知ってる!環境のこと(第54話)

⁂データや内容は同時のものですので、ご理解ください。

こんにちは、みなさんいかがお過ごしでしょうか?タイでも自然に優しい有機農業が注目され、土作りから有機農業を学べる研修センターが、タイの各地に建設されています。今回は、その一つ、チェンマイ県チャイプラカーン郡にある持続可能な農業研修センターを取り上げます。
 
持続可能な農業研修センター
研修センターは、チェンマイ県ムアン郡から、車で約2時間半、チャイプラカーン郡ノンブア区にあります。センターの管理者であるマナ氏は、2003年頃から研修等に参加しながら研究を進め、昨年、このセンターをオープンさせました。ここでは、堆肥や液肥を生産するための原料調達の段階から、生産された肥料を利用した農場運営までのサイクルが、順を追って見学できるようにデザインされています。その内の幾つかをご紹介します。
 
ミミズコンポスト
うず高く積まれた白い発泡スチロールの箱。毎日、郡内にあるレストランや食品加工場からでる野菜くずや卵の殻、骨などを回収するためのものです。これらの回収品は、箱ごとにきれいに分別されて運ばれて来ます。野菜によっては、農薬が散布されているものもあり、誤ってミミズに与えると彼らを弱らせてしまうため、野菜くずも細かく分別されています。
 
ミミズコンポストは、以前101号で紹介しているので、細かい説明は省略しますが、ミミズ1㎏(約2,000匹)で、生ゴミ1㎏を24時間で処理できるスピードと、出来た肥料がすくに使えること、そしてその付加価値が高いことが特徴です。
 
マナ氏の研修センターでは、少し庭があれば出来るようなコンクリートの水道管を切断した容器を用いた家庭用の小さなコンポストから、業務用の大きなものまで見学できます。ただ、最も注目すべきは、野菜くずなどの回収システムです。これらの回収品には、ちゃんと値段がつけられており、関係者に貴重な資源であることが印象づけられます (野菜くず等:1㎏当たり0.3バーツ、豚や牛の骨:1㎏当たり3バーツ、卵の殻:1㎏当たり/5バーツ)。村人達の意識も変わってきており、既に多くの人々が、生ゴミを分別し、実際にミミズコンポストを始めているそうです。マナさんは、近い将来、野菜くずの奪い合いが起こる!と仰っていますが、本当にそうなれば、研修センターの役割を十分い果たしたといえるのではないでしょうか。
 
消臭液
チャイプラカーン郡は、蜜柑栽培が盛んで、郡内には蜜柑にワックスをかける工場が3つあります。そこから毎日2~3トンの廃棄蜜柑がでますが、これを半年ほどかけて発酵させて、液肥をつくります。蜜柑自身に糖質があるため、EM液を製造するときのように、砂糖を加える必要もなく、発酵期間中は、直射日光に注意する以外は、ほぼほったらかしです。
 
出来あがった液肥を使用すれば、野菜や果物の甘みが増す他、流しやトイレの排水溝の臭い消しにも利用されます。実際、2006年から行われた園芸博覧会や2007年第24回東南アジア競技大会(シーゲーム)の会場のトイレで利用され、大変好評だったそうです。実は筆者もゴミ箱や排水溝の臭い消しとして使用中で、夕方まけば翌朝には臭いが消えているので、大変重宝しています。現在、マナ氏は輸送コストを抑えるため、液状のものを粉末に加工するために、試行錯誤中です。経過を見守りたいものです。
 
天然の液肥から虫除け/殺虫剤
日本でもEM等の液肥を製造する際、ヨモギやトウガシ、ニンニク等、虫が嫌がる成分を持つ野菜を混ぜて、虫除け効果のある有機肥料を製造していますが、このセンターでも、サダオと呼ばれる木の実を使って、同じような方法で虫除けや殺虫剤が造られています。
 
サダオはタイ名で、英名はニーム(Neem-tree)といい、センダン科の常緑樹です。強力な殺菌消毒作用を持っています。マナ氏の話では、サダオは、特に芋虫などの害虫に効果を発揮するようです。(勿論、成分が有効でないこともあります。)
 
その他、製造した虫除け、肥料等を利用し、カエルやウナギも同時に養殖する水田の試験圃場や食用コオロギの養殖なども見学できます。コオロギは、農薬に大変敏感で微量でも死んでしまうため、野菜や周辺環境の汚染度を測る生物指標にもなります。センターは開設して1年足らずですが、非常によく整備されており、郡外からも多くの見学者が訪れています。また、同センターは、郡が推進する持続可能な農業プロジェクトのモデルサイトの1つに選ばれており、今年度中に、天然資源・環境政策・計画事務局の支援を得て、1日に2トンの処理が可能なミミズコンポストが、同センター内に建設される予定になっています。
 
タイ各地で、この様なセンターが持続可能な農業の普及とゴミの減量に大きな役割を果たしています。今後も、このようなセンターがまたまだ増えていくと思います。その地域の実情にあったセンターが建設されれば、貴重な資源をより有効に利用するための土台が整うのではないでしょうか。

CHAOちゃ~お ちょっとディープな北タイ情報誌
(毎月2回10・25日発行) 2008年9月25日第 135号掲載

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