Kohyoh Yang

都市と建築,建築とデザイン,デザインと都市_の実践と研究. 建築設計事務所勤務

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最近の記事

書評|江本弘著『歴史の建設 アメリカ近代建築論壇とラスキン受容』

本書評は筆者が共同運営する、建築研究会メニ―・カンファレンスにて、2020年8月に執筆したものである。 原文は以下を参照されたい。 https://note.com/confmany/n/n76cef0e9ac32 「建築における普遍的なもの」:未来の歴史家の幻影 近年、多くの市庁舎や町役場といった、日本の政治にまつわる公共建築が、「~らしさ」や「みんなの」や「ひらかれた」といった文言の入った設計であることが多い。それは、公開プロポーザルや市民説明会といった、政治的手続

    • 書評|ティム・インゴルド著『ライフ・オブ・ラインズ』

      線と生の迷宮の参与観察2018年大学院・表象文化論演習Aより  ...彼の画面はいたるところで二重で、いたるところで疑い、画面はちぐはぐである。線は多少ふるえている、それはためらっている、煮え切らず、揺らいでいる。私のいのちはどの道を選ぶだろうか、とでもいっているようだ。(ミシェル・セール、及川馥訳『生成 概念をこえる試み』、法政大学出版局、1983、26頁)  もしも、人間の生の過程について、生誕から成長、成熟までと一本のラインとして考えたとすると、その過程は始まりから

      • 書評|ダニエル・ヘラー=ローゼン著『エコラリアス──言語の忘却について』

        虚空の中心から谺する忘却の痕跡と消失の彼方へ2018年大学院・表象文化論演習Aより    だからこそ、さまざまな声があたかも黙り込むとき、ありふれた沈黙に乗じて、沈黙のうちにイメージはやってくる。 (ジル・ドゥルーズ、サミュエル・ベケット 『消尽したもの』、19頁) ******  「エコラリアス」とは、人類が沈黙してしまった遠い過去の声に僅かに残っている響きから聴こえる、失われた言葉たちをめぐる寓話である。失われた言葉は、いくつもの響きを残している。その響きとは、副

        • 書評|フィリップ・デスコラ著『自然と文化を越えて』

          西洋文化の彼岸的思索者──人類学の超大陸へWeb建築討論2020年08月号書評より 書誌著者:フィリップ・デスコラ 訳者:小林徹 書名:自然と文化を越えて 出版社:水声社 出版年月:2020年1月

        書評|江本弘著『歴史の建設 アメリカ近代建築論壇とラスキン受容』

        • 書評|ティム・インゴルド著『ライフ・オブ・ラインズ』

        • 書評|ダニエル・ヘラー=ローゼン著『エコラリアス──言語の忘却について』

        • 書評|フィリップ・デスコラ著『自然と文化を越えて』

          論考|「批判的プラグマティズム」──当代中国建筑家的処世術,但是…

          特集:これからの建築と社会の関係性を考えるためのキーワード11 WEB建築討論2019年07月号特集より 参考文献1.『a+u 2016年3月号 特集:百家争鳴 Architects in China』新建築社,2016年 2.汪暉『思想空間としての現代中国』村田雄二郎・小野寺史郎・砂山幸雄訳, 岩波書店, 2006 3.東浩紀編『ゲンロン8 ゲームの時代』株式会社ゲンロン, 2018

          論考|「批判的プラグマティズム」──当代中国建筑家的処世術,但是…

          書評|ジョージ・クブラー著、中谷礼仁・田中伸幸訳『時のかたち──事物の歴史をめぐって』書評

          時代をこえて再びあらわれる事物たち──自律する時間の複数性へWEB建築討論2019年01月号書評より 書誌著者:ジョージ・クブラー 訳者:中谷礼仁、田中伸幸 翻訳協力:加藤哲弘 書名:時のかたち──事物の歴史をめぐって 出版社:鹿島出版会 出版年月:2018年8月

          書評|ジョージ・クブラー著、中谷礼仁・田中伸幸訳『時のかたち──事物の歴史をめぐって』書評

          書評|アーロン・S・モーア著 『「大東亜」を建設する 帝国日本の技術とイデオロギー』 ――「総合技術」の失敗とその幻影――

          本書評は筆者が共同運営する、建築研究会メニ―・カンファレンスにて、2020年4月に執筆したものである。 原文は以下を参照されたい。 「総合技術」の失敗とその幻影日本の近現代史を考えると、戦後の民主主義的な社会の成長に対し、戦前の帝国主義的な国家の失敗は対比的に描かれがちである。非合理的で抑圧的な国家主義が、敗戦によって合理的で自主的な民主主義へと大きく転換したといったように、先の大戦が歴史の断続として浮かび上がることが多い。これに対し本書は、戦後と戦前の二つの時代に通底す

          書評|アーロン・S・モーア著 『「大東亜」を建設する 帝国日本の技術とイデオロギー』 ――「総合技術」の失敗とその幻影――

          展評|一望された建築と空間体験の宙吊り――CINE間 中山英之展

          Gallery間がCINE間になった。ギャラリーではなく映画館だ。どうやらよく見る建築展とは違うようである。どんな建築映画をみせてくれるのだろうと、期待してフライヤーを眺めながら会場に入ると、すでに上映が始まっていた。 ここで上映されているのは、5つの建築をめぐるドローイングとそれらの映像からなる空間のイメージである。本展示は、建築と映画のそれぞれの空間のイメージから、建築を上映してみたり、映画を設計してみたり、と双方のメディアを行き来するような表現を見出している。プロジェ

          展評|一望された建築と空間体験の宙吊り――CINE間 中山英之展