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サステナビリティを探究する旅① 名古屋編

先週、名古屋、岐阜、滋賀と尼崎を訪れて、どうしても話が聞きたい方々とお会いしていました。最初に訪れた名古屋では、名古屋市内に拠点を構えるアルファフードスタッフ株式会社さんを訪れました。

食を通じて環境や資源の「持続可能性」を考え、課題をビジネスで解決し続けることをライフワークとしているアルファフードスタッフ株式会社の方々とお会いして、そこで感じたことをシェアします。



1.オーガニックとはサステナブル

アルファフードスタッフ株式会社は大正14年(1925年)に創業した食品卸売事業者さんです。ルーツは砂糖問屋、お客さまは駄菓子メーカーでした。1980年代後半から食の安心安全の追求から国産小麦を取り扱い、2000年代に海外のオーガニック食材の取扱いを開始、2020年代からオーガニックの取り扱いを強みに持続可能性を追求しております。首都圏在住の方には、「ビオセボン店内にあるバルクフード(量り売り)のナッツ類をお届けしている会社さん」とお伝えしたら分かりやすいかもしれません。

オーガニックって言葉を聞いたとき、ポジティブに捉えても「スーパーの奥にある価格高いコーナーね」と思うのが率直な感想もしれません。触れるメディアによってはネガティブな印象を持たれがちなのかもしれません。

そんな固定観念を持ちつつ、オーガニックフードとは何なのか?について尋ねたところ、「つまるところ、サステナビリティだ」と仰っていました。それは、取引先であるアメリカのクルミ生産者さんとの対話の中で鮮明に記憶している一言で、この一言が会社の方向性を大きく動かしたそうです。


2.プラネタリーバウンダリー

アルファフードスタッフ株式会社代表の浅井さんから言われて鮮明に記憶している一言、それは「プラネタリーバウンダリー」です。

プラネタリーバウンダリー(Planetary boundaries)とは、地球の環境容量を代表する9つのプラネタリーシステム(気候変動、海洋酸性化、成層圏オゾンの破壊、窒素とリンの循環、グローバルな淡水利用、土地利用変化、生物多様性の損失、大気エアロゾルの負荷、化学物質による汚染)を対象として取り上げ、地球の環境容量の臨界点に具体的評価を行ったものを指します。

プラネタリーバウンダリーという表現を初めて知りましたが、その概念については至るところで触れていたと改めて感じました。

例えば、今年の10月に千葉県印西市で杉の間伐を手伝いに山に入ったときです。間伐を行う前に、生後2か月のイノシシ2頭を殺めました。現地の方になぜイノシシによる獣害が増えているのか?について尋ねたら「窒素量が増えたので、そのしっぺ返しですよ」とだけ言われました。

窒素、リン酸、カリウムを畑にまき、収量を最大にするという営みが食糧生産を工業化させ、環境容量の臨界点に達した状態が目に見えぬ形で続いてきたことが、巡り巡って人間社会に負担をかけている一つの事象として考え直すことができました。

「オーガニック」の普及は、既存の生産や加工の工程を大きく見直すことによるプラネタリーバウンダリーを守る取り組みでもあり、持続可能な社会の実現に向けた大きな鍵となります。


3.なぜこの分野に力を入れる?

「食糧生産の工業化」という現代資本主義社会が通ってきた道とは異なる、新しいライフスタイルや市場を作りだせる挑戦的なことができると感じています。

流通量が増える方法の模索、生産コストの最小化、そして担い手の拡大が「オーガニック」という概念が広まるうえでの課題となっています。一方で、「オーガニック」を梃子に一次産業の課題解決につながる鍵になりそうなのも事実です。

それは人材獲得の入口になることで担い手の確保につながる点です。農林水産省のレポートによると、一次産業への新規参入者のうち有機農業に取組んでいる者は2〜3割と高い傾向があります。新規参入者は49歳以下の割合が高く、有機農業に取り組む生産者は、農業全体で見た場合よりも平均年齢が若い特徴があります。

ただ、「農業所得で生計が成り立っているか」との問いに対し、就農後5年目までは、「成り立っている」と回答する者の割合が少なく、「農業所得で生計が成り立っている」者が就農から生計が成り立つまでに要した年数が長い傾向があるのも事実です。流通量が増える方法の模索や生産コストの最小化に加え、圃場においては有機JAS規格を取得するまでに最低でも3年間の時間を必要とします。

「オーガニック」という概念は、工業化により生産された食糧とは異なる道を意味しますが、腰を据えて長い時間軸で取り組む必要のある分野です。数年でルールメーカーとなるべく、大規模な資金を出して供給元を抑えたり、時には出資してコストを下げるような大手企業が入りにくい分野かもしれません。

この分野には市場として成熟する余地がある、大企業が参入しにくそう、といった打算以上に「自分を育ってくれた社会を未来や世界へ発信していくライフワークと方向性が同じだ」と率直に思っているのが原動力になっています。

「オーガニック」は狭義で有機食品等を指すことが多いのですが、広義では生き方を再定義することなんだと考えています。人生100年時代とか、リスキリングとか言われていますが、現代社会では「こうあるべきだ」に抑圧されて、幸せとは何か?「こうありたい」と自分自身と向き合い発声する機会が少ないと昔から感じてきました。「オーガニック」の概念の普及は巡り巡って、幸せで自由な生き方を追求できる社会の実現に繋がってくるのかもしれない!と考えています。

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