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セッション定番曲その2:What’s going on by Marvin Gaye/Donny Hathaway

ゆったりと歩くようなテンポの気持ちのいいのノリの曲。ファルセットも含めたボーカルの重なりがお洒落だし、何度でも聴きたくなりますね。これもセッションイベントではド定番曲ですね。
でも、この曲、実はニコニコしながら演奏するような内容ではありません。歌われている内容をや背景をよく理解しましょう。インストで演奏する場合も同様かと思います。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。

ポイント1:What's going on?

タイトルには「?」は付いていませんが、疑問形ですよね。
そして強く「いったいどうなっているんだ!?」と訴えかけています。発表当時(1971年)にまだ終わっていなかった「ベトナム戦争」を念頭に書かれています。「正義の国」だと信じていた米国が、なぜ東南アジアの泥沼で弱小国相手に戦争を続けているのか。帰国した米兵達がみなトラウマを抱えているのはなぜか。戦争反対を訴えてデモした若者達はなぜ逮捕されなけれならないのか。・・・いったいどうなっているんだ!?という心からの叫び。それをメロウなサウンドにのせて歌ったのが、受け入れられた要因かもしれません。


ポイント2:What's going on?

この当時もっと直接的に「戦争反対」を訴えた曲は沢山ありました。「戦争をやめよう」「戦場に駆り出されるのは俺たち、無知で貧乏な若者ばかり」などと。
この曲では、実際に自分の周辺で起こっていることを描写しながら、答えを提示するのではなく、疑問を提示しています。自分は神さまじゃないから「正解」なんて分からない。それぞれがちゃんと「いったいどうなっているんだ!?」と考えよう、と。ある意味の「連帯」を呼び掛けています。

で、その後も結局2022年現在に至っても、世界中から戦争も難民も貧困も無くなっていません。この思いはいまだに普遍的な訳です。

ポイント3:Mother, Brother, Father, Sister

訴えかけている相手は「政府/政治家」や「世界」ではなく、身近な相手です。お母さん達は泣き続け、兄弟達は死に続け、お父さん達はイラ立ち続けている・・・。だから、この部分を歌う時にはそれぞれの相手のことを思い浮かべて歌うのはどうでしょう。説得力が増す気がします。

ポイント4:Picket lines and picket signs

日本ではいまではあまり耳慣れない言葉ですよね。
何らかの抗議の為に行うストライキやデモの際にデモ隊を抑える警察隊などとの間の境界線(直接の衝突を避ける為)や最前線、デモ隊が掲げる、メッセージを書いた看板など(プラカードともいいますね)のこと。基本的には非暴力的な活動で、周囲の注目を集め自分達の主張を理解してもらう、出来ればマスメディアなどに取り上げてもらい情報拡散してもらうのが狙いです。事前の申請~認可が必要な場所も多いですね。最近では「Black Lives Matter」の運動でも米国各地でこういう活動が盛んに行われましたね。

で、大声で主張を叫んでいるうちにエスカレートして暴力的な行為が起きることもある訳です。当然、装備が上の警察隊の方が制圧する訳ですが、その中で過剰で不要な暴力行為も発生して、理不尽な逮捕も起きる場合も多い。だから「そうじゃなくて、会話しようよ」と呼び掛けているのです。

ポイント5:Oh, but who are they to judge us Simply 'cause our hair is long?

「長髪」ですね。
1960年代後半~1970年代半ば、長髪は「会社とかの組織に所属していない、自由なオレ」のシンボルでした。ただのファッションではなく、ある意味「覚悟」のあらわれだった訳です。当然、上の世代からは「あの髪の毛の長い奴ら」と偏見や反発を食らっていた、ということです。

ポイント6:brutality

「残忍な行為=暴力」です。
言い慣れない言葉なので、発音に注意です。「r」と「l」の両方が出てくるので差をハッキリさせましょう。特に「l」をちゃんと意識して発音すると差が出ます。

ポイント7:リズムやテンポ

この曲の気持ちいいノリ、発表当時はすごく新鮮だったのだと思います。それも今でも頻繁に歌われ、演奏されている理由だと思います。セッションイベントでリクエストされる場合、Donny Hathawayのライブ盤の、よりリズムを強調したバージョンがイメージされている場合も多いかもしれませんね。すごくいいもんね、アレ。

一度セッションイベントで「みんながイメージしているよりも一段テンポを落としてやってみよう」と言って始めたら、歌詞のメッセージをより一層噛みしめるように、ちゃんと伝えようという雰囲気の曲になりました。

Donny Hathaway


Playing For Change


Teddy Swims、ぐっとテンポを落として語り掛けるように歌っています


John Legend、バラードで


Hip-Hopバージョン


■歌詞

Mother, mother
There's too many of you crying
Brother, brother, brother
There's far too many of you dying
You know we've got to find a way
To bring some loving here today, yeah

Father, father
We don't need to escalate
You see, war is not the answer
For only love can conquer hate
You know we've got to find a way
To bring some loving here today, oh (Oh)

Picket lines (Sister) and picket signs (Sister)
Don't punish me (Sister) with brutality (Sister)
Talk to me (Sister), so you can see (Sister)
Oh, what's going on (What's going on)
What's going on (What's going on)
Yeah, what's going on (What's going on)
Oh, what's going on

Ah-ah-ah-ah (In the meantime, right on, baby)
Woo (Right on, baby), woo
Ah-ya-ya-ya-ya-ya-ya, ya-ya-ya-ya-ya
Woo (Right on, baby, right on), woo
Ah-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya-ya
Ba-da-boo-doo, boo-boo-boo-doo, boo-boo-boo
Ba-da-boo-boo-boo-doo, boo-boo-boo-ba-ba-do

Mother, mother
Everybody thinks we're wrong
Oh, but who are they to judge us
Simply 'cause our hair is long?
Oh, you know we've got to find a way
To bring some understanding here today, oh-oh

Picket lines (Brother) and picket signs (Brother)
Don't punish me (Brother) with brutality (Brother)
Come on, talk to me (Brother), so you can see (Brother)
Oh, what's going on (What's going on)
Yeah, what's going on (What's going on)
Tell me what's going on (What's going on)
I'll tell you what's going on (What's going on)



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