最近の記事

キブラー他「燃え尽きていく社会的企業家たち」

まず、簡単に要約したい。社会的企業家の多くが、ビジネス上の目標達成と、意義ある貢献を実現することとを両立しようとする中で、多くの責任を背負いこみ、過度な多忙に自らを追い込んで、家族との時間や十分な睡眠を得ることができなくなっている。 このジレンマを解く鍵は、自律性にある。いつ、どこで、どのようにして事業に取り組むのかを、自らの意思で決めることができるかどうか。しかし自律性を維持することは難しい。創業初期や規模の小さな組織では、事業継続性を単独のクライアントに依存しており、彼

    • アラオス「人材採用の手引き 決定版」

      恒例のアラオスの論文抄訳。『人選力』の要約となる、やや長めの論文。 (1)ニーズを予測する。欠員対応として都度採用活動を行うのではなく、常時、積極的に、将来発生しうる採用ニーズを予測しようと努めること。重要ポジションについては後継者候補の母集団形成の状況を常に把握・評価すること。事業戦略とひもづいた中長期の採用ニーズ予測を定期的に行うこと。 (2)職務内容を特定する。当該ポジションに求められるスキルや経験を特定し、詳細な職務記述書を作成すること。その際に、当該ポジション

      • アラオス「人材は潜在能力で見極める」

        恒例のアラオスの紹介。数年前に作成した記事の要約を再掲したい。元の記事は、事例を交えつつの長めのもの。関心を刺激された向きはそちらにも当られたい。 一つ、アラオスに同意しかねる点があるとすれば、それはレファレンスの重要性の点。レファレンスはスクリーニングには利用できても、アセスメントには適さない。正しくレファレンスを行うことのできる人間は非常に稀であり、職務経歴書の内容に虚偽や誇張がないか、ということ以上の何かを元上司や元同僚、共通の知人に期待することは、アセッサーとしての

        • マレンウェッグ「オーディション採用のすすめ」

          以前、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューのウェブサイトにて、ワードプレス・ドットコム運営会社オートマティックの創業者兼CEO、マット・マレンウェッグによる、同社の選考プロセスに関する紹介記事が一時的にだが公開されていた。ぜひ一読を薦めたいのだが、公開期間が終了してしまっている。関心のある向きはぜひ元の記事にあたられたい。HBRは月3本までは無料で読めるので、英語が読めるのであれば2つ目のリンクを参照してほしい。 備忘録がてら、要約とコメントとを残しておきたい。本

        キブラー他「燃え尽きていく社会的企業家たち」

          アラオス「オンボーディングの秘訣は臓器移植に学べ」

          アラオスの著作 It's Not the How or the What but the Who からオンボーディングについて語った第24章を抄訳して紹介したい。関心を持った向きは、マイケル・ワトキンスの『ハーバード流マネジメント講座 90日で成果を出すリーダー』や、ニアム・オキーフの『あなたは最初の100日間に何をすべきか』を手にとっても良いかもしれない。 この世界では何千もの患者が日々臓器移植手術を受けている。その何倍もの人々が、リスト待ちの状態だ。ようやく移植を受ける

          アラオス「オンボーディングの秘訣は臓器移植に学べ」

          ジェフリー・コーン「PEに学ぶCEO選定基準」

          プライベート・エクイティ・ファームのパートナー32名を対象とした、CEO選定基準に関する調査結果を紹介する記事。簡単に意訳・抄訳したい。結論は極めて常識的だが、自らの評価の仕方を反省するにはよい材料となるかも知れない。 パートナーが経験を積む中で、過大評価しがちだったと振り返るのは、前職における実績、同一産業・同一ドメインでの経験、アグレッシブさと執念・根気、IQ、自信とカリスマ性、学歴や職歴上のネームブランド。 前職における実績については、それが本当にその個人の努力によ

          ジェフリー・コーン「PEに学ぶCEO選定基準」

          サリヴァン「テクノロジーの進展が採用にもたらすものとは」

          テクノロジーにより日常的な採用業務の大半が代替されつつある中、戦略的な採用のあり方は今後どうなっていくのか。ジョン・サリヴァンの応えは「人材に関するコンサルティング」にある、というものだ。 国内でもソフトバンクやユニリーバが新卒採用業務にAIを導入したことがニュースになったが、簡単なレジュメ・スクリーニングの他、日程調整や候補となる人物のリストアップなども代替されてしかるべきだろう。HireViewというアメリカではメジャーな動画面接プラットフォームがあるが、あれはゆくゆく

          サリヴァン「テクノロジーの進展が採用にもたらすものとは」

          アラオス「教皇選挙に寄せて:コミュニティのトップをいかに選び出すか」

          エゴンゼンダーのシニアアドバイザーをつとめるクラウディオ・フェルナンデス・アラオスの最新刊より、第44章「教皇」を紹介したい。2013年のベネディクト16世辞任のニュースを耳にしたアラオスは、カトリック信徒として、自身のエグゼクティブサーチコンサルタントの経験を活かして教皇選出に貢献できないかと考える。 ヴァチカン訪問の上、枢機卿への面会を申し込むという最初のアイデアは、そもそもそういった類の面会を禁止する規則により取り下げられる。続いてのアイデアは、メディアや自身のネット

          アラオス「教皇選挙に寄せて:コミュニティのトップをいかに選び出すか」

          サンダース他「ソーシャル・セクターに才能ある若者を惹きよせるには」

          "How the Social Sector Can Attract More Young Talent" 抄訳。「意味のある仕事を提供するだけでは十分ではない」との副題が気に入った。 いくらNPOや社会的企業が、事業の意義や使命感に訴えかけたところで、職業選択における給与の重要性がなくなることはない。深刻なスキル・ギャップが予期され、現に採用競争が激化しつつある中、ソーシャル・セクターのリーダーも、採用優位性を高めるための工夫に取り組む必要に駆られている。 優れ

          サンダース他「ソーシャル・セクターに才能ある若者を惹きよせるには」

          ティム・ブラウン「IDEOの採用基準、5つの観点」

          IDEO CEO ティム・ブラウンの採用基準をまとめた記事が、ちょっとしたウィットがあって面白く感じたので抄訳して紹介したい。 IDEOの成功の秘訣は、賢く才能に富んでいるのみならずエモーショナル・インテリジェンスに秀でた人材を採用していることにある。私たちは、飽くことなき好奇心、抑えきれないほど強い楽観、深い共感能力を備え、仲間たちとうまくっていけるような人物を求めている。孤独主義者の天才はご応募無用なのだ。私たちが求める人物に共通する、特に重要な資質を5つ挙げたい。

          ティム・ブラウン「IDEOの採用基準、5つの観点」

          コーンフェリー「ハイポテンシャル人材を見極める7つの指標」

          Korn Ferry Instituteの「ハイポテンシャル人材を見極める7つの指標」という記事があり、これは以前は日本語訳が公開されていたのだが、ウェブ上では原文の入手しか叶わなくなってしまった。 ある人材をより高次の職位で活躍できるよう育成するにあたり注目するべき7つの指標として、(1)特定の職務における実績、(2)経験から学習する能力、(3)自己認識、(4)リーダーシップ特性、(5)より上位の職務への意欲、(6)論理的思考能力、(7)キャリアを阻害する要因への対処能力

          コーンフェリー「ハイポテンシャル人材を見極める7つの指標」

          サリヴァン「スタートアップが陥る採用上の誤りトップ10」

          ジョン・サリヴァン「スタートアップが陥る採用上の誤りトップ10、なぜお粗末な結果になるのか」という記事の抄訳を以前作成したので、再掲して紹介したい。サリヴァンは、アラオスに並んで尊敬することのできる人事採用分野のプロフェッショナル。学ぶべき相手を正しく設定することの重要性を痛感する。 1. 採用力の低さがもたらす経済的損失を過小評価してしまう。重要ポジションの採用が遅れることが、プロダクト開発や事業成長、資金調達にどれほどの悪影響を与えるのか、定量的に理解できていないリーダ

          サリヴァン「スタートアップが陥る採用上の誤りトップ10」

          ナイト「効果的な面接に向けた7つの指針」

          人事採用関連で、感銘を受けた書籍というのは少ない。自らのチームに迎えることになった新任採用担当に薦めるのであれば、なんだろうか。 『ウォー・フォー・タレント』、アラオス『人選力』、ルー・アドラー『グローバル人材獲得ハンドブック』は、基本的な知識を得るのにはよいだろう。ルー・アドラーは邦訳のタイトルに恵まれず、あまり読まれていないようだが、英語圏のリクルーター界隈では基本図書の一つ。採用から少し幅を広げれば、ラム・チャラン『人材管理のすすめ』、クリスティー・アトウッド『サクセ

          ナイト「効果的な面接に向けた7つの指針」