適応が進んでいるかモニターし、そのプロセスを支援すること、この3つだ。

中途採用で新しい人物を迎えた時、あるいは誰かが異動・昇進し新しいポジションに就いた時に発生するリスクも似たようなものだろう。必要となる対処法もまた同様である。

良い人を見つけること、内定を承諾してもらうことへは強い関心を持つ経営陣が、この統合のプロセスになると途端に興味をなくしてしまうのは、その重要性を鑑みれば奇妙なことだ。見つけ、迎え、活躍してもらうまでがプロセスの全体なのだから、全体を締めくくる統合、オンボーディングに対しても同じくらいの関心と、それに対応する相応しい予算をつけるべきだ。力のある優秀なタレントを迎えて、傷つきやすい脆弱な状態のまま放置することのコストを考える必要がある

ここでルーヴェン大学病院、ピエール・デレアの革命的なアイデアを紹介したい。デレアは、移植に際しての拒絶反応を抑えるため、ドナーの器官をレシピエントの腕にまず埋め込み、数ヶ月した後に、頸部に移植したという。このアイデアからあなたが学ぶべきことは多いだろう。

ある著名なプライベート・エクイティ・ファームの幹部に、彼らの成功の秘訣を尋ねたところ、経営陣を刷新した後に続くプロセスだという回答が返ってきた。彼らは、投資を実行した後、1年間にわたって毎週、主要な経営幹部と進捗を確認し、刷新に伴う統合の支援・補佐を行うという。新たに迎えた幹部に対してはPE側のマネージング・ディレクターとのランチミーティングを月に1回開催しているとのこと。そのプロセスは手間だろうが、臓器移植後のケアの複雑さに比べれば容易なものだろう

(後記)特に幹部の採用に当たっては、いきなり、事業部長などのポジションに就かせることが最適ではないこともあるだろう。社長室や経営企画部などの、全社を見渡すことができ、かつ、業務上、各部署のステークホルダーとの交流が自然と発生するようなポジションに半年から1年程度就かせた上で、当初想定していたポジションにスライドさせていく、というのも一つの手だろうと思う。これがあまり悠長だというなら、入社前のプロセスを相当程度入念に設計しないといけない。

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